インフレ対策としてのiDeCo、私にメリットはありますか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、派遣社員として働く50歳の独身女性。脚が悪いこともあり、長く働くことが難しく、60歳でフルリタイアを希望しているとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

 
60歳で完全リタイヤはできますか?

60歳で完全リタイヤはできますか?



■相談者
フリージアさん(仮名)
女性/派遣社員/50歳
関東/持ち家・一戸建て
 
■家族構成
一人暮らし
 
■相談内容
現在、派遣で事務をしています。独身なので、老後が不安です。持ち家は、築40年なので、リフォーム代が今後かかる予定です。インフレが不安なので、iDeCoを考えてますが、手取りが少ない今、税制上のメリットもなさそうで迷ってます。今くらいの収入で60歳位まで働き、その後は貯蓄を切り崩して生活可能でしょうか? 脚が悪いので、できれば60歳以降は働きたくないと思ってます。65歳以降の推定年金額は、月に9万円位です。生活費は基本的に今と変わらないと思います。
 
■家計収支データ
相談者「フリージア」さんの家計収支データ

相談者「フリージア」さんの家計収支データ




■家計収支データ補足
(1)その他の支出について
・車検 15万円 (2年毎)
・車の保険 5万円 (1年毎、車両保険含む)
・固定資産税 2万8000円 (1年毎)
※年15万3000円は、貯蓄から捻出。
 
(2)加入保険について
・本人/医療保険(終身保障終身払い、入院5000円、がん一時金100万円)=毎月の保険料4957円
・本人/がん保険(終身保障終身払い、入院5000円、がん一時金50万円)=毎月の保険料4216円
 
(3)住宅について
10年後に外壁塗装で100万~150万円を予定。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 60歳の時点で手持ち資金は5000万円超
アドバイス2 リタイアの時期は必要なら前倒しを
アドバイス3 運用するなら資産の最大2割まで
 

アドバイス1 60歳の時点で手持ち資金は5000万円超

家計はまったく問題ありません。すばらしいと思います。
最初に応募いただいたときは、失業保険を受給されていて、その額が14万9000円。その後、再就職されたわけですが、給与額(手取額)はそれを2万円近く下回った。それでも赤字を出さないで、収入の範囲内で生活されている。持ち家があるのが強みですが、それを踏まえても、なかなかこうはいきません。家計管理のお手本です。
 
さて、不安に感じられている老後について、考えてみましょう。
働くのは60歳まで。その後はフルリタイアをすると仮定します。それまでの10年間、毎月の生活費以外のコストとしてクルマの維持費があります。それが年間15万3000円とのことですから、10年で153万円。また予定している大きな支出として住宅の外壁塗装。この費用を150万円ほどとして、クルマのコストと合わせて計300万円。

ただし、住宅は築40年とのこと。現状が不明ですが、水回りのリフォームや屋根の修復などを行う可能性は当然あります。また、クルマも買い替えの必要性が出てくるでしょう。その分として、コストを300万円追加しても、60歳の時点でまだ5300万円が手元に残ります。
 

アドバイス2 リタイアの時期は必要なら前倒しを

公的年金を受け取る65歳までの5年間は無収入となります。この間の生活費を貯蓄からまかなうわけですが、現状と同じ生活費であれば年間で約180万円。したがって65歳の時点で残る貯蓄は4400万円。

65歳以降は年金支給額が9万円とのこと。税金と社会保険料で手取り8万円として、毎月の不足額は5万円。年間で60万円となります。25年間で1500万円ですから、90歳の時点でまだ手持資金は3400万円となります。100歳でも2800万円 。これに、クルマの維持費(65歳から10年乗るとする。買い替えは1回)や医療費、介護費用を加算しても、一般的な金額であれば手持資金の半分も減らないでしょう。
 
結果、60歳でリタイアされても資金的には問題ないと考えられます。試算上もそうですが、フリージアさんの家計への対応力を考えてもそれは言えることです。
 
また、相談文によれば、脚の具合がよくないとのこと。詳しい状況はわかりませんが、勤務が辛いようであれば、退職を57、58歳に前倒しされてもいいのでは。無理をして、定年後の生活に大きく支障が出てしまっては、精神的に不安な老後となってしまいます。豊かな老後とは、資金ももちろん不可欠な要素ですが、元気に日々を暮らすことが大事。2、3年程度ならリタイアを早めても、資金的には問題ありませんので、健康面も含めてリタイア時期を決めてください。
 

アドバイス3 運用するなら資産の最大2割まで

インフレ対策として、資金的余裕があれば投資は基本的にはした方がいいと思います。メリットがあるかどうか迷っている「確定拠出年金」は、勤務先に同制度(企業型)がないのであれば、利用できるのは個人型=iDeCoとなります。

そのメリットのひとつである税額控除ですが、フリージアさんの年収(額面)は190万円前後でしょうか。だとすれば、減税(所得税とその翌年度の住民税)となる額は、毎月の掛金を月2万3000円(勤務先に企業年金制度のない会社員の上限)として、年間4万円くらい。一方、iDeCoの口座管理等にかかるコストは金融機関によって異なりますが、平均すれば年間4000~5000円(投資信託の保有にかかる信託報酬は除く)。
 
この比較で、税制上のメリットが大きいか小さいかはフリージアさんの判断にお任せしますが、同時に利息や運用益にかかる税金20.315%が非課税となるというメリットもiDeCoにはあります。運用益が出なければそのメリットもなくなりますが、運用をするという前提なら、利用する価値はあると思います。
 
また、「つみたてNISA」にも運用益等が非課税となるメリットがあります。また、iDeCoは原則、資金の引き出しは60歳以降であるのに対して、つみたてNISAはいつでも売却(年間の利用額の上限は40万円)が可能。実際の運用は、金融機関が指定する投資信託の中から商品を選択するという点で、iDeCoと近い(ただし、iDeCoには元本保証の定期預金型もある)と言えます。
ともあれ、運用は最大で金融資産の2割まで。60歳以降はその割合は徐々に減らしていく(利益確定していく)というスタンスがいいでしょう。
 
最後に保険について。医療保険とがん保険に加入されていますが、ともに不要だと思います。保険料は月に計9000円。終身払いですから、例えば50歳から開始したとして70歳まで支払えば216万円、90歳なら432万円。それ以上医療費がかかれば元が取れるわけですが、高額療養費制度も利用できることを考えれば、難しいところ。十分貯蓄がありますので、かかる医療費はそこから捻出し、浮いた保険料は貯蓄に回す方が合理的でしょう。何も保障がないと不安というのであれば、どちらか1本に絞ることをおススメします。
 

相談者「フリージア」さんから寄せられた感想

とても参考になりました! ずっと独身かもしれないという不安があり、給料の半分以上は貯蓄に回してました。テレビで、老後破産がよく取り上げられていて不安になってました。このままいけば、前倒しでリタイア可能ということで、本当にホッとしました。投資も勉強を兼ねて、つみたてNISAを始めたいと思います。また、がん保険だけ残して、保険も解約しようと思います。今回相談して本当によかったです。ありがとうございました。
 
 
 教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武


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