「中年の危機」要注意世代は50代に…子育て負担、将来不安で長引くミドルの悩み
40代までは順調だったのに、50代に入ると急に不安が増してくる……それは「中年の危機」かもしれません
以前は、40代が「中年の危機」の要注意世代と言われていました。しかし、昨今では晩婚化の影響から、50代でも子どもの扶養や子育て負担が続く人が増えています。また、将来の年金減額や年金支給年齢引き上げなどへの不安などから、老後の生活を不安に感じる方も増えているようです。そのことによって、近年では50代になってから「中年の危機」を自覚する人が増えるようになりました。
50代男性の「中年の危機」、5つの要因
「中年の危機」は男女共に生じるものですが、男性の場合は特に下記5つの要因が影響しやすいものと考えられます。1. 仕事における限界の自覚
40代ごろまでは仕事における成長や可能性が未知数であり、挑戦しがいを感じている人が多いものです。ですが、50代に入ると現在の仕事における自分の成長に限界を覚え、かといって新しい領域で新規にスタートするには遅すぎると感じ、仕事に対する後悔や今後の仕事への不安を感じやすくなります。
2. 体力の低下・男性更年期症状
多少無理をしても40代まではスムーズに体力が回復していたのに、50代に入ると体の無理が利きにくくなります。生活習慣病などの身体のトラブルも生じやすく、体調に不安を覚え人が増えるのも50代です。また、男性更年期障害によって性機能の衰えを感じ、男性としての自分に自信をなくしていく人もいます。
3. 子どもの成長と老親の心配
休日は家族サービス中心だったのに、子どもの成長と共に手持無沙汰になり、家族団らんの機会が減って、寂しさを覚えるようになったりします。同時に老親の発病や介護の問題が降りかかり、新たなストレスが生じやすくなります。
4. 晩婚化による家計の不安
近年では晩婚化や高齢出産の影響から、50代で教育費や住宅ローン負担が重くなる家庭が増えています。一方で、仕事では55歳前後に役職定年を迎える方も多く、収支のバランスが崩れて家計の不安に襲われやすくなります。
5. 夫婦関係の希薄化
子育て優先で過ごしてきた夫婦の場合、子どもが自立するとともに夫婦関係がぎくしゃくしやすくなり、夫婦のあり方に不安を覚える方も増えていきます。夫婦関係を温め直そうとしてもお互いの感情がすれ違ったままで、ギクシャクした関係を立て直せないでいる夫婦も少なくありません。
夜明け前がいちばん暗い…悩み多き50代を切り抜けるコツ
50代に入る頃から上のようなことが次々に生じてくるため、50代で「中年の危機」に直面する方は少なくありません。しかし海外の調査によると、20代から80代までの生活満足度は50歳前後を底としてU字カーブを描くとされています(※1)。このように、50代は悩みや不安に直面しやすい世代なのですが、年齢と共に生活の満足度や充実感を取り戻せる傾向にあるのです。
心理学に「創造の病」という言葉があるように、新しい価値観、新しい境地を見出す直前には、病に陥るほど、もがき苦しむ時期があります。そして「夜明け前がいちばん暗い」と言われるように、悩みの突破口を見出す前には、闇の中を一人でトボトボ歩いているかのような心細さに襲われるものです。特にそれまで何事にも貪欲に励み、プライドを持って生きてきた男性にとっては、自信をくじかれるような思いに直面し、混乱している方も多いかもしれません。
ですが、先に紹介した統計からも、生活の充実感は年齢とともに再び上昇していく傾向にあります。この先きっと、悩みへの解決方法、生きる喜びや楽しさ、新たな生活の目標が見つかっていくでしょう。
したがって今、思い悩むことが多くても、あせらず、希望を失わずに毎日を歩んでいきましょう。日々の生活の中で興味を惹かれる物事があれば、できる範囲で探求し、新しい出会いのなかに刺激を見つけていくとよいでしょう。すると、悩みの出口が見つかり、今までとは異なる新しい価値観を身につけ、新たな人生の目標を見いだせていくかもしれません。
■参考資料
※1:『ハピネス・カーブ 人生は50代で必ず好転する』ジョナサン・ラウシュ著(CCCメディアハウス)
※2:『国民生活に関する世論調査』(令和3年9月調査)内閣府