2024年9月までのパートの社会保険加入基準とは?
2024年9月までは、パートとして働く方が社会保険(厚生年金、健康保険)に加入する基準は以下の通りでした。・従業員が常時100人を超える(*)会社に勤めている(特定適用事業所)
・週の所定労働時間が20時間以上
・雇用期間が2カ月以上見込まれる
・賃金の月額が8万8000円以上
・学生ではない
*100人以下の会社でも労使合意があれば加入は可能でした(任意適用事業所)。また従業員とは、厚生年金保険の被保険者数を指します。
2024年10月から加入基準が変わりました
2024年10月からの加入基準では以下の点が変更となっています。・会社要件
(変更前)従業員が常時100人を超えている
(変更後)従業員が常時50人を超えている なおパート自身の要件である、「週の所定労働時間が20時間以上」「賃金の月額が8万8000円以上」「雇用期間が継続2カ月超が見込まれる」「学生ではない」の基準については変更ありません。
厚生年金加入によるメリットは?
厚生年金に加入するメリットは将来の年金が充実することです。国民年金の加入だけでは、将来受け取れるのは老齢基礎年金のみです。しかし厚生年金に加入すれば、老齢基礎年金に加え老齢厚生年金が上乗せされることになります。また障害状態になった場合、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされることや、万一亡くなった場合、遺族には遺族厚生年金が支給されることなども大きなメリットです。厚生労働省ホームページにはモデルケースでの保険料負担額と将来の受け取り年金額の概算が示されており、月収8万8000円の方が1年、20年、40年間働いた場合の保険料負担額と年金額が表に、40年働いた場合については概算図として示されています。 40年の概算図からは、自身で国民年金に加入し年金保険料1万6000円(実際の金額は1万6980円/令和6年度)を負担している人が厚生年金に加入すると、厚生年金保険料の本人負担は8000円に減る一方で、将来受け取る老齢厚生年金は約1万9000円上乗せされることが分かります。
なお、配偶者の扶養に入っている方(夫が厚生年金に加入している会社員の妻など)は第3号被保険者とよばれ、そもそも保険料の支払いはありません。しかしながら厚生年金への加入基準変更により、ご自身で厚生年金に加入することになると毎月の保険料が約8000円発生します。ただ、この場合も将来受け取る年金には、老齢厚生年金分として約1万9000円が上乗せになることが分かります。
加入基準の変更で健康保険が充実します
2024年10月からの基準変更は厚生年金のみならず、健康保険の加入基準変更でもあるため、その健康保険が充実することもメリットです。そもそも医療給付の内容は、各医療保険制度(国民健康保険・協会けんぽ・健康保険組合など)共通で、基本的に本人・家族で差はありませんが、一部の現金給付(傷病手当金、出産手当金)については差があります。ご自身で健康保険に加入することになると、病気やけが、出産などで仕事を休まなければならない場合に、傷病手当金や出産手当金として賃金の3分の2程度の給付を受け取ることができます。
なお、これまで配偶者の加入している健康保険の扶養に入っていた方は、従前の健康保険とこれから加入する健康保険の独自の給付内容に違いがある場合があります。またこれまでは第3号被保険者として健康保険料の負担はありませんでしたが、今回の基準変更によりご自身で健康保険に加入することになれば、保険料の負担が生じる点は承知おきください。
まとめ
いかがでしょうか。今回は2024年10月から変更となった、パートの方の社会保険加入基準について解説してみました。例えば、これまで夫の社会保険上の扶養の範囲内で働いていたパートの妻が、社会保険加入基準の変更によって扶養から外れれば、目先の保険料負担で手取りが減ることに釈然としない部分があるかもしれません。しかしながら厚生年金についていえば、保険料は会社と従業員自身の折半であり、今後自分が払うことになる厚生年金保険料と同額を会社も払っているのです。それを含めた額から算定される老齢厚生年金が、老齢基礎年金に上乗せされ支給されることは非常に大きなメリットといえます。
少なくとも今回の社会保険適用拡大により、50人を超える会社にお勤めのパート従業員は、将来の年金額が増え、今後のライフプランを立てやすくなるのは間違いないかと思います。
〈参考〉
厚生労働省 社会保険適応拡大特設サイト
政府広報オンライン
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