早川監督の演出は、何もしないこと
ー磯村さんが演じたヒロム役は、出番は多いけど、セリフはそれほどなく、細かい表情で見せるお芝居をされていたという印象です。役作りや早川監督の演出について教えてください。磯村
早川監督には、本読みのときから「何もしないでほしい」と言われました。リアリティを大切にしている監督なので、撮影現場でも、余分な動きや動作は排除していました。
撮影前、僕は役を捉えるためにヒロムについて考えていきましたが、現場で、自分が考えてきたヒロムを出すことはありませんでした。実際に撮影現場で、そのとき感じる気持ちが大事だと思ったので。ヒロムのおじさん役のたかお鷹さんとのやりとりで何を感じるかを大切にして演じました。 ―ヒロムは真面目に「プラン75」の申請窓口で働いていたけれど、おじさんが申請に来てから、少し変わっていきますよね。
磯村
疎遠になっていたおじさんですが、申請に来た意味を考えると、そこで心が動くのはやはり身内の縁なのでしょうね。切っても切れないものなのだと思います。「プラン75」に対して感じていた違和感を封印して働いていたヒロムですが、おじさんとの再会で、「プラン75」と改めて向き合い、考えることになる……。その先、ヒロムが何を思い、どう行動に移すのかは、ぜひ映画を観ていただきたいです!
出演の決め手は、脚本にあり!
―完成した映画をご覧になった感想は? いかがでしたか?磯村
すごく良かったです。映画の始まり方も素敵で、とにかく映像が素晴らしかった! 撮影を担当した浦田秀穂さんの構図や色使いが、あまり日本映画にはないような珍しい撮り方だったので、僕にとって新鮮でした。
また、倍賞千恵子さんの引き込まれるような演技に、ヒロインの生命力を強く感じましたね。観終わった後、心にズドンと響いたし、生きることについて考えさせられる映画になっていると思いました。 ―今回、脚本にとても惹かれたとおっしゃっていましたが、磯村さんが出演依頼を引き受ける決め手はありますか?
磯村
やはり脚本です。引き込まれるような脚本かどうか、その魅力が重要だと思っています。脚本という土台の上に制作チームがいて、俳優たちがいるので。もちろん演出や俳優の演技なども大切ですが、まず脚本が大事だと思います。
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