推し活はメリットばかりではない? ハマりすぎて後悔することも
推し活に夢中になりながら大切なものを見失っていませんか? 自分の本心に気づくための方法とは
一方で、推し活にハマりすぎることで、大切なものを失ってしまうこともあります。その最たるものは、「お金と時間」。夢中になるあまり、推しのライブや舞台、グッズに大金を費やしすぎて生活が不安定になったり、活動を長く続けた後で「貴重な時間を無駄にしてしまった……」と疲れやあせりを感じたりする人もいるようです。
夢中になっているときにはなかなか気づけないものですが、ふと冷静になると、大切なものを費やし過ぎたと感じ、後悔してしまうこともあります。
「推し活あるある」? 現実の恋愛チャンスを失ってしまうケース
それだけではありません。推し活にあまりに夢中になりすぎると、「人生の目的」も見失いがちになります。そもそも、推しに心がときめくのは、エンターテインメントという消費活動の枠の中で、安全に「恋愛気分」を味わえるからではないでしょうか。ただし、推し活で得られるのはあくまでも「恋愛気分」であり、現実の恋愛ではありません。現実の生活の中でパートナーと出会い、傷つきながらも深くかかわりあうことで互いを成長させ、新しい人生の創造を試みるのが、現実の恋愛です。
ですが、推し活に夢中になっている人の中には、心の奥では「現実の恋愛がしたい」という思いがあるのに、その気持ちに向き合わずに推し活に時間を費やしているうちに、恋愛のチャンスを取り逃がしている方が少なくありません。
推し活は恋愛の代償行動。「心の防衛反応」で依存していないかチェック!
カウンセリングでも、何年も熱心に推し活を趣味にしていた方から、「本当にこれでよかったのか」「もっと有益なことに時間を使えばよかった」といった声を聞くことがあります。推し活に夢中になっている最中は、「恋愛なんか必要ない! 推しと応援する仲間さえいれば、じゅうぶんに幸せ」と感じるものですが、その熱意をいつまでも持ち続けられるわけではありません。推しの状況が変わればファンでいられなくなることもありますし、推し仲間との交流が薄れていく中で「今までの熱っぽい日々はなんだったのだろう?」と思う日が来るかもしれません。そういった将来の可能性にうっすら気づきながらも、日々推し活に依存してしまうのはなぜなのでしょう?
心理学に「代償行動」という言葉があります。手に入れたいものが自分のものにならないと感じたとき、他のもので代償して欲求を紛らわせる心の防衛反応のことです。推し活に夢中になりながらも、心のどこかで満たされない思いを抱えている場合、それが本当にやりたいこと(恋愛)ではなく恋愛の「代償行動」によって自分の欲求を満たそうとしているから、ということも考えられます。そのため、「恋愛がしたい」という本心に蓋をして心のどこかで虚しさを感じている、そんなケースが少なくないように思います。
不安や違和感を見逃さず、自分の本心にも向きあおう
では、恋愛の代償行動としての推し活への依存から抜け出し、自分の本心に向き合うには、どのように行動したらいいのでしょう?もし、推し活をしているときに、心のどこかに不安や違和感があるのなら、これらのサインをキャッチして、じっくり自分の心と対話をしてみてください。「楽しいことをしているはずなのに、ふとむなしくなるのはなぜ?」「推しのことばかり考えているけど、他のもっと大切なことに目を向けるのを避けていないだろうか?」、このように、心に湧く不安や違和感という小さなサインをキャッチしてじっくり考えていると、自分の本心が少しずつ湧き出してきます。
内省して見えてきた本心を、推し仲間以外の誰かに聞いてもらうのもいいと思います。人に話すことで、自分の考えはより明確になります。話を聞いてくれる相手から意見をもらうことで、自分自身を客観的にとらえることができます。すると、自分が今後どうするべきか、より広い視野から考えることができるようになると思います。
上でお伝えしてきたように、推し活は自分の心にときめきと元気を与えてくれる楽しいファン活動です。同時に恋愛の代償行動にもなるため、依存しすぎるとお金や時間をたくさん費やし、自分にとっていちばん大切な「人生の目的」を見失ってしまうこともあります。これを避けるためには、心の中に潜む不安や違和感などの小さなサインと向き合って自分の本心を探り出し、後悔しない生き方を考えていくことがとても大切なのだと思います。