50代女性の「中年の危機」、熟年女性ならではのつらさとは?
50代に入ると心が不安定になり、自分の軸がわからなくなる。それは「中年の危機」かもしれません
50代男性の「中年の危機」について、「50代男性が「中年の危機」に陥る5つの要因・対策法」でお伝えしましたが、今回は50代女性について解説します。
50代女性を「中年の危機」に陥らせる4つの要因
「中年の危機」の要因は男女ともに共通するものも多いですが、近年の50代女性は特に次の4つがきっかけとなり、心のバランスを崩しやすくなると考えられています。1. 女性ホルモンの激減と若さの喪失・老いへの不安
40代後半から女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少し、それに伴い更年期障害が生じる方は少なくありません。ホットフラッシュ、冷え、疲れやすさなどの身体症状のほか、あせり、不安、怒り、憂うつなどの精神症状も生じやすく、50代は心身共に揺れやすい年代となります。
またエストロゲンの減少は、見た目の変化に如実に影響します。肌の張りや透明感が失われ、日に日に老化を実感するようになり、見た目の若々しさを失うことは大きな喪失感となります。加齢に伴う筋力の低下、代謝に低下による脂肪の蓄積によって、不安定な姿勢、丸みを帯びた体形になりやすく、全身に老けた印象になる自分を見るにつれ、自信を失いやすくなります。
2. 空の巣症候群と人生目標の見失い
50代女性の子どもの多くは中学生から社会人へと成長していることが多く、母親としての役割に一区切りがつく頃です。多くのエネルギーを子育てに注いできた女性は、子どもが親から離れていくと共に、母としての役割を失ったむなしさである「空の巣症候群」を実感しやすくなります。子育てに代わる情熱の矛先が見つからず、「何のために頑張ってきたんだろう」という思いにとらわれ、日々を呆然と過ごす方も少なくありません。
「空の巣症候群」について詳しく知りたい方は、「子どもが巣立ったら襲われる虚無感・「空の巣症候群」からの脱出方法」をぜひご覧ください。
3. 女友だちとの共感不全、パートナーとの会話のすれ違い
1~3でお伝えしたように、50代はたくさんの不安に直面する年代ですが、友だちに相談しても不全感を覚えがちです。かつて仲の良かった女友だちやママ友も、50代にもなればライフスタイルや子どもの進路が異なり、旧交を温めても共感しきれない寂しさを感じやすくなるものです。かといってパートナーと話しても、異性であることによる視点や価値観の違いを感じることが多く、やはり共感でない寂しさを感じることもあるでしょう。こうして、友人や家族はいるのに孤独を感じる50代は少なくありません。
4. 子育てから介護へ、家庭から仕事へ……日常活動の大転換
50代には、日常活動の軸も大きく変わっていきます。家庭での関心事は、子育てから夫の健康や親の介護へと移り、実家を訪ねて親の世話を手伝う日が増えるようになります。また、専業主婦が子どもの学費準備のために働き始めたり、逆に働く主婦が仕事を辞めて家庭に入るようになるなど、日常活動の軸が大きく変化していく時期でもあります。生活が大きく変わると、変化に対応するために心身のエネルギーを大きく消費します。
「まさか!」のショックが「中年の危機」を引き起こす
上で紹介した4つの要因のように、50代には自分の体調から家族との関係まで、いくつもの変化が一気に押し寄せ、ストレスを溜めやすくなる年代なのです。さらには、老後のお金の不安、子どもの受験や就職の心配など、家庭の中で課題となることも増えていくため、若い頃のように楽観的ではいられず、考え込む時間が増えてしまうものです。こうした変化は長い時間をかけてじわじわと受け入れていくこともあれば、急に自覚してショックを受けることもあります。後者の場合、自分が既に失っていたもの、変化していたものに急に直面するため、混乱してしまいます。「中年の危機」の多くは、この「まさか!」のショックによって生じます。
元の形に戻そうと自分を追い込んで頑張ったり、躍起になって関係性を立て直そうとしたりしても、長い時間をかけて変化してきたものを元に戻すのは難しいものです。
心配しないで、「今がどん底」! U字カーブで人生は再び楽しくなる
とはいえ、心配しすぎることはありません。自分の状態も周りの人との関係も、日常生活のあり方も、年齢とともに変化するのは自然の成り行きです。元に戻そうと躍起になるより、変化を受け入れ、変化の流れに沿って生きることが、「中年の危機」を乗り越える鍵となるのです。「中年の危機」で苦しむのは、自分が年齢と共に失ってきたものに執着するからです。まずは、その執着を手放してみましょう。「50代になれば日々、老いを実感するもの。40代と同じではいられない」「50代になれば、いくつもの課題が押し寄せて難儀をするもの。そういう年代なのだ」と諦めてしまえば少し気持ちが楽になり、年齢なりの課題に適応していこうという気持ちも湧いてきます。
「諦め」は、必ずしもネガティブな言葉ではありません。「諦める」は「明らめる」と書き換えることができます。つまり、失ったものへの執着を“諦める”ことで、これからの自分の生き方や取り組むべきことが“明らかになる”ということです。
複数の国際調査でも、50歳前後の生活満足度は最も低いという結果が出ていますが、50代後半からは再び上昇していきます(※1)。国内の調査でも50代の生活の充実感は低く、60代から上昇するという結果が出ています(※2)。50代から直面する課題を受け入れ、認め、執着を諦めることによって、人生は再び楽しく、充実したものに思えるようになるのです。
50代に入ってつらい、切ない、不安、苦しいという気持ちに取り巻かれている方は、「大丈夫、今が人生のどん底。人生はU字カーブでよくなっていく!」とぜひ繰り返し唱えてみてください。その言葉が自分の心の中に浸透する頃には、苦しみの出口がきっと見つかっていくでしょう。
■参考資料
※1:『ハピネス・カーブ 人生は50代で必ず好転する』ジョナサン・ラウシュ著(CCCメディアハウス)
※2:『国民生活に関する世論調査』(令和3年9月調査)内閣府