「ヤセるセックスvs太るセックス」こんな見出しの記事が今月号(9月号)のSAY(青春出版社)に載っていました。ダイエットとセックスに関する話は女性誌を中心に時々お目にかかるテーマなので、いつかClose Up!に書かねば…と私自身も思っていたんですが、さすがにセックスの話になると人間の根源的な問題で奥が深いので、一度に全部を書くことができません。
そこで今回は、始めてこの話題に触れるということで、少し歴史をさかのぼって(と言っても10年ぐらいですが…)日本のダイエット界に最初にセックスの話を持ちこんだ本の紹介をしたいと思います。往年のダイエッターなら一度は聞いたことがある(かもしれない…)その本の名前は「淋しい女は太る」。著者は上智大学教授の霜山徳爾先生と臨床心理士の植松晴彦先生、出版社はマガジンハウスです。1988年に出版されたこの本は、基本的には過食や拒食などの摂食障害に視点をおいて書かれた本ですが、専門用語をほとんど使わない読みやすい文章で、しかも当時は素人にはほとんど知られていなかった「セックス」と「食事」の関係について分かりやすく解説したので、たちまちベストセラーになった本です。その後an・anなどの女性誌が「セックスでやせよう!」を合言葉に次々と特集を組んだので「セックスでダイエット」がちょっとしたブームになりました。
「淋しい女は太る…」タイトルも斬新だったその本は、まず「性行為」と「食べること」が驚くほど似ていて、深層心理的にはほとんど同じことを指摘しました。例えば、人間にとって性行為も食事も根源的な快楽であり、共に直接的に体と心が満たされ癒される行為であること。「同じ釜の飯を食う」などという言葉があるように、一緒に行った者と共同意識を持つことができること。「性行為」も「食事」も共に自分の中に何かを直接とり込む行為であること、などです。
さらに、食事とセックスについて考えるとき、セックスとは、いわゆる性行為のことのみを指すのではなく、性器の結合を伴わない気持ちの良い人間関係、すなわち幼年時代の親子関係や兄弟との関係、親しい友人との関係なども含む広い意味のことであるとも指摘しました。
最終的には、そのような自分以外の人間と心地よい関係を築けない「淋しい女は」良く似た行為である食べることに走ってしまい「太る」という指摘になりますが、当然これは男女間の性器の結合を伴うセックスをしないと太るといった指摘ではないことに注意が必要です。
ただし、この本では、幼児期の親子関係などもう過ぎ去ってしまったことが原因で「淋しい女」になってしまった女性がどうしたら「淋しくない女」になれるのか?ということについての具体的な解決策には触れませんでした。だから、その後多くの女性誌が「セックスでやせよう!」を合言葉にいろいろな具体策を提案し「セックスでダイエット」がブームになったというわけです。
ちなみに冒頭のSAY(9月号)の内容について少し触れるならば、私的にはアドバイザーが精神科医からポルノ女優にまで多岐に渡り過ぎていて、これでは結局何が言いたいのか分からない???と言うのが率直な感想です…。
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※ダイエットは個人の体質、また、誤った方法による実践に起因して体調不良を引き起こす場合があります。実践の際には、必ず自身の体質及び健康状態を十分に考慮したうえで、正しい方法でおこなってください。また、全ての方への有効性を保証するものではありません。