子供をいじめから守る5つのヒントとは

子供をいじめから守る

子どもが安心して1日を過ごせる場であるはずの学校で頻発しているいじめ。その背景には何があるのでしょうか。

親が子どもを失う。たとえ、どんな理由であっても、これ以上、悲しいことはありません。もし、それが自殺だったら……。そしてその原因が学校でのいじめかもしれなかったら…。

いじめは心と体を傷つける重大な人権侵害です。学校でいじめにあったわが子を守るために、そして家族だけで悩まないために、親は何ができるのでしょうか。また、いじめを知ったとき、周囲の大人はどう対応すればいいのでしょうか。ボランティアガイドサイト的に考えていきます。
   

いじめは体と心への暴力です

武田さち子さんの著書「あなたは子どもの心と命を守れますか!」(WAVE出版)。いじめに大人たちはどう動けばいいか、子どもを被害者にも加害者にもしないために何ができるかを考えるために役立つ本です。
そもそも、いじめとはどんな行為なのでしょうか。文部科学省は、「1 自分より弱いものに対して一方的に、2 身体的・心理的な攻撃を加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わないこととする」としています。

ほかにもさまざまな表現で定義されていますが、ガイドがいちばん納得できたのは、NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事の武田さち子さんが定義する「いじめは生きる力を奪う体と心への暴力」という言葉でした。

いじめは日常の人間関係の中で起こります。一場面だけを傍目から見ると、仲間同士の「悪ふざけ」「けんか」「ちょっとやりすぎの行為」と軽く見られてしまいがちなのです。言葉の暴力だけでいじめられる例も少なくないことで、「軽い口げんか」と見過ごされてしまうこともあります。

でもそれが学校という閉ざされた空間で、複数の人たちによって、日常的に繰り返されているとしたら……、それは決して「悪ふざけ」でも「軽いけんか」でもありません。
 

大人が見て見ぬふりをするといじめはエスカレートする

大人が見逃したり、見て見ぬふりをしていると、子どもは黙認されたと思い、エスカレートしていくのもいじめの特徴です。最初は小さな芽でもあっという間に、手がつけられなくなるほど大きくなってしまいます。

いじめが日常的に、また、どんどん深刻になっていけば、いじめられる側には、顔を合わせる度に「また、同じことをされるのでは」という恐怖心が生まれるでしょう。学校へ行くことに極度の緊張を感じ、精神的に不安定になってしまうかもしれません。いつ終わるかわからない日常的な暴力から逃れるのは、とても困難なことです。それは、人を無力にし、将来の希望をも奪ってしまいます。

そういった悪循環の中で、心に深い傷を負い、希望を持てなくなった子どもたちは、自ら命を断つまでに追い詰められて、取り返しのつかない事態を招きかねないのです。
 

優しい心が一番だよ

NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事である小森美登里さんの著書「優しい心が一番大切だよ~一人娘をいじめで亡くして~」(WAVE出版)。多くの先生や親に読んでほしい本です。
ジェントルハートプロジェクトは、いじめでわが子を失った小森新一郎さん、美登里さんご夫妻を中心に「優しい心(ジェントルハート)」と「いのち」の大切さを伝え、「いじめ」のない社会を目指し、活動している会です。いじめや暴力で亡くなった子どもたちの写真やメッセージの展示、学習会、講演活動などを行っています。

会の名前は、亡くなった小森さんのお子さんが、死を選ぶ数日前、辛いいじめの話をした際に「お母さん、優しい心が一番大切だよ。その心を持っていないあのコたちの方がかわいそうなんだ」と言った言葉からつけられました。

武田さんもこの会の理事の1人として、全国各地で教師や保護者向けの講演などの活動を行っています。
 

いじめても良い理由なんて1つもない

いじめは心と体を傷つける人権侵害。誰かをいじめて良い理由など1つもなく、いじめた人が絶対的に悪いのです。

いじめは心と体を傷つける人権侵害。誰かをいじめて良い理由など1つもなく、いじめた人が絶対的に悪いのです。

ジェントルハートプロジェクトは、学校で子どもたちを対象に話をする活動にも取り組んでいますが、その際に小森美登里さんが必ず話すのが、「いじめられてもよい理由をもって生まれた命はひとつもなく、同時に他人を傷つける権利をもった人も1人もいない」ということです。

いじめの問題でよくささやかれるのが、「いじめられる子にも問題がある」という言われ方。何も悪いことをしていないのに、その子の短所をあげつらい「いじめられても仕方がない」と、いじめを正当化するような言葉を口にする人が少なからず存在します。

でも、欠点はどの子にもありますし、それも含めての個性です。「いじめられる側には否はなく、いじめる側が絶対的に悪い」と、はっきりとした言葉にして伝えていくことは、とても大切なことだといえるでしょう。
 

いじめ対策にマニュアルはありません

わが子が深刻ないじめにあったとき、親はどのように対応すればいいのでしょうか。対策は子どもの個性によって変わってきますので、「こうすればいい」というマニュアルはありません。マニュアル化することは、子どもの個性とは逆方向の、間違った対応となる危険性もあります。

ただ、親の姿勢として心がけておきたいヒントとしていえることはあります。
 

ヒント1 内容を整理しながら、じっくりと話を聞く

日常的に繰り返されるいじめ。何があったのか、じっくりと耳を傾けよう。

日常的に繰り返されるいじめ。何があったのか、じっくりと耳を傾けよう。

わが子がいじめにあっていると知ると、動揺してしまうかもしれませんが、まずは親自身が落ち着いて、じっくりと話を聞くことが大切です。「何があったの?」と質問攻めにせずに、子どもの心に寄り添って話を聞きましょう。

話を聞きながら、いつ、どこで、誰に、何をされ、どう感じたか、誰かに相談したかなどを整理し、時系列でノートなどにまとめていくようにします。子どもの話の裏付けとなるような証拠となるものがあれば保存しておくことも大切です。
 

ヒント2 子どもの安全が最優先と考えること

何よりも子どもの命と心を優先し、安全を第一にした選択を考えることが大切です。心と体が深く傷つけられているなら、場合によって命をすり減らしてまで、学校に行くことがないと子どもに話すことも必要でしょう。ただ、そのためには、学歴や将来、さらには世間体より、子どもの命が大切であると、親自身が覚悟を決めなければなりません。

たくさんのいじめの事例を調査してきた武田さんは、いじめによって子どもの生死が分かれた例は紙一重の差でしかないといいます。明確な違いはないけれど、あえて1つあげれば、死ななかった子の親は、ときに世間から批判を受けるほど、なりふり構わず必死で子どもを守っている例が多いそうです。
 

ヒント3 学校や地域で味方を見つける

学校は対立関係になるより、協力して解決にあたりたい。しかし、納得がいかなければ、学校と毅然と向き合うことも必要。

学校は対立関係になるより、協力して解決にあたりたい。しかし、納得がいかなければ、学校と毅然と向き合うことも必要。

学校の先生、保護者など学校を取り巻く人と連携をし、協力を求めていくようにしましょう。日頃から、何かあったときに相談できる関係を地域に築いていくことも心がけておきたいものです。学校で協力してくれる友人や、保健の先生など子ども自身の味方になってくれる人がいたらなお良いでしょう。

対学校、対加害者と、対立関係になるよりも、学校と協力し合って解決を模索したほうが子どもの利益につながります。ただ、学校がことを隠したり、誠実な対応が期待できないような場合は、納得がいくまで説明を求めていく覚悟も必要です。
 

ヒント4 味方がいなくても1人で悩まない

学校の中に協力者がいないときや、対応に納得ができないときは、学校の外に相談をしていきましょう。ただし、それが学校との新たなる摩擦になることもあるので、行動は慎重にが鉄則です。行政の相談室やいじめ問題に取り組むNPOなど、数多くありますが、相談に乗った担当者によって対応が違ったり、納得のいく答えが得られないこともあるものです。そういったときは、複数とコンタクトを取っていくといいでしょう。

また、いくつかの対策を行いつつ、子どもの心の傷を癒すため、カウンセリングを受けるのも1つの方法です。ただし、「心の専門家」を過信してはいけません。カウンセリングを否定するわけではありませんが、カウンセラーによって一時的に癒されたとしても、根本的な原因であるいじめが続くかぎり、現実の生活が変わらず、問題の解決にはならないのです。そのことも頭に入れ、「カウンセラーに任せておけば大丈夫」と思い込むことのないようにしましょう。
 

ヒント5 継続して見守っていく

“何があっても子どもを守る”強い気持ちを持ち続け、継続的に見守っていくことが大切。

“何があっても子どもを守る”強い気持ちを持ち続け、継続的に見守っていくことが大切。

親や教師などの大人が介入することで、一時的にはいじめや暴力が落ち着いても、その後の状況を注意深く見守り続けます。いじめは、静まった頃に再発することが多いのも特徴なのです。内容はもっとエスカレートし、隠そうとする行動も巧妙になり、問題がさらに深刻になっていきます。

また、いじめがなくなったあとでも、いじめられた子どもの心の傷は、周囲が想像する以上に大きいといいます。対人関係に自信がなくなったり、拒食症、不登校、引きこもり、自傷行為などに発展することもあるのです。半年から1年は要注意期間と考えてください。場合によってはその傷は大人になっても癒えないこともあります。家族だけで対応できないときは、外部にも協力を求めましょう。同じ経験を持つ当事者組織などで、経験を話し合うことで救われることも多くあります。
 

いじめ対策の10カ条

では、周囲の大人は、いじめを知ったとき、どう対応していけばいいのでしょうか。武田さんが学校の先生を対象に講演会を開くとき、必ず提示するいじめ対策の10カ条を教えていただきました。教師以外でも参考になる内容ですので、そのままご紹介しましょう。
先生を対象に作った“いじめ対策10カ条”。いじめを知った周囲のすべての大人が考えていきたい10カ条です。
 

いじめ問題が映し出しているもの

いじめ問題が映し出すもの

いじめ問題が映し出すもの

今回の記事はいかがだったでしょうか。いじめに関する様々な資料を改めて読みながら、問題の根深さを突きつけられる思いがしました。

子どもは社会の鑑。殺伐とした大人社会の縮図であり、その軋轢が最も弱い子どもたちにいじめという形で表出していると思えてなりません。

ちょうど同じ時期に、高校生の履修科目不足問題が起きたことも、今の子どもたちをめぐる環境を象徴していないでしょうか。勝ち組になるためなら「手段を選ばない」「ルールは守らなくてもいい」「社会的な正義はどうでもいい」と教えているのが履修科目不足問題です。そうやって追い立てられた子どもたちのストレスが“いじめ”で発散されてしまっているのではないでしょうか。いじめも履修科目不足問題も根の部分でつながっているような気がします。

あなたはどう思いますか? いじめから何が見えてきますか? 子どもをいじめの被害者にも加害者にもしないために、大人には何ができるでしょうか。


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