確定申告/青色申告の基本とやり方

フリーランスは白色申告と青色申告、どっちを選べばいいの?

開業時「白色申告」のほうがいいのか「青色申告」のほうがいいのかは必ず通る選択肢といっていいでしょう。両者のメリットとデメリットはオフトレードの関係にあるのですが、その判断基準について解説してみました。詳細はコチラで。

田中 卓也

執筆者:田中 卓也

税金ガイド

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フリーランスとして独立しようとしている人は白色と青色、どっちがいい?

個人事業主、あるいはフリーランスとして独立した場合に「白色申告」のほうがいいのか「青色申告」のほうがいいのかは必ず通る選択肢といっていいでしょう。また、なかには「白色申告?青色申告?なにそれ?」っていうそもそもの方もいるかもしれません。

そこでここでは、白色申告と青色申告、どっちを選べばいいの?という視点でみると、個人事業主、あるいはフリーランスとして独立しようとしている人を前提としてみた場合、そのメリットとデメリットを対比させるかたちでみていきたいと考えます。
 

なにもしなければ白色申告

個人事業主、あるいはフリーランスとして独立した場合、ガイド記事 夢の独立、フリーランスが開業時に提出すべき届出書類は?で書いたとおり、個人事業の開業届出書 を提出することになります。そしてこのあと、所得税の青色申告承認申請書を提出しなければ自動的に白色申告となります。つまり、青色申告を選択したければ所得税の青色申告承認申請書を提出する必要があり、それをしなければ、つまり、ただ、開業したという状況なら自動的に白色申告になってしまいます。

したがって、逆からみれば、特に新規開業の場合には、確定申告を提出する際になって「白色申告で提出しようか?それとも、青色申告で提出しようか?」という選択肢は存在しません。
 

白色申告のメリット・デメリット

白色申告で確定申告する場合、確定申告書を作成する前に収支内訳書を作成しなくてはなりません。
 
収支内訳書(一般用)記載例 (出典:国税庁資料より)

収支内訳書(一般用)記載例 (出典:国税庁資料より)


収支内訳書とは「収支」という言葉からわかるとおり、売上がいくらあった、あるいは必要経費がいくらかかった、という事実だけを記載すればよく、「10万円の売上があり、預金が10万円増えた」とか「コンビニで携帯電話代8千円を振り込んできたので、現金が8千円減少した」という入金や支払いの状況まで把握する必要はありません。

上記の例でいえば、収支内訳書の作成に必要なデータは、「売上が10万円あった」あるいは「通信費が8千円かかった」ということだけで、現金や預金の増加や減少まではもとめられていないのです。したがって、後ほど説明する青色申告で確定申告する場合より、事務作業が簡便であることがメリットです。

一方、デメリットは青色申告では認められている税法上の特典が白色申告にはありません。
その主立った特典を列挙すると
  • 青色申告特別控除の活用
  • 青色事業専従者給与の活用(事業専従者控除は白色でも活用できます)
  • 少額減価償却資産の特例の活用
  • 純損失の繰越や繰戻
といったところです。

したがって、白色申告で確定申告を行うということは事務作業が簡便であるかわりに、青色申告では認められている税法上の特典が受けられないことにあります。
 

青色申告のメリット・デメリット

青色申告で確定申告する場合のメリット・デメリットは、白色申告で確定申告する場合のメリット・デメリットとオフトレードの関係にあるといっていいでしょう。青色申告で確定申告する場合、確定申告書を作成する前に青色決算書を作成しなくてはなりません。
青色決算報告書(一般用)記載例 (出典:国税庁資料より)

青色決算報告書(一般用)記載例 (出典:国税庁資料より)


青色決算書を作成する際には、売上がいくらあった、あるいは必要経費がいくらかかった、という事実だけではダメで、「10万円の売上があり、預金が10万円増えた」とか「コンビニで携帯電話代8千円を振り込んできたので、現金が8千円減少した」という入金や支払いの状況まで把握する必要があります。

つまり、「売上が10万円あった」あるいは「通信費が8千円かかった」という損益の情報だけでなく、現金や預金の増加や減少といった財政状態に関する情報をもとめられているのです。ただし、このように書くと簿記会計の知識がないとできないのか?と考える人がいるかもしれませんが、そのようなことはありません。

個人事業用の通帳を一冊作成し(屋号等が入っていてもOK)そのなかですべて売上や経費の管理を一元化し、その通帳を会計ソフトを活用し、とりまとめれば、きちんとした帳簿として活用できます。打合せにかかる費用や文房具の購入といったものについてはPayPayやLINE Payといった電子決算サービスと個人事業用の通帳をヒモづけることにより、あるいはクレジットカードを活用することにより、その個人事業用の通帳が立派な原紙資料となるでしょう。
 
このようにすることにより、下記に代表される税法上の特典が活用できます。
ザックリと内容とともに紹介すると以下のとおりです。
  • 青色申告特別控除・・・規模や要件によって65万円、55万円、10万円所得の額を小さくすることができます
  • 青色事業専従者給与・・・同一生計の配偶者や親族に給与を支払うことにより所得を分散できます
  • 少額減価償却資産の特例の活用・・・取得価額が30万円未満である減価償却資産について一時の費用とすることができます
  • 純損失の繰越や繰戻・・・所得が赤字の状態を繰越すのが純損失の繰越、前年黒字で本年赤字だった場合、前年納めて税金を戻してもらうのが純損失の繰戻です
青色事業専従者給与を活用するには別途届出が必要だったり、純損失の繰越や繰戻を活用する場合にも繰越せる年数や繰戻せる年限があったりしますが、そもそもこちらはすべて「青色申告で確定申告を行っていること」が大前提です。
 
したがって、青色申告で確定申告を行うということは損益のほかに財政状態を把握することが必要となるかわりに、白色申告では受けることができない税法上の特典が受けられることがメリットです。
 

白色申告と青色申告、どっちを選ぶのかの判断基準は

  白色申告と青色申告、どっちを選ぶのかの判断基準はこのメリット・デメリットと無関係ではありません。つまり、「簡便さが一番」だとすれば、白色申告のほうが楽チンということになるでしょうし、「やっぱりある程度、節税手法があったほうが」というのであれば、青色申告が選択肢にあがるでしょう。

実際、所得が多い個人事業主やフリーランスの方は総じて青色申告で確定申告している傾向があるのに対し、所得が少ない個人事業主やフリーランスの方は総じて白色申告で確定申告している傾向があるという民間会社のデータもあります。
 
なお、白色申告であっても、帳簿の保存は厳格化されています。おおまかなルールは下記のとおりです。

■7年間の保管が要請されているもの
・・・収入金額や必要経費を記載した帳簿

■5年間の保管が要請されているもの
・・・決算に関して作成した棚卸表その他の書類
   業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類
   業務に関して作成した上記以外の帳簿

「白色のほうが楽チン」という優位性は徐々に減少傾向にあるようです。

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