ボカロブームの拡大
知っている人もいるかもしれませんが、クリプトンはその後、「VOCALOID 2」を使って「鏡音リン・レン」「巡音ルカ」といった新たなキャラクターシリーズを発表し、ヒットさせていきます。さらに同じ「VOCALOID 2」を使ったソフトとして、株式会社インターネットから「Megpoid」「がくっぽいど」「Lily」が、株式会社AHSから「氷山キヨテル」「歌愛ユキ」「猫村いろは」が発売されるなど、声のバリエーションも増えていき、それらも相乗効果となってボカロブームはさらに大きくなっていったのです。ちなみに、「VOCALOID 2」という名称からも分かるとおり、その前のバージョンである初代「VOCALOID」というものもあり、そのころにクリプトンは「KAITO」「MEIKO」というソフトも出していました。当初あまり売れていなかったのですが、初音ミクの大ヒットに伴い、売れるようになっていったのです。
さらにヤマハは、より上手に歌えるように、より使いやすく入力できるように「VOCALOID 3」「VOCALOID 4」と開発を進め、最新版は「VOCALOID 5」へと進化していきました。その過程で、「結月ゆかり」「IA」「兎眠りおん」「蒼姫ラピス」「マクネナナ」「flower」「桜乃そら」「鳴花ヒメ・ミコト」……と、バリエーションが増えていったのです。
初音ミクに関しても、「VOCALOID 2」をベースにしたものから「VOCALOID 3」をベースにした「初音ミクV3」、さらに「VOCALOID 4」をベースにした「初音ミクV4X」へと進化。最新版は「VOCALOID 5」ベースではなく、クリプトン独自のエンジンを使った「初音ミクNT」に進化しています。
「VOCALOID=キャラクター」ではない?
ちなみに、こうしたソフトはあくまで歌声を合成するための音楽制作ソフトウェアであって、キャラクターが動いたり、踊ったりというものではありません。これは「VOCALOID」とは別に、3DCGソフトウェアなどを利用して動かしているのです。中でもフリーウェアとして登場した「MikuMikuDance(略称:MMD)」は、キャラクターの3Dモデルを操作することで初心者でも簡単にアニメーションを作成できることから大ヒットとなり、多くのボカロ作品にも利用されています。いずれにせよ、音楽と映像はまったく別々で作られているわけなのです。以上、簡単に初音ミクというソフトを基軸に紹介してみました。現在では、初音ミクは単にコンピュータのソフトウェアという範疇にはとどまらず、バーチャルアイドル、キャラクターとしてゲーム、フィギュアといったところからぬいぐるみ、Tシャツ、キーホルダー、タオル……と幅広く展開されています。キャラクタービジネスとしてディズニーやサンリオにも負けない強力なものへと15年間で成長したといえるでしょう。また、初音ミクによるさまざまなコンサート、ワールドツアーまでもが開催されていたり、初音ミクをテーマとした大規模イベントである「マジカルミライ」も2022年で10周年になるなど、初音ミクの活躍は今後もさらに広がっていきそうです。