暮らしの歳時記

Q.「彼岸花を部屋に飾ってはいけない」と聞きました。なぜですか?【歳時記の専門家が解説】

秋の彼岸の時期によく見かける彼岸花。あの美しく妖艶な赤い花には、「墓花」「地獄花」といった不吉な呼び名や、怖い言い伝えがあります。その理由とは? 歳時記の専門家が解説します。(※画像出典:PIXTA)

三浦 康子

三浦 康子

暮らしの歳時記 ガイド

和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。

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燃えるような赤が美しい彼岸花(※画像出典:PIXTA)

燃えるような赤が美しい彼岸花(※画像出典:PIXTA)

秋の彼岸(秋分の日を中日に前後3日を合わせた計7日間)の時期によく見かける彼岸花。あの燃えるような赤い花には美しくも妖しげな雰囲気があり、不吉な呼び名や怖い言い伝えが数多くあります。今回は、そんな彼岸花に関するご質問にお答えします。
<目次>

Q. 彼岸花は部屋に飾ってはいけないと聞きました。なぜですか?

【回答】彼岸花には毒があります。そこで安易に触ったりしないよう、昔から不吉な呼び名や言い伝えが残されてきました。

そこにある先人の知恵について、詳しく説明します。

彼岸花には毒がある

彼岸花には、花・茎・葉・根(球根)の全てに毒が含まれています。毒の濃度は部位によって差があり、特に球根部分に最も強い毒があります。

素手で触る程度であれば通常問題はありませんが、汁が目や口に入ると危険です。誤って口にすると嘔吐・下痢・まひなどの症状を引き起こすことがあり、小さな子どもやペットがいる場合は特に注意が必要です。

彼岸花が田んぼやお墓に多い理由

田んぼのあぜ道に彼岸花が多いのはなぜ?(※画像出典:PIXTA)

彼岸花は田んぼのあぜ道や墓地に植えられている(※画像出典:PIXTA)

田んぼのあぜ道に彼岸花が多いのは、球根部分に強い毒があることを利用してモグラやネズミから作物を守るために植えられたからです。

あぜ道以外にも、彼岸花は墓地でもよく見かけます。現在は火葬が主流ですが、昭和初期頃までの日本では一般的に土葬が行われていたため、小動物に墓を荒らされないよう彼岸花を植えたのです。

彼岸花の「彼岸」という言葉は「あの世」のことを指していて、あの世とこの世が最も通じやすいとされる彼岸の時期に開花します。別名の「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」はサンスクリット語で「天界に咲く花」という意味を持ち、仏教とも縁の深い花。昔から死者の魂があの世へと向かう道に咲く花とされています。それも墓地に植えられている理由の1つです。

彼岸花の不吉な呼び名や言い伝えとその理由

彼岸花には、黄色や白、ピンクなどの色違いもある(※画像出典:PIXTA)

彼岸花には、黄色や白、ピンクなどの品種もある(※画像出典:PIXTA)

先人が彼岸花に付けた不吉な呼び名や言い伝えから、代表的なものを紹介しましょう。

呼び名
・彼岸花には毒があるため「毒花」「痺れ花」
・墓地に多いため「幽霊花」「墓花」「地獄花」「死人花」

言い伝え
・彼岸花を摘んで家に持ち帰ると火事になる
・彼岸花を摘むと死人が出る
・彼岸花を摘んだ人には不幸が訪れる
・彼岸花で手が腐る

こうした呼び名や言い伝えを聞くと、怖くなりませんか。子どもの頃に聞かされれば、なおさらです。これらは彼岸花の毒性への注意喚起と、「むやみに触ったりしないように」と戒めるために生まれたもの。全ては先人の知恵なのです。

<参考>
・「間違えやすい有毒植物 ヒガンバナ(ヒガンバナ科)」(東京都保健医療局)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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