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火災保険と築年数
損害保険会社によって導入している制度内容は違いますが、築年数に関係なく保険料が同じだった時代から、築年数によって保険料が変わる仕組みに変わってきています。この基準が改定のたびに細分化されています。
生命保険では年齢を重ねると保険料が上昇していきます。火災保険も築年数の経過と共にこれに近い形になりつつあり、あまり築年数が古いと損害保険会社が新規の契約を引き受けないケースがでてきています。
築年数による新規契約等の契約引き受け制限とは?
具体的に築年数による契約の引き受け(損害保険会社が火災保険の申込を承諾し、保険契約が成立すること)制限はどのようなものかみていきましょう。特に想定されるのは次の2つです。- 火災保険の新規契約の引き受けをしない
- 火災保険の長期契約の引き受けをしない
また火災保険の保険料を節約するために長期契約にすることがありますが、長期契約の引き受けにも制限がかかることがあります(新規はもちろん継続契約でも)。いずれも損害保険会社によって基準が異なりますが、新規の方が条件が厳しいことが多いでしょう。
他の損害保険会社で契約することが簡単にできないことがあるのです。生命保険を他社に乗り換えする場合、健康上の問題などから他社に加入してから解約しますが(先に解約すると乗り換え先に加入できない可能性があるため)、火災保険でもこれに近いことを考えなければならなくなってきているのです。
契約に引き受け制限が入る理由
なぜ契約の引き受け制限が設けられたかというと、築年数が古くなると、新築や築浅の物件よりも単純にリスクが高くなることが原因です。電気や給排水設備の老朽化により火災・水濡れのリスクが高くなる、あるいは台風・大雪などでの建物損壊のリスクも高まる傾向にあります。このように老朽化が進むとどうしても壊れやすく、保険事故が起こりやすい物件となっていくため、それを保険料に反映させる必要があるのです。
またリスクの高い物件を長期契約にすればさらにリスクが高くなるため、保険期間1年など長期契約をしない方向になります。保険会社としてそれでも厳しければ、契約の引き受けをしないという選択になるわけです。
契約の引き受けの現状
2024年10月1日に多くの損害保険会社が火災保険の改定を実施しています。新たに地域によって細分化された水災リスクの料率が導入されています。あまり話題になりませんが、これと同時に築年数料率をさらに細分化している損害保険会社があります。
築年数別料率も5年、10年刻みで料率が変わっていたものが、所定の年数までは毎年変わる仕組みになったケースもでています。
火災保険見積もりをネットで作成できる場合、どこも築年数を入れることが必須になっています。見積もりの作成について「築●年以上は引き受け不可」と明確にしているケースもあれば、照会などが必要なケースもあります。
損害保険会社によって引受基準は異なるので一概に言えませんが、おおむね築年数で40年以上経過していると制限を受ける可能性はかなり高いと考えてください。損害保険会社によってはもっと早い築年数で制限を受けることがあります。
今後火災保険を契約する上で考えておくこと
大事なことは、まずは今のこの状況をしっかりと理解しておくことです。これまでと同じように火災保険はいつでも簡単に加入できるものだと思わないでください。築年数が古くなれば安易に火災保険を他社に乗り換えることもできなくなります。また火災保険の改定はこれからも実施されるでしょう。引受基準もさらに変わる可能性があるので、継続して情報収集することを心掛けてください。
自然災害が増えたことによる保険金の支払い増加、築年数の経過などはいずれも自分でコントロールできることではないので、当面この状況が改善されるとは思えません。
過去、火災保険は最長36年契約することが可能でした(主に2015年10月に10年に短縮、2022年10月に5年に短縮)。
例えば過去に火災保険を30年などの長期契約をした人、あるいは2015年10月の改定直前に10年以上の長期契約にした人は、満期の時にびっくりするほど保険料が高くなっているはずです。加えて長期契約にしている分、満期時には築年数がさらに古くなっていますのでいろいろな影響を受ける可能性が高いので注意してください。
築年数が古い場合、古くなる前に考えておくことと対策
築年数が経過していくとその対策はかなり限定されます。火災保険の加入をする際には築何年まで契約可能なのかを確認しておきましょう。目先の保険料はもちろん大切ですが、どのくらいまで契約可能なのか、何か条件があるのかなどしっかりチェックしてください。古くなると築年数の関係で他社に契約を移せないこともありえますから、契約先の損害保険会社や保険代理店とはうまく付き合ってください。
また加入できる保険金額に上限があるので、すべての人が利用できるわけではありませんが、個別の状況によっては火災共済を利用するのも今後の選択肢の一つになるでしょう。