定年後、どれくらい収入があって、どれくらい支出する?
老後の生活を考える時、やはり一番気になるのがお金の話。定年後、どれくらいの収入があって、どれくらい支出するのかは知っておきたいところ。受け取る年金額や生活スタイルによって、それぞれ差が出てきますが、まずは、全国の平均データをみてみましょう。【ガイドの福一さんが老後の収入源を解説!】
総務省が発表している2022年の「家計調査報告」の家計収支編から、老後の家計状況をみてみましょう。65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計は、実収入が24万6237円に対して、消費支出は23万6696円、また税金や社会保険料負担などでさらに3万1812円を負担しています。データによると2万2270円の不足となり、毎月約2万2000円相当の赤字ということになりますね。 このように、年金収入だけでは赤字に陥りそうな老後の家計。いくら貯蓄があっても不安になります。そこで、年金収入だけではなく、他にも収入を得ることが一番の老後生活対策といえるでしょう。
再雇用などで働く場合は現役時代の収入から大幅減と考えておく
定年後の働き方として、最も考えられるのが「再雇用制度」でそのまま会社で働くこと。厚生労働省が発表した「高年齢者雇用状況等報告」(令和4年)によると、60歳定年企業において、過去1年間(令和3年6月1日から令和4年5月31日)に定年に到達した人のうち、継続雇用された者は87.1%だったとのこと。ただ、国税庁が発表する「民間給与実態統計調査」(令和4年分)によると、55~59歳の平均給与は546万円なのに対し、60~64歳の給与は441万円とおよそ100万円減っています。そのうち、正社員が多い男性は55~59歳の平均給与は702万円なのに対し、60~64歳の給与は569万円。いずれにしても、60歳以降の給料は大幅に減ることを覚悟しておきましょう。
しかし再雇用期間が60歳から65歳までの間は、雇用保険から高年齢雇用継続給付金が受給できる場合もあります。お給料が減っても、その一部は給付金でカバーしてくれるということですね。安心して再雇用で働ける制度です。受給できるかどうか、いくらもらえそうなのかを確認しておきましょう。
シニア起業も増えている?年金以外の収入源と得る方法
リタイア後に「起業」をする人も増えてきました。内閣府が発表した「令和3年版高齢社会白書」によると、起業して5年未満の人の中で65歳以上の割合は、2007年は8.4%でしたが、2017年には11.6%に上昇しています。自治体などでシニア起業向けの支援策も出てきており、シニア起業の数はさらに増えそうな風潮です。シニア起業で多くみられるのが、現役時代の経験を活かした独立。現役時代の海外赴任経験を基に輸出ビジネスのコンサルティング、社会保険労務士や行政書士の資格を取得し事務所を設立というパターンも。また、ファイナンシャルプランナーの資格を取得し終活ビジネスをシニア向けに始める例もみられます。
また、趣味の延長線上で起業する例もみられます。登山が趣味だった人が登山ガイドツアーを企画したり、そば打ちを極めてそば屋を始めたりする例も。趣味を第2の人生の柱としています。
いずれも、見込める収入は開業規模や事業範囲によるので大きな差があります。士業での開業で月収100万円近くの人もいれば、趣味の延長線上での起業で月収数万円程度という例も。無理なく、自分のぺースで働くことができるのが起業の良いところです。
仕事をしている60歳以上の人で、一番多かったのがパート・アルバイト
定年後の仕事として、一番簡単にできるのが「パート・アルバイト」ではないでしょうか。実際に、内閣府の「令和5年版高齢社会白書」では、収入のある仕事をしている人のうち、パートやアルバイトの非正規従業員の比率をみてみると、男性の場合、55~59歳で11.0%だったのが、60~64歳で45.3%、65~69歳で67.3%。また、女性の場合も、55~59歳で58.9%、60~64歳で74.4%、65~69歳で84.3%と、男女ともに60歳の定年後はパートやアルバイトなどが多くなっています。パートやアルバイトは、得たい収入や体調にあわせて、仕事が選べますし、住まいの近隣で仕事がみつけやすいですね。
必要とされる資格やスキルが高くなく、気軽に始められる仕事も多くあります。すぐに働きたい時に、仕事が始められます。収入は仕事の内容と勤務時間に応じて変わっていきます。少なくとも、最低賃金は得られます。最低賃金は、地域によって異なりますが、時給900円から1100円程度は保証されるでしょう。あとは、どれだけの時間働くかで収入が決まります。
自分の時間とスキルをお金に換える方法
起業とまでいかなくても「自分の時間を売る」、自分のスキルなどを収入にする仕組みが増えてきました。例えば、オンラインで自分の経験を売るサービス。自分自身のスキルを1時間いくら、1件いくらといった形で提供するといったものです。これらのサイトに登録しておけば、自分の時間とスキルをお金に換えることができます。自分自身の経験やスキルを若い人に伝授するといった思いで始めている人が多いです。
気になる収入は、1時間1000円や1件数万円など、提供するサービスによってさまざまですが、工夫次第では、定期的に収入を得ることができます。起業ほど深く考えることなく、開業資金なども必要としません。
このように、定年後も、年金以外でもいくつかの収入を得ることが可能になっています。「令和5年版高齢社会白書」では、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいかの問いに対して、一番多い回答が「働けるうちはいつまでも」で36.7%、次に「70歳くらいまで」が23.4%という結果に。多くの人が、定年を超えても働きたいようです。
●参考資料 内閣府「令和5年版高齢社会白書」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/index.html
また、「働いていると体によい」「老化を防げる」「経験を活かせる」といった考えもあります。収入のために、老後の生活安定のためにはもちろんですが、体のため、社会への貢献のためと考えて働き続けるのもよいのではないでしょうか?
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