お金の悩みを解決!マネープランクリニック/60代以上の人のお金の悩み

60歳ジムを経営、貯金7000万円。赤字が年間200万円、それでもあと5年は続けたい(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、ジムを経営する60歳の男性。年間の赤字額が200万円と経営が大きく落ち込む中、所有する不動産についても思案中。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 老後資金が準備できるかが判断の目安

まずは、ご本人の「あと5年は続ける」という希望に沿って、実際にそうした場合の試算をしてみます。
 
収支は不明点もいくつかありますが、明確なことはジムの経営赤字が年間200万円ということ。また、いただいた家計データの収支が月29万5000円の赤字ですから、これが年間で354万円。これが、ジムの赤字と無関係とすれば、これらを合算しなくてはなりません。
 
もうひとつ、実母の老人ホームの費用が年間560万円かかるとのこと。このうち、Nさんはどの程度負担されているのか。お母さんの公的年金が年間200万円とのことですから、それを全額ホームの費用に回せば、残り360万円はNさんが負担しているとも考えられます。もしそうであれば、全体の赤字額は総額で年間914万円となります。
 
今後、ジムの赤字額、家計収支、そして老人ホーム費用の負担分が変わらないとすれば、5年間で4570万円。これを全額、貯蓄から取り崩すなら、手持ちの金融資産は2430万円に減っています。
 
また、今後クルマの買い替えが少なくとも1回、多ければ3回あるかもしれません。予算として400万円程度と考え、先に1回分を差し引いておくと、手持ち資金は2000万円ほど。
 
残ったこの貯蓄で老後生活を送ることができれば、とりあえず今後5年は赤字が続いてもジム経営を続けることができる、ということになります。
 

アドバイス2 所有する不動産は「売却」を優先させる

老後資金が足りるかどうかは、老後の生活費に対して公的年金の受給額の不足分を、カバーできるかということで、ある程度判断できます。希望される生活費は月33万円。対して公的年金は手取りで11万5000円ほどでしょうか。であれば、不足分は月21万5000円となります。
 
ここで問題となるのが、家賃収入です。現在の家賃収入が月25万円ですから、これが継続されるなら、計算上、貯蓄にまったく手をつけることなく老後を過ごせます。ただし、Nさんも悩まれているように、現在の家賃収入はそう長くは維持できないと考えるべき。

そこでここでは、5年後、Nさん65歳のときにマンションとアパート、ともに売却するとします。現在の想定される売却額が計5800万円とのことですが、5年後はもう少し低い額になると思われます。売却時に税金、手数料も発生しますので、手元には4000万円程度の売却益が残るとします。
 
手持ち資金2000万円に不動産の売却益4000万円を加算して6000万円。これに対して、老後生活の赤字額が月21万5000円ですから、これだけでざっと23年、Nさん88歳までは老後資金がもつことになります。ただし、車の買い替え費用を1回分しか計上していないため、買い替え回数が増えれば資金寿命は短くなります。
 
また、ここで考えておくべき点がいくつかあります。
まず、奥様の公的年金の受け取りは、Nさんの5年遅れ。奥様がそれまで(60歳から5年間)、パートなどで年金程度の収入を得ればいいですが、無収入であれば、その分(300万円ほど)、老後資金を減額しないといけません。また、生活費以外に予備費(医療費、介護費、自宅のリフォーム)として確保しておく必要もあります。そう考えると、資金がもつ年齢は3年程度前倒し、85歳程度と考えていいでしょう。
 
さらに、先の試算は年齢から判断して、5年後以降の実母のホーム費用を加算していません。もしも、6年後、7年後も同額が発生するなら、その分、さらに老後資金は目減りすることになります。もちろん、ジムが早い段階で黒字になる可能性もありますし、加入されている保険の詳細は不明ですが、個人年金保険や終身保険があれば、老後資金は増えることになります。その意味で、まだ不確定要素は多いですが、ともあれ、現状のプランであれば、老後資金は不足するリスクがあるということは、認識しておく必要があります。
 

アドバイス3 現在の、そして将来の家計支出を抑えることが有効

ではどう対策すべきでしょうか。
 
まず、Nさんの強みはまとまった金融資産と不動産を所有していること。そして、借り入れがないということ。その利点を活かすことができれば、ゆとりある老後は十分可能です。
 
ポイントは家計です。今後のジムの収支や老人ホームにかかる費用は読めませんが、家計であれば自分たちの意思で管理、コントロールができます。家計支出を減らすことで、老後資金の目減りはより抑えられます。そして、それによって、今後のマネープランに余裕が生まれます。

具体的には、希望する老後の生活費33万円を、そこから5万円下げれば、老後資金はさらに7年もつことになります。33万円の内訳はわかりませんが、減らす工夫は必要だと考えます。
 
現在の家計についても食費15万円、家族の小遣い10万円は減らす余地はあるはすです。車両費5万円も同様。保険料10万円の内訳は不明ですが、個人年金保険があればそれは継続するとしても、これだけ資産があれば死亡保障、医療保障を確保する必要性はさほど感じません。掛け捨ては解約、それ以外は払済保険にしてしまう方が賢明です。

結果、毎月の支出が5万円下がれば、5年間で300万円。これも、老後資金を増やすことにつながります。
 
また、不動産については、もっとも避けるべきは、長く保有したため、手放したいのになかなか売却できず、維持コストが負担になってしまうこと。また、家賃収入を維持するために、内外装や設備等に新たに資金を掛けることも、それだけの効果が得られるかは不透明です。5年を待たずとも、高く売却できるのであれば、その時点で売却する方がいいのではないでしょうか。
 
もうひとつ、先の試算は5年間でジム経営が改善されず、その後にジムを閉じることを想定しています。もちろん、黒字になったことで、さらに続けることもあるでしょうし、別の働き方が見つかるかもしれません。ともあれ、現在の、そして今後の家計支出も見直すことが、将来のリスクを軽減する有効な方法であることは確かです。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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