メンタルヘルス

心の病気の診断に役立つ! 精神科に持参すべき病状メモとは

【精神科医が解説】心の病気が疑われるとき、まず大切なのはどの病気なのかを正確に鑑別することです。精神科の初診時の問診では、病状メモを持参いただけるととても助かります。具体的な書き方の例と、医師が見るポイントを解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

精神科医の問診イメージ

心の病気の鑑別のために、まずは病状を正しく把握することが重要。問診時にあると便利なものは?


一言で「心の病気」と言っても、うつ病、パニック発作、アルコール依存症など、精神疾患の種類はさまざまです。いずれも脳内の医学的問題が原因で起こる不調ですが、パッと目で見て分かるものではありません。

精神科の初診では、患者さんの脳内でどのような問題が起こっているのかを正しく推定していく必要があります。まず何よりも重要なのが、問診です。患者さんにとっても、病状をうまくドクターに伝えられれば、正確な診断の助けになり、適切な薬や治療法にたどり着きやすくなります。
 

心の病気の診断法は? 精神科医が初診でまず知りたいこと

一例として、抑うつ気分を訴える患者さんのケースを挙げます。患者さんの主訴が「抑うつ気分」の場合、疾患の大まかな分類は「気分障害」です。代表的疾患として、まず「うつ病」と「双極性障害(躁うつ病)」の2つが考えられます。

初診の問診で患者さんを前にすれば、暗い表情や重い口ぶりなどからも、抑うつ状態の程度を知ることができます。しかし同じ「抑うつ状態」でも、うつ病による抑うつ状態なのか、双極性障害の抑うつ状態なのかは見極められません。同じ症状が出ていても、治療法は異なるため、ここを正確に鑑別することは非常に重要なのです。日常生活の様子や、それまでの経過を知る必要があります。

ただ抑うつ状態の患者さんにとって、初対面のドクターに病状を的確に伝えることは、なかなか難しいかもしれません。その際に役立つのが、日常生活を記した病状日記です。診断の大きな手掛かりになります。
 

診断の助けになる「病状日記・病状メモ」の具体的な書き方例

日記と言っても全く身構える必要はありません。ごく簡単なメモ書きで大丈夫です。まとまっていなくてもいいので、以下のようなメモ書きを持参いたただけると、医師はとても助かります。

■病状日記の書き方・メモの具体例
  • 〇月〇日(金) 朝早く目が覚めてしまったが、いつもの起床時間まで、ぼんやりしていた。会社には何とか出社。帰宅後、涙が止まらなかった。
  • 〇月〇日(土) 会社は休みだが、体が重く、外出する気になれない。一日横になっていた。
  • 〇月〇日(日) 一日、気分は悪くはなかった。友達と電話で長話してしまった。
  • 〇月〇日(月) 午前中は普段通りに仕事ができたが、お昼の後、体がだるくなった。めまいがひどく、会社を早退した。
ごく簡単なメモに見えるかもしれませんが、これを見るだけでも、気分が悪くない日や時間が混じっていることが分かります。初診時に抑うつ状態で来られても、双極性障害的な傾向があると考えられ、治療薬を選択する際の重要な情報になります。

初診の際には、できれば1~2週間程度の日常のメモがとても役立つのです。病状日記は診察する側に貴重な情報源になることを、どうか皆さま知っておいてください。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます