一流は怒りを上手に言葉に変える?
叱るつもりが責める言葉になったり、つい悪口を言ってしまったりしていませんか?
『その言語化は一流、二流、それとも三流? 頭のいい“この一言”』(清水克彦 著/青春出版社)では、感情をぶつけず“伝える”ための言葉の整理法を紹介しています。
今回は本書から一部抜粋し、怒りを上手に言葉に変える方法を取り上げます。
【叱る】三流は怒鳴る、二流は誰かと比較して叱る、一流は?
企業や団体などの組織で管理職やプロジェクトリーダーなどのポジションに就いている方は、後輩や派遣社員などの部下を叱って指導しなければならない場面に直面します。
筆者は、専門分野である政治や国際情勢の取材のほかに教育現場を取材し、子育てや受験に関する著書もあるのですが、講演会やシンポジウムに招かれた際は、親が子どもを叱る場合の留意点として、以下の4つが重要と述べてきました。
1. 感情に任せて怒鳴るのではなく、落ち着いて諭さとすトーンを忘れない
2. 人格の否定につながるような表現は使わない
3. 誰かと比較して批判しない
4. 本当はとても期待している、次からはできるというフォローを忘れない
これら4つの注意点は大人の社会にもそのままあてはまるものです。社会人の場合、相手への気遣いとしてつけ加えるなら、「周囲に人がいない環境で叱る」くらいでしょうか。例を挙げてみましょう。
A「どうしてきちんとチェックしていないんだ? ダメなやつだな!」
B「次からはチェックするんだぞ。君の同期はみんなできているんだから」
C「チェックしていないなんて、いつもの君らしくない。次は頼んだよ」
Aは感情的で、「ダメなやつ」という人格を否定する言葉を使っている点でアウト。Bも同期と比較して叱っている点が好ましくありません。Cであれば、「いつもはしっかり仕事をこなしている君が……」という気持ちが込められていて、これからも頼りにしているというニュアンスも込められています。
■相手を傷つけない叱り方の表現
・「せっかく良い仕事をしているのに、○○しては台無しだよ」
・「いつもは○○なのに、君らしくないよ」
・「あなたほどの人が○○すると、誤解したり批判したりする人もいると思うよ」
【決めの一言】「いつもの君らしくない」
実力や将来性を買っているからこそ注意しているんだという表現
【悪口】三流はストレートに言う、二流は婉曲に言う、一流は?
気遣いという点では、直接的に悪口を声に出さないことも大切なポイントです。
A「あいつは、ぐずぐずしていて判断が遅いな」
B「彼(彼女)は優柔不断なところがあるね」
C「彼(彼女)は物事を慎重に考えるタイプだね」
A「課長は頑固だからね」
B「課長は意志を曲げないからね」
C「課長は信念を貫く人だからね」
それぞれAは完璧に悪口。Bはそれを婉曲にした表現になります。Cであれば、同じことを言っていても、相手の短所をプラスに評価しているようにも聞こえる言い回しになります。
Cのような言い方であれば、第三者を通じて、あなたの言葉が相手の耳に入ったとしても、「陰口をたたかれた」とは感じないはずです。
ネガティブな言葉をポジティブな表現に変える例を列記しておきます。これらの言葉は、就職や転職などの際、自己PRをする際にも短所を長所に見せる技として応用できます。
■悪口をポジティブな評価に変える表現
・「しつこい」「粘着質」→「粘り強い」「忍耐強い」
・「のんびりしている」「行動が遅い」→「余裕がある」「熟慮する性格」
・「せっかち」「そそっかしい」→「頭の回転が速い」「行動が素早い」
・「八方美人」「うまく立ち回る」→「誰とでも仲良くできる」「器用」
・「気が小さい」「細かいことを気にする」→「ナイーブ」「几帳面」
・「仕事が遅い」「要領が悪い」→「仕事が丁寧」「何事にも慎重」「地道に頑張る」
・「応用が効かない」「チャレンジ精神がない」→「基本に忠実」「何事にも堅実」
・「地味」「目立たない」→「素朴」「玄人好み」
・「視野が狭い」「独りよがり」→「ひとつのことに集中できる」「信念がある」
【決めの一言】「彼はかなり慎重」、「彼女は仕事があまりに丁寧」
相手の耳に入っても角が立たない表現を
この書籍の著者:清水克彦 プロフィール
政治・教育ジャーナリスト、びわこ成蹊スポーツ大学教授。愛媛県今治市出身。早稲田大学大学院公共経営研究科修了、京都大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。文化放送入社後、政治記者、ベルリン特派員、米国留学を経て、ニュースキャスター、大妻女子大学非常勤講師、報道チーフプロデューサーを歴任。専門分野は「現代政治」と「国際関係論」。大学ではキャリアセンター長を務め、メディア出演、オンライン記事の執筆や講演など幅広く活動中。ベストセラー『知って得する、すごい法則77』(中公新書ラクレ)ほか著書多数。






