亀山早苗の恋愛コラム

夫の他界、子どもの不登校、高校退学を乗り越えて。60歳で“半同棲”を選んだ女性の「新たな生き方」

30代半ばで夫と死別した61歳女性。必死で働き、紆余曲折を経て子どもたちを社会に送り出した。その後、56歳のときに知り合った年下の男性と“半同棲”生活を始めることに。女性が望んだのは、「ふわりと軽やかに生きる」ことだった。※画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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60歳で「半同棲」を選んだ理由とは(画像:PIXTA)
60歳で「半同棲」を選んだ理由とは(画像:PIXTA)

物価高騰に政情不安、人の気持ちも沈みがちだ。誰もが余裕なく生きている。些細なことで怒りが爆発するような場面もよく話題になっている。だが、こんなときだからこそ、「もうちょっとふわっと軽く生きたくて」という人たちがいる。

50代半ばで新たなチャレンジ

20代後半で結婚、二人の子をもうけたが30代半ばで夫と死別したキヨコさん(61歳)。その後は必死で働き、紆余曲折を経たが、子どもたちをなんとか社会に送り出した。

「息子は小学校で不登校になるし、娘は高校退学するし。一時はどうなるかと思いましたが、その後、息子はフリースクールなどを経て自力で大学を26歳で卒業しました。娘も高卒認定を受けてから専門学校入学、卒業してなぜか大学に入り直すという遠回りでしたが、結局、二人とも自分の道を見つけたようです」

今は北海道、九州、東京と3人ばらばらの場所にいるが、「昔より仲のいい家族になれた」とキヨコさんは笑う。

ようやく子育てから解放された50代半ばになって、キヨコさんはそれまで勤めていた会社を辞めた。アットホームな会社だったからずいぶん助けてもらったし、定年を過ぎてもずっといてほしいとも言ってくれた。だが、むしろ自分が辞めた方がいいと彼女は判断したのだという。

「いい会社だからこそ、私より若手を大事にしてくださいという思いがありました。私自身も何か新しいことにチャレンジしたかったし、会社とは辞めても縁がきれない、社長や社員の皆さんとはずっと付き合えると思っていました」

社長の紹介もあって、今までの仕事の延長線上にありながらも新しい仕事にチャレンジしたのは56歳のときだった。新しい環境は新しい刺激をもたらした。子どもへの手間が減ったぶん、彼女は必死で勉強したという。

「頭が固くなってるから大変だったけど、知らないことを知るのは楽しいですよね。新しい仕事に慣れてからは、その会社の有志でやっている俳句の会とか、地域の英会話サークルとかいろいろなところに顔を出すようにしました。老後のことを考えると、友達を作りたかったし。大人になってから友達なんて作る暇もありませんでしたから」

60歳で“半同棲”

そんな中で、近くに住む、離婚経験のある3歳年下の男性と知り合った。茶飲み友達として付き合っていたのだが、いつの間にか心理的な距離が近くなっていた。味覚も、小説や映画の趣味も似ていた。何でも話せた。

「彼は結婚を望んでいたようですが、私は日常生活を一緒にしたくはなかった。作りたくないときは夕飯を作らない生活がしたかったんです。彼にそう言って“半同棲”生活をすることにしました。互いに時間と心の余裕があるとき一緒に過ごす。この年になったら、もうそれでいいと思って」

なにより自由を求めた結果だが、子どもたちは「半同棲なんて若い子みたいじゃない」と笑っていたという。

「今後、どちらかが病気になったりしたときどうするのかが、一番の問題かもしれませんね。正直言って、結婚してしまうと互いに逃れられないでしょう。それが嫌だったんです」

とはいえ、病気にならないよう、二人とも心は軽やかに、体には細心の注意を払って暮らすようになっているという。

家を処分し、過去とおさらば

仕事をしながら10年近く、母親の介護を続けてきたサキさん(57歳)は、3年前、母を見送った。

「さみしかったけど、これでようやく自分の人生を歩めるとも思いました。私はきょうだいもいないので、ずっと母一人子一人だった。やっと重荷を下ろせたような気がしました」

そもそも親戚も少なく、その少ない親戚とも疎遠になっていたので、一人きりで葬式を済ませた。

「数日で職場に戻って、さてこれからどうしようと考えました。信頼できる同僚にも相談しましたね。自宅は一軒家だけど、私一人なら小さな部屋があればいい。場所が悪いし古い家だから高額では売れないだろうけど、処分したかった。そうですね、断捨離というよりは、なにもかも“処分”しちゃいたかったんです」

過去にはきれいさっぱりおさらばして、「せっかくの還暦間近でもあるから、第二の人生を一人でスタートしたかった」のだという。

「過去を嫌悪しているわけではないけど、思い出なんて心の中にあるものだから、形や場所にこだわる必要はないと思っていました」

身軽に生きたい

決めたら即行動。彼女は職場の上司に紹介してもらった不動産屋へ行き、自宅の売却を相談した。半年ほどで自宅が売れるめどがたち、1LDKの中古マンションに賃貸で入居した。

「そこもその上司の知り合いが関わっているマンションだから貸してもらえたんです。年をとると貸してもらえなくなりますから、買った方がいいのかなとも思ったけど、子どももいないのに所有する意味がない。今後のことを考えると身軽でいたかった」

とにかく身軽でいたいとサキさんは言う。もしかしたら高齢者用のシェアハウスみたいなところに入るかもしれないし、あるいはどこかに移住する気になるかもしれない。先が分からないから、「所有」せずに身軽でいたいのだという。

「身軽でいた方が選択肢が広がるような気がするんです。高齢になったって、自分の人生は自分で決めたい。ここでしか生きられないと選択肢が狭まることは避けたいんです」

自由でいたい、身軽でいたい。そんなふうに軽やかに考えられれば、還暦後の人生も明るく過ごせるのではないだろうか。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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