65歳までの雇用はどうなる? 大企業の約8割が「継続雇用制度」を導入?
国は、2013年「改正高年齢者雇用安定法」で、「継続雇用制度の導入」「定年の引き上げ」「定年制の廃止」のいずれかの措置(=雇用確保措置)を「原則65歳まで雇用」するよう企業に義務づけました。厚生労働省「令和4年 高年齢者の雇用状況(6月1日現在)」によると、99.9%の企業が雇用確保措置を実施済みです。最も多いのは「継続雇用制度の導入」で70.6%、「定年の引き上げ」は25.5%、定年制の廃止は3.9%です。以下詳しい対応割合を、全企業(中小企業/大企業)でご紹介します。
- 継続雇用制度の導入:70.6%(69.6%/83.3%)
- 定年の引き上げ:25.5%(26.2%/16.1%)
- 定年制の廃止:3.9%(4.2%/0.6%)
(内訳)中小企業(21~300人規模)21万8785社/大企業(301人以上規模)1万7090社
65歳定年を導入している企業は全企業の22.2%(22.8%/15.3%)にすぎません。一方、「公務員65歳定年」は2023年度からスタートします。「公務員65歳定年」が、企業の65歳定年の呼び水となることを期待したいですね。
次に、70歳までの就業機会確保を目的に改正された「改正高年齢者雇用安定法」に対する企業の対応を見ていきましょう。
就業確保措置を実施済み企業は3割弱
70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とした「改正高年齢者雇用安定法」(2021年・令和3年4月1日施行)では、次のいずれかの措置(以下「就業確保措置」)で就業確保するよう求めています。- 継続雇用制度の導入
- 定年の引き上げ
- 定年制の廃止
- 継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
全企業の27.9%(28.5%/20.4%)は、就業確保措置を実施済みです。最も多いのは継続雇用制度の導入で、次に定年制の廃止、そして定年の引き上げ、と続きます。創業支援等措置は対応に戸惑っているのでしょうか、着手したとは言えない割合です。
1.継続雇用制度の導入:21.8%(22.0%/19.0%)
2.定年の引き上げ(66歳以上定年):3.2%(3.4%/0.8%)
●66歳~69歳定年:1.1%(1.2%/0.2%)
●70歳以上を定年:2.1%(2.2%/0.6%)
3.定年制の廃止:3.9%(4.2%/0.6%)
4.5.「創業支援等措置」の導入:0.1%(0.1%/0.1%)
なお「66歳以上が働ける制度のある企業」は40.7%(41.0%/37.1%)、「70歳以上が働ける制度のある企業」は39.1%(39.4%/35.1%)で、大企業・中小企業を問わず前年より2~3ポイント増加しています。
企業は65歳以降の雇用のための処遇改善や人事・賃金制度の抜本的な見直しに着手していますが、最も必要と思われるリスキリングに対してはどうでしょうか。
企業のリスキリングへの動きは遅い
雇用保険の教育訓練給付制度には学びたいと思う講座が意外とそろっている。もっと早く申し込めばよかった
リスキリングとは、時代にあわせた新しいスキルを、学びなおしによって習得することを指します。
株式会社ビズリーチが2021年10月に行った「リスキリングに関する調査レポート」(有効回答数:ビズリーチ会員970件、経営層・人事担当者245件)によると、現在リスキリングに「取り組んでいる」企業は19.2%にすぎず、「今後取り組む予定がある」9.8%、「検討中」28.2%、と企業の動きはかなり遅く感じます。
2022年通常国会で政府は「今後5年間でリスキリングに1兆円投資する」と表明しました。長く働き続けるためには、何歳であってもスキルの学びなおしが欠かせません。
まず国には人材開発支援助成金や教育訓練給付制度などを補完し、社会が必要とするスキルを身に付けるための支援策の充実をしてもらいたいものです。そして企業にも社員が学びなおしによって、長く働けるような支援策の実施を期待したいですね。
●参考資料
・厚生労働省 令和4年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11703000/000955633.pdf
・70歳までの就業機会確保のための「改正高年齢者雇用安定法」(令和3年4月1日施行)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000651167.pdf
・株式会社ビズリーチ「リスキリングに関する調査レポート」
https://www.bizreach.co.jp/pressroom/pressrelease/2021/1129.html