もっと楽しみたい人はぜひ原作を
小説『国宝』は、文庫本上下800ページを超える大作。それをわずか3時間の映画にまとめたわけですから、原作の全てをそのまま映像化するのは無理な話。当然テーマを絞っていて、かなり省いていたり改変をしている部分が多いのです。また描かれる時代も50年にわたっていますから、映画ではポンポンと飛ぶように時が進み、人によっては「ん? ここはどうなった? あれはどうした?」と感じる部分があるかもしれません。映画の中で生き生きと躍動した多くのキャラクターが活躍するスピンオフ作品を見たいと思ったら、ぜひ原作を読んでみてください。
原作は喜久雄と俊介のみならず多くの登場人物がさらに深く描かれています。映画を見た後なら、読んでいてイメージも湧きやすいはず。もちろん原作を読んでから映画を見ても違いを楽しめるでしょう。映画の完成度が高いので、映画だけ見て大満足ならそれはそれでありだと思います。
本を読むのは少し苦手という人にはAmazonのオーディオブックAudibleはいかがでしょうか。尾上菊之助(当時/現八代目尾上菊五郎)が、極上の声で読み聞かせてくれます。本物の歌舞伎役者ですから臨場感も抜群ですよ。
本物の歌舞伎も見てみてほしい
『国宝』の鑑賞後、「本物の歌舞伎を見たくなったね」、そんな声がSNSなどでたくさん投稿されています。ぜひこの機会に、多くの人に本物の歌舞伎を見ていただきたいです。映画に出てきた演目でいえば、2025年10月には名古屋御園座で、八代目尾上菊五郎・六代目尾上菊之助 襲名披露興行として『京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)』が上演されます。
また、半二郎にしごかれる喜久雄と俊介が練習で演じていた『車引(くるまびき)』は、6月の歌舞伎座昼の部で上演されていますよ(歌舞伎座で6月27日まで)。
歌舞伎座では毎月3日前後から27日前後まで歌舞伎の公演が行われています。7、8月の歌舞伎座は初心者でも見やすい演目が並びます。まずはそれから見てみてはいかがでしょう。もちろん一等席で見るのもよいですが、一幕見であれば1000円台から見られ、短時間で楽しむこともできます。
また歌舞伎座以外でも東京では新橋演舞場、明治座で不定期で公演が。東京以外でも各地で歌舞伎興行は行われています。国立劇場閉場後の歌舞伎教室や巡業など各劇場で比較的安価で見ることができます。
人気ゲームや人気アニメからの新作歌舞伎あり、重厚な古典あり。コメディーや、ホラー、ホロリとさせる人情ものも。驚くほど多様な歌舞伎は各地で上演されていますので、チェックしてみてください!
原作:『国宝』吉田修一著(朝日新聞出版刊)
監督:李相日
出演:吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、嶋田久作、宮澤エマ、中村鴈治郎、田中泯、渡辺謙
<参考>
歌舞伎公式総合サイト 歌舞伎美人