コロナ騒動や外出自粛も無関係? 正常性バイアスが原因かも
緊急事態でも深刻に考えずに大丈夫だと判断しまうのは、正常性バイアスのせいかもしれません
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言中、多くの人が外出自粛の呼びかけに協力していましたが、一定数の人は、不要不急の外出を続けてしまっていたようです。
「家にいてもすることがない」「自分は若いから大丈夫」「自粛ストレスの方が健康に悪い気がする」など、それぞれの考えや事情があるのかもしれませんが、こんなときに思い出したいのが「正常性バイアス」と呼ばれる心理的要素の影響です。
新型コロナに限らず、非常事態はいつ起こるか分かりません。万一のときに行動を誤らないためにも、知っておきたい心理について解説します。
正常性バイアスとは何か……根拠なく大丈夫と思ってしまう心理
「正常性バイアス(日常性バイアス)」とは、心理学用語の一つです。深刻な事態でもそれを異常事態と受け止めず、正常範囲のことのように軽く捉える心理を指します。なぜこういった心理傾向があるかというと、普通に日常生活を送る中でも、予期できない出来事はたくさん起こるからです。初めて起こることや予想外のことにいちいち緊張したり過剰に反応したりを続けていては精神的に疲弊してしまうため、ある程度は動じないことも大切なのでしょう。
しかし、たとえば夜中に火災報知機が鳴ったとして、「煙が出ている様子もないし、何かの間違いだろう」と考えて、そのまま布団をかぶって寝てしまう……という行動を取るのは危険です。火災の発生を早めに知らせて、安全に避難させるために火災報知器が鳴っているのに、心理的に大丈夫だろうというバイアスがかかると、本当の火災で逃げ遅れて命を落としてしまうかもしれません。
火災報知器の例は、多くの方が危険だと判断すると思いますが、緊急地震速報のアラートが鳴っても、すぐに避難態勢を取れる方はどれくらいいるでしょうか? 「(この前のでも大した揺れではなかったから、今回も)大した揺れではないだろう」と考えて、すぐに身を守る行動を取っていないのだとしたら、それも正常性バイアスのはたらきです。新型コロナウイルスで外出自粛を呼びかけられても、「(周りにかかった人がいないから)大丈夫だろう」「(これまで外出していたけどかかっていないから)自分はかからない気がする」を根拠なく安全と判断してしまうのも、この正常性バイアスがあるからです。
正常性バイアスのせいで、最悪の事態になってしまうケースがあることも、しっかりと知っておく必要があります。
正常性バイアスに陥らないための対処法
正常性バイアスは人間がもともと持っている心理なのでなくすことはできませんが、最悪の事態を招かないために、頭で考えて行動することが大切です。命に関わるような事態で判断を誤らないためには、とにかくこれまでの前例や経験にとらわれすぎず、その時に見たこと・聞いたことから、冷静な頭で合理的な対処法を考えること。「周りと同じにしていれば大丈夫」と思考停止しないことも大切です。誰もが経験がないような非常時には、集団で間違った行動を取ってしまう可能性もあります。過去の大きな災害や事故でも、お互いに周りに同調して、集団で逃げ遅れてしまった悲劇はいくつかあります。
感覚的に大丈夫だと思い込まずに、頭で判断して行動につなげましょう。
正常性バイアスが強すぎる? 深刻なら適切な治療を
正常性バイアスは、一言でいうと間違った思い込みです。普通の心理なので、この心理傾向が多少強くても、精神科での治療が必要な問題ではありません。ただ、あまりに常識から逸れた言動が多い場合や、軽い思い込みでは済まないほど非合理的な思考や妄想が見られる場合は、注意が必要です。周囲に荒唐無稽な、深刻な妄想は、脳内の機能異常が原因で起こることがあるからです。その場合は、周りの人の説得などではなく、抗精神病薬による適切な治療が必要です。また、本人はその妄想観念のためにとてもつらい心理状況になっていることが多いため、理詰めで考えを否定するのは逆効果。まずは本人のつらい気持ちを汲んで、共感を伝えるようなアプローチが望ましいです。
非常事態で起こりやすい人間の心理を正しく理解しておくことで、以後、適切な判断に役立ててください。