税金/住民税

住民税非課税世帯の判断にかかわる? 住んでいる場所「級地区分」に注意

住んでいる都道府県や市区町村によって、住民税の金額には差がないといわれています。しかし、生活様式や物価差による生活水準に差があるのであれば、住民税の非課税を判断する基準に差があってもいいのではないか、という規定があります。それを「級地制度」といいます。級地制度が住民税課税に与える影響について解説します。

田中 卓也

執筆者:田中 卓也

税金ガイド

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住んでいる場所によって、住民税の金額に差はないが「非課税」世帯になるかどうかには影響する?

住民税はサラリーマン、パートなどの給与所得者であれば源泉徴収票をもとに、確定申告対象者であれば、税務署に提出された確定申告の内容をもとに住民税が算定されます。住民税の所得控除のほうが所得税の所得控除より金額が低いというルールも同じで、住んでいる都道府県や区市町村によって、住民税の金額に差がないということになっています。
 
住民税の所得控除と所得税の所得控除の比較 (出典:練馬区ホームページより)

住民税の所得控除と所得税の所得控除の比較 (出典:練馬区ホームページより)

しかし、住んでいる場所によっては、生活様式や物価差があることがありますので、これを「級地区分」と呼び、住民税の非課税世帯にあたるかどうかの規定に影響が生じる場合があります。住民税を計算する際に、どのような影響があるのかについて解説したいと思います。
 

級地制度、級地区分ってなに?

級地区分とは、生活保護法を根拠に、地域における生活様式や物価差による生活水準の差がみられる実態があるのであれば、最低生活保障の観点から生活保護基準に地域差を設けたほうが妥当なのではないか、という観点から設定された制度です。

1級地、2級地、3級地など住んでいる場所によって、級地区分が定められ、それをもとに生活保護基準に地域差を設けているという現状があります。

厚生労働省のホームページによると1級地-1、1級地-2、2級地-1、2級地-2というようにさらに細かく級地区分がなされている資料が公表されており、住んでいる地域の級地区分を確認することができます。
 
税務という観点からみると級地制度は特に「住民税の非課税規定」と密接に影響している制度といえます。
 

住民税の非課税規定の内容とは

そこでまずは住民税の内容をみていきます。ひとことで住民税といってもいろいろな種類があるのですが、給与所得者や確定申告対象者に該当する場合に課される住民税は所得割と均等割です。
 
東京都のホームページによるとこの所得割・均等割とも非課税となる方は以下の3条件となります。
  • 生活保護法による生活扶助を受けている方
  • 障害者・未成年者・寡婦又はひとり親で、前年中の合計所得金額が135万円以下
  • 前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方
合計所得金額が135万円以下というのは、例えばパートですと、年収204万4000円未満の方となりますし、前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方というのは、独身の一人暮らしである場合には合計所得金額45万円以下、年収にすると100万円以下、ということになります(計算式……年収100万円-給与所得控除の最低額は55万円=所得金額は45万円)。
令和2年分以降の給与所得金額算定の速算表 最低額は55万円以下 (出典:国税庁資料より)

令和2年分以降の給与所得金額算定の速算表 最低額は55万円以下 (出典:国税庁資料より)

 

級地区分は住民税の非課税規定に結びつく

級地区分・級地制度は、住民税非課税規定の「前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方」の「区市町村」、という部分に影響してきます。

先ほど独身の一人暮らしである(同一生計の配偶者及び扶養親族がいない)場合として例示した「合計所得金額45万円以下」という規定は、級地区分が変わったり、家族がいて扶養親族の人数が変わった場合、下記のような計算式に置き換えて計算することができます。

1級地の場合
扶養家族なし:45万円
扶養家族あり:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円

2級地の場合
扶養家族なし:41万5000万円
扶養家族あり:31万5000円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+28万9000円

3級地の場合
扶養家族なし:38万円
扶養家族あり:28万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+26万8000円

 
なお、この基準は地域によってはこの通りでない場合もあるので、必ず住んでいる区市町村に確認してみてください。東京都のホームページの記載でも「前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方」となっているのでお住まいの地域の条例で確認することをおすすめします。
 

年金受給者が非課税になる基準とは

質問を受けることがあるので、年金受給者で所得割・均等割とも非課税となる方の基準についても解説してみます。
  • 東京23区に住んでいる
  • 65歳以上
  • 収入は公的年金のみ
  • 配偶者とは離別
というケースで、所得割・均等割とも非課税となる方の基準の算定方法をみていきましょう。
受給が公的年金等の場合には差し引く必要経費は公的年金等控除額となる (出典:国税庁資料より)

受給が公的年金等の場合には差し引く必要経費は公的年金等控除額となる (出典:国税庁資料より)

東京23区に住んでいるので、級地区分は1級地、収入は公的年金のみですので、公的年金等控除額の最低額110万円が適用されたあとの金額が45万円以下なら所得割・均等割とも非課税となるということになります。
  • 公的年金等の年間受給額155万円-公的年金等控除額の最低額110万円=45万円
と算定され、上記の給与所得では年収100万円までが住民税の所得割・均等割とも非課税となる基準だったのに対し、公的年金等の場合には公的年金等の年間受給額が155万円までであれば住民税の所得割・均等割とも非課税となる基準に置き換わるのです。
 
給与所得控除額や公的年金等控除額は所得税法で定められていますので差はありませんが、住民税の所得割・均等割とも非課税となる場合で、「前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方」に該当する場合はお住まいの地域によって異なる場合があります。
 
ご自身のお住まいの級地区分と住民税の非課税限度額の計算方法を一度調べてみてはいかがでしょうか。
 
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