ストレス

攻撃的な「YOUメッセージ」・気持ちを伝える「Iメッセージ」

【公認心理師が解説】「あなたは〇〇すべき」「みんな○○しているのに」という伝え方は攻撃的に聞こえ、こうした言葉を聞くと会話がぎくしゃくしてしまいます。自分の気持ちを上手に伝える「Iメッセージ」で伝えれば、建設的な話し合いができます。「Iメッセージ」の使い方について詳しく解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

会話のトラブル、人間関係のストレスが生じやすい会話の例

話し合い

会話で揉めてしまう場合、伝え方に問題があるのかもしれません

話し合いの際にしばしば話がかみあわなくなり、揉めたり、会話をストレスに感じたりしてしまう。このように話し合いがスムーズに進まず、人間関係がぎくしゃくしがちになる場合には、「伝え方」に2つの問題がある可能性があります。
 
1つ目は、自分の要望を伝える際に、つい相手を責める言い方になっているパターン。自分では「前向きな提案」のつもり、あるいは「素直な要望」としてありのままの気持ちを伝えているつもりでも、「どうして〇〇してくれなかったんですか?」「なぜ〇〇しようとしないの?」というように、相手を非難する伝え方になっているというパターンです。

2つ目は、自分の基準で「これができてあたりまえ」「こうするのが当然」と感じていることを、相手にそのまま求めてしまうパターン。「みんなこうしていますよ(なぜ知らなかったんですか?)」「みんなやってるのに(なぜできないんですか?)」というように伝えている場合、その言葉を受けた相手は、自分が責められているように感じてしまいます。
 

「YOUメッセージ」「WEメッセージ」で伝えると会話は続かない

上記の1つ目の伝え方を「YOUメッセージ」、2つ目の伝え方を「WEメッセージ」といいます。 

1. YOUメッセージ(「あなた」が主語になったメッセージ)
「(あなたが)○○するべき」「なぜ(あなたは)〇〇しないのか」というように、「あなた=YOU」を主語になると、相手への要求が強すぎてしまいます。
 
2. WEメッセージ(「我々」が主語になったメッセージ)
「みんな○○している(なぜそうしないの?)」「これが常識(なぜ知らなかったの?)」というように、「私たち=WE」が主語になると、相手を責める言い方になりがちです。
 
これら2つの伝え方で要求や思いを伝えてしまうと、相手は「攻撃的なメッセージ」だと受け止めてしまいます。人は攻撃を感知すると、本能的に「逃げるか、闘うか」の心境に至ります。これを「闘争・逃走反応」と呼びます。
 
この闘争・逃走反応が生じると、相手が何を要求しているのかを考える前に、攻撃への防御をとるようになります。そして「そもそもなぜ攻撃されなければならないのか!」「そんな言い方することないじゃないか!」というように、怒りの感情が湧いてしまいます。あるいは、「〇〇さんだってやっているじゃないか!」「自分だけのせいじゃないぞ!」というようにその場しのぎの口実を探そうとしてしまいます。
 
会話がこのような方向に向かうと、相手にいくら「こうしてほしい」という思いを伝えようとしても、伝わらなくなってしまいます。場合によっては、伝え方ひとつで恨みを買ってしまうこともあるのです。
 

建設的な話し合いには「Iメッセージ」を活用しよう

そもそも、人になんらかのメッセージを伝えるのは、自分の気持ちを分かってほしいため、あるいは相手に行動を改めてほしいためであることが多いのではないでしょうか? そうであるなら、その思いが相手にきちんと伝わるメッセージで伝える必要があります。
 
そこで、ぜひ活用してほしいのが「Iメッセージ」です。「Iメッセージ」とは「私」を主語にした伝え方のこと。

「(私は)○○してほしい」
「(私は)○○してくれると助かります」
「(私は)○○していただけるとうれしい」
「(私は)○○されるとつらいです」

というように、「私」を主語にして自分の気持ちを伝えてみてください。この伝え方で伝えると、相手は「攻撃」ではなく「素直な気持ち」としてメッセージを受け止めるため、自然に耳を傾けやすくなりますし、自分の行動を反省しやすくなります。
 
使い慣れていないと、照れくさいかもしれません。でも、そもそも照れくさく感じる言葉には気持ちがこもっています。そのため、相手はその言葉にぐっと惹きつけられ、真剣に聞かなければと思うのです。「そうか、あなたはそういう気持ちでいるのか」というように素直に受け取ることができ、相手の気持ち、相手の立場を想像するようになります。
 
そして「Iメッセージ」が相手に届いて自分の思いをわかってもらえたなら、「ありがとう」「うれしい」というように、さらに素直な気持ちを相手に伝えましょう。自分の気持ちを理解し、受け止めてくれた相手に、心からの感謝と喜びの気持ちを伝えるのです。こうした伝え方を続けていると、相手はその素直な言葉にますます心を動かされ、「他人の気持ちを思いながら行動する必要があるのだな」というように考えるようになっていくでしょう。
 

素直な気持ちを伝えると、建設的な話し合いができる

他人の行動を変えるのは、難しいもの。攻撃したら防衛されてしまいます。無理強いしたら抵抗されてしまいます。自分の気持ちを理解してもらい、要求に耳を傾けてもらうためには、まず相手の気持ちを尊重することが大切なのです。そのうえで、伝え方を工夫していくことが大事です。
 
攻撃的な伝え方をして人が動いてくれるのは、切羽詰まった状況のとき、相手に危機を感じているときだけです。1回程度なら動いてくれる人もいるでしょうが、重ねて何回も攻撃的な伝え方を使うわけにはいきません。

だからこそ、相手の行動を変えるには、謙虚になって、素直な気持ちを相手に伝えることが大切なのです。ぜひ「Iメッセージ」を活用して、ご自身の素直な気持ちを伝えてみていただければと思います。
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