突然、妻がキレた……その真実とは

妻がキレた

夫婦は互いに相手を「こんな人物」と決めつけているところがあるのかもしれない。長いこと一緒にいるのだから、誰よりもわかっていると思い込んでいるのだろう。だがある日、配偶者が突然、ブチ切れたら……。

 

いつも笑顔の妻が

「うちの妻は本当によくできた人なんです、と僕はずっと誰にでも言ってきました。事実、僕自身もそう思っていた」

ユタカさん(45歳)は、しみじみとそう言った。同い年の彼女と友人の飲み会で知り合い、1年つきあって結婚してから16年、ケンカひとつしたことがなかったのだという。1年前までは。

「長男が14歳、長女が10歳。妻はずっとパートで働きながら家庭を切り盛りしてくれていた。僕も家事や育児は時間の許す限りやってきたつもりですが、営業職ということもあってとにかく仕事が忙しい。接待も仕事のうちなんです、本当に」

妻の負担が大きいのはわかっていた。だからいつも「ありがとう」という言葉は欠かさなかったし、週末、妻が出かけたいというときはいつでも快く送り出した。

「妻はいつも笑顔でした。僕が遅いときはもちろん先に寝ててと言っていましたが、それでも物音で起こしてしまうことがある。ごめん、というと『お疲れさま。お茶漬けでも食べる?』と支度してくれたりして。どんなに大変でも、彼女はイライラすることがなかった。だから人間として上等なんだなあとずっと思っていたんです」

ところが半年前、妻が突然、キレたという。ことの発端は、反抗期の長男のひと言だった。

「まあ、よくある話で、息子が母親に向かって『くそばばあ』と言ったわけですよ。そうしたら息子をかわいがって育ててきた妻が、非常に傷ついて……。僕も息子を散歩に連れ出して、『母親をうるさいと思うのはよくわかる。だけど言っていいことと悪いことがある。口から出た言葉はもう戻せないんだぞ』とか、『いらついたらオレに言え』とか、まあ、息子をなだめたわけですよ」

ユタカさんは、妻に対しても、男の子にはよくあることだから気にしないようにと言った。励ましたつもりだったのだ。食卓でも率先して場を和ませようと努力した。

ところがある日、夕食を終えた息子は黙って立ち上がって自室に戻ろうとする。それを妻がとがめた。

「何か言うことないの、ごちそうさまは?と妻が言ったんです。それを無視した息子に妻がいきなり皿を投げつけて……。息子の額から流血したのを見て僕もびっくり。娘は泣き出すし。すると妻が『どいつもこいつも、いいかげんにしろ』と叫んで家を飛び出してしまった」

ユタカさんはあわてて息子の額に絆創膏を貼りつけ、娘に心配するなと声をかけて外に出た。妻を探さなければと思ったのだ。携帯すら持って行かなかったので心配だった。

結局、妻は1時間足らずで家に戻ってきたと息子から連絡があった。息子は母に謝ったものの、彼女は仏頂面のままだった。

 

妻の真意がわからないまま

ユタカさんはその晩、妻とゆっくり話そうとしたが、妻は「話したくない」と言うばかり。

「今まで妻があんなに怒ったのを見たことがなかったし、息子も驚いただろうけど僕もショックでした。彼女には彼女の言い分があるはずだと聞こうとしたんですが、まったくそれについては話そうとしてくれない」

その後、世の中はコロナ禍となった。ユタカさんの勤務形態は変わらなかったが、妻はパートの時間が減り、家で子どもたちといる時間が長くなった。彼は息子と緊密に連絡をとっていたという。

「下の子に苛立ちをぶつけたりしたら怖いなと思って。妻に子どもたちを人質にとられたような気持ちでした」

幸い、妻はあのときのようにブチ切れることはなかったが、子どもたちと以前のように笑顔で語らうことも激減した。何か言いたいことや要望があるのなら言ってほしいと彼は妻に頼み込んだが、妻は「何もかもイヤになった」と言うばかり。具合が悪いなら医者に行こうと勧めても妻は首を横に振る。

「誰だって何もかもイヤになる時期はありますから、そういうときは何もせずに寝てしまえばいいんだよと言いました。子どもたちだって食べることくらい自分たちでなんとかできるし、僕が早く帰ってきてもいいのだし。それでも妻は力なく頷くだけ。何か他に悩みごとがあるのか、何か傷つけるようなことを言ったか、しょっちゅう尋ねていました」

 

ある日ふと感じた、妻がキレた原因

何もわからないまま時間だけがたっていった。そしてつい最近、彼はふと、妻が浮気をしていたのではないかと思った。妻があのときキレたのは、不本意な別れ方をしたからではないか……。

「とにかく真実を知りたかった。悪いと思ったけど寝静まったあと、妻の指で携帯のロックをはずしました。何を見ても妻を問いただすつもりはなかった。そして妻と男とのLINEのやりとりを見つけたんです。別れたなら削除していると思ったんですが、とってあった」

それを見て妻の不倫相手が今年の初めに海外へ赴任したことを知った。ふたりの間で別れの言葉は交わされていなかったが、会えなくなったのは事実。妻がキレたのは、彼が行ってから約1ヶ月後のことだった。

「会いたいのに会えない、先方は家族で行っているようなのでそれに対する嫉妬やイライラが募っていったんじゃないでしょうか。それがわかったとき、僕はなんだか妻がかわいそうになってしまって……。浮気されていたのは事実なんだけど、好きな人と突然別れざるを得なくなったのは、つらかっただろうな、と」

なぜか妻に共感してしまったユタカさんは、その後もごく普通に妻と接している。携帯を見たことは妻に言うつもりもなく、妻を責めるつもりもない。長い結婚生活の間には、お互いにそういうこともあるだろうと考えている。

「あのときどうしたのとか、最近、調子はどうなのとか、聞くのはやめました。代わりに妻とごく普通の会話を増やすようにしています。妻もようやく自然な笑顔が戻りつつある。もともと“いい子”だったんだと思います、彼女は。ずっといい子をやってきて、いい妻だしいい母だった。恋愛相手がいなくなって、そのいい子を保てなくなったんでしょう、あのとき。何かのタイミングで、いつもいい子でいなくていいよと伝えたいとは思っています」

ケガの功名と言うべきか、息子の反抗期はあっさりと終わった。それどころか息子は母親を気遣い、ユタカさんとも男同士の会話ができるようになっている。

「僕にとって、家庭は妻のおかげでずっと居心地のいい場所だった。今度は妻にとってそうであるよう僕ががんばる番かなと思っています。他者から見ていい家庭である必要はない。僕らひとりひとりが落ち着ける場所であればいい。そんなふうに思います」

妻への怒りはないと話すユタカさんの表情は穏やかだ。夫婦のありかたはさまざま。ユタカさんはこれからも妻と一緒に歩んでいきたいと淡々と語った。


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