話し方・伝え方

侮辱を受けたらどうする? 上手に抗議するための3つの注意点【反射的な暴力はNG】

もし皆さんが、強く抗議しなければならない場面に遭遇した場合、どのような点に気をつければいいのでしょうか。怒ることは悪いことではありませんが、気をつけたいポイントがあります。トラブルを最小限にする方法を確認しておきましょう。

藤田 尚弓

執筆者:藤田 尚弓

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冷静に抗議をするときの3つのポイントを確認

先日、アカデミー賞授賞式で、俳優のウィル・スミス氏が妻であるジェイダ・ピンケット氏を侮辱するような発言をしたコメディアンに対し、暴力をふるったことが話題になりました。奥様のために平手打ちをしたウィル・スミス氏を称賛する人、いかなる事情でも暴力は良くないと非難する人……。さまざまな意見が出たのは皆さんもご存知のとおりでしょう。

もし皆さんが、侮辱を受けるなど強く抗議しなければならない場面に遭遇した場合、どのような点に気をつければいいのでしょうか。トラブルは最小限に、言うべきことは伝える。抗議をするときの3つのポイントを確認しておきましょう。
 

怒ることは悪いことではない

この記事を読んでいる人の中には「怒るのは悪いことだ」と思っている方もいるかもしれません。

怒りは、
  • 自分の価値観
  • 信念
  • 権利
にそぐわない、好ましくない刺激に対する感情反応と定義されています(※1)。このように確認してみると、怒るというのは私たち人間にとって、ごく当たり前の感情であり、怒りの感情を抱くこと自体は悪いことではないとわかります。

周囲と友好的にやっていくことは望ましいですが、職場などで、あえて怒り感情を見せたほうがいいケースもあります。部下を守るために無理な要求をしてくる人に対して怒らなければならないケース、あまりに失礼な振る舞いに対して、こちらが不快に思ったということを伝えた方がいいケースなどです。怒って見せるという行為には、攻撃を防ぐ効果もありますし、相手から謝罪を引き出すこともあります(※2)。

しかし、怒りは敵意(慢性的な不信と否定)や攻撃(他人を傷つけること)とは違います(※3)。怒ることもあるのは人間にとって当たり前ですが、だからといって相手への敵意を前面に出していいわけではありませんし、いきなり攻撃していいわけでもありません。抗議をしなければならないときには、以下の点に気をつけるようにしましょう。
 

反射的な抗議はNG! 抗議することを選ぶのはOK

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反射的に怒りをぶつけるのはNG

不快なことがあったら、反射的に抗議する。これは失敗が多いやり方です。自分の行動や人生をコントロールできていないといえるかもしれません。怒りに振り回されて自動的に攻撃するのではなく、怒りを感じていることを確認し、今回は抗議をするのかしないのか、自分の意志で選択しましょう。

どういう行動をしたいのか。どんな人になりたいのか。感情に振り回されることなく選ぶのが大切です。抗議すると決めたら、限定的な抗議を心がけましょう。

例えば、相手の失礼な発言に対して抗議するのはOKですが、怒り感情を丸出しにして怒鳴り散らすのはNG。相手の全人格を否定するような発言や、暴力をふるうなどの行動もしてはいけません。

以下にいくつか事例を挙げますので、イメージを掴んでおきましょう。

事例1)ウィル・スミス氏が妻を侮辱されたように感じたケース
<OK> 
侮辱されたと感じる→怒りを感じる→他の方法ではなく、抗議することを選択→侮辱と感じた発言に対して抗議

<NG> 
侮辱されたと感じる→怒り感情に動かされる→殴る

事例2)無理な要求をされている部下を守りたいケース
<OK> 
度を越した要求だと感じる→部下を守らなければと考える→他の方法ではなく、抗議することを選択→度を越した部分に関して抗議

<NG> 
度を越した要求だと感じる→怒り感情に動かされる→相手を攻撃する

事例3)商品やサービスに問題があり対応を求めたが、改善されずに待たされ続けているケース
<OK> 
問題があることだけでなく、対応もひどいと感じる→怒りを感じる→他の方法ではなく、抗議することを選択→状況の把握と具体的な改善を強く求める

<NG> 
問題があることだけでなく、対応もひどいと感じる→怒り感情をコントロールせずに「まったくなっていない」などと全否定
 
不快なことがあったからと、反射的に攻撃していたのでは、トラブルの多い人生を歩むことになります。どんな方法で相手に改善してもらうのがいいのか。どう振る舞うのがいいのか。考えて行動するには、訓練が必要です。初めは難しいかもしれませんが、必ずできるようになりますので、少しずつ意識していきましょう。
 

求められる役割や同調圧力にも注意

筆者はウィル・スミス氏の一件を見て「ヒーロー役を多くこなしてきた彼が、無意識のうちにヒーロー的な振る舞いをしなければならないような心理になったのではないか」とも考えました。

私たちの社会には「看護師なのだから温かく接するべきだ」「警察官なのだから、立ち向かうべきだ」など、立場上求められる振る舞いがあります。求められるものと実際の気持ちが一緒であればいいのですが、そうではないケースもあるでしょう。少年の非行などでも、遊び仲間が見ていたからやり過ぎたといったケースがあります。大人の社会であっても「男だったらガツンと言わないとダメだろう」といった雰囲気に飲まれてしまうというケースもあると思います。
 
日本人は良くも悪くも集団主義の傾向があります。知らず知らずのうちに大多数の意見に誘導されてしまうような同調圧力も無視できないでしょう。
 
本当に自分が抗議をしたいのではなく、「抗議するべきなのだろうな」と感じているときには、どうか冷静になってよく考えてみてください。強く言うという方法以外でも、自分が納得できない状況を変える方法はあります。できるだけ多くの選択肢を持つことは、よい人間関係を維持していく上で助けになります。
 

抗議をするときの3つのポイント

怒りを感じたときでも冷静に対処できるよう、ポイントをおさらいしておきましょう。
 
  1. 怒ってもいいが、反射的に攻撃しないようにする
  2. 抗議するのか、他の方法で解決するのか「自分の意志で」選ぶ
  3. 抗議する場合には「部分的に」抗議するようにする

最後に筆者の好きな言葉をご紹介して終わりたいと思います。

「正しいことを言うときは少しひかえめにするほうがいい。正しいことを言うときは相手を傷つけやすいものだと気づいているほうがいい」(吉野弘「祝婚歌」より )

言うべきことを、言う。それは大切なことですが、わざわざ感じの悪い言い方をする必要はありません。よい関係が長く続けられるような伝え方をしたいものですね。


<参考文献>
※1:Thomas, S.P.(1995). Women’s anger: Causes, manifestations and corre- lates. In C.D. Spielberger & I. Sarason(Eds.), Stress and emotion(Vol. 15, pp. 53-74). Washington, DC: Taylor & Francis.

※2:Izard, C.E.(1993). Organizational and motivational functions of dis- crete emotions. In M. Lewis & J.M. Haviland(Eds.), Handbook of emotions(pp. 63141). New York: Guilford Press.

※3:Thomas, S. P.(2001). Teaching healthy anger management. Perspectives in Psychiatric Care, 37(2), 41-48.
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