ストレス

ストレスが原因で風邪に似た症状も…自律神経の整え方

【公認心理師が解説】原因不明の発熱や頭痛などの不調があると、「新型コロナにかかったのかも」と不安でたまらなくなる方がいるようです。感染対策は大切ですが、実は風邪などの感染症に似た症状は、ストレスによる自律神経の乱れによっても起こることがあります。心因性発熱やその他の不調について、自律神経の整え方もあわせて解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「微熱がある」「何となくずっと不調」……もしかして「コロナ」!?

心因性発熱とは

微熱があり、何となく体調も悪い……ストレスによる自律神経の乱れは大丈夫ですか?

新型コロナウイルス感染症予防に、細心の注意を払わなければならない時期。少し体調を崩しただけで「もしかしたらコロナ!?」と、不安に駆られる方も少なくないかもしれません。
 
コロナや風邪を含む感染症と、一過性の体調不良を見分けるのは難しいものですが、あらゆる不調を感染症と結びつけて心配しすぎるのも早計です。たしかに、ストレスが続くと自律神経のバランスが乱れて体の免疫機能にも影響し、風邪などの感染症にかかりやすくなります。しかし、実際の感染症ではなくても、風邪症状に似た体調不良が自律神経の乱れによって生じることがあるのです。
 
たとえば、次のような症状はどれも風邪症状に似ていますが、いずれも自律神経の乱れによって生じることがあります。
 
  • 熱がある
  • 体の冷えを感じる
  • のどや口の中の違和感
  • 鼻づまり
  • 頭痛
以下で詳しく解説します。
 

自律神経の乱れによる風邪に似た症状とは?

風邪は、かぜ症候群を引き起こすウイルス等の病原体が体内に侵入することによって起こります。鼻やのどなどの炎症や、病原体を攻撃するために体が発する熱などの症状が特徴です。くしゃみや鼻水、せき、発熱などの風邪の症状は、体の免疫機能によって病原体を排除するために生じます。
 
一方、自律神経の乱れによる風邪に似た症状は、過剰なストレスなどの影響で自律神経のバランスが乱されることで生じます。
 
たとえば、プレッシャーにさらされたり、悩み事を考え続けたりしていると、緊張状態から交感神経が働き過ぎて、平熱よりも熱が上がってしまうことがあります。これを「心因性発熱」と呼びます。交感神経の働き過ぎで血行が悪くなると、体の冷えを感じやすくなりますし、唾液の分泌が少なくなり、口の中の渇きを感じやすくなります。のどの筋肉も緊張して硬くなり、のどに違和感を感じやすくなります。
 
一方、ごろごろと寝てばかりで緊張感なく過ごしているときには、副交感神経が働き過ぎることによって、風邪のような症状を感じることがあります。副交感神経が過剰に働くと鼻の粘膜が膨張するため、鼻づまりを感じやすくなりますし、頭の血管が拡張するため、頭痛を感じやすくなります。

このように、風邪によく似た症状は自律神経の乱れによっても生じることがあるのです。
 
最近は、新型コロナウイルスへの感染の恐怖から、多くの方がストレスを感じながら日々を送っていると思います。体調がすぐれないときは、感染したかもしれないという不安から、さらにストレスが募ってしまうものです。ですが、その過剰なストレスが自律神経のバランスを乱し、風邪のような症状を引き起こしている可能性もあるのです。
 
もちろん、病気かどうかは、医師による適切な診断が必要です。しかし不要不急の外出を避け、うがい、手洗い等の衛生管理をしっかり行い、健康的な生活習慣を守っているのに、風邪のような自覚症状に悩まされている場合、心の健康まで損なわないよう、ストレスによって自律神経が乱れて風邪に似た症状が出る可能性もあることを、知識として覚えておくとよいと思います。
 

カウンセラーが薦める自律神経のバランスの整え方 

それでは、自律神経のバランスはどのように整えればよいのでしょうか? 自律神経のバランスを整えるためには、緊張時に働く交感神経、リラックス時に働く副交感神経のどちらかが過剰に働き過ぎたりしないように、バランスを整えていくことが大切です。具体的には、次のことを心がけていきましょう。
 
■1日の基本的な生活リズムを守る
人間の体は、日光を浴びると交感神経が刺激され、暗くなると副交感神経が優位になるようにできています。つまり、日の出に導かれて起床し、日中はアクティブに活動し、日没と共にリラックスして体を休める、といった生活リズムを続けていくと、自律神経のバランスが整いやすくなります。昼夜逆転や日によって就寝と起床の時間にばらつきがあるような生活を続けていると、自律神経のバランスは乱れやすくなってしまいます。日の出と日没の時間を目安にして、1日の大まかな生活スケジュールを組み立てていきましょう。
 
■活動と休養、緩急のメリハリをつける
活動しているときにはその活動に集中し、休養するときにはしっかり休む。このように、活動と休養の緩急のメリハリをしっかりつけるようにしましょう。少し仕事を始めたらすぐにゴロッと横になり、だらだらと仕事を続ける。入浴後に再びパソコンに集中し、夜中になっても頭の緊張状態が抜けない。こういったメリハリのない状態にならないことが大切です。
 
■2つの神経の働きをしっかり生活に活かす
交感神経をプレッシャーや心配ごとばかりで働かせ、副交感神経をだらだら過ごすばかりで働かせていても、ストレスは解消されません。日中は、ほどよい緊張感をもって仕事や運動などに取り組むようにしましょう。そうして、日中に適度に交感神経を働かせた後、夕方からはできるだけ緊張をほぐします。和やかに夕食を楽しみ、入浴で全身の疲れをほぐす、気持ちよい寝具に包まれて眠りにつくとよいでしょう。すると、夕方から副交感神経が高まり、1日の疲労が回復されやすくなります。
 

自律神経のセルフケアは基本! 改善しない場合は医療機関受診の検討を

心配事の多い毎日ではありますが、上のように自律神経のバランスを整える生活を続けていると、心身の状態も良くなっていきます。すると、風邪に似た不調も軽快していくかもしれません。
 
こうしたことを試す気持ちにもなれないほど体が辛い場合には、内科などの医療機関を適切に受診しましょう。内科などでも異常が見つからず、これらを試みても気持ちがリフレッシュできずに、つらい状態がひどくなっていると感じる場合は、心のケアが必要になるかもしれません。その場合はメンタルクリニックなどに相談し、心の専門医と一緒に対策を考えていくとよいでしょう。
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