ストレス

何をしてもどこか満たされない…アラフォーのモヤモヤ解消法

【公認心理師が解説】20代、30代を謳歌し、楽しい毎日を過ごしてきた人でも、どこか満たされない思いを抱えがちなのがアラフォー(40歳前後)にあたる年齢です。その背景には、40代の今だからこそ向き合うべき人生の課題があるかもしれません。アラフォーと呼ばれる40代前半に感じやすい心のモヤモヤを解消し、40代の人生課題に向き合うために必要なことについて解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

どこか満たされないのはなぜ? アラフォーが抱えがちな悩みと課題

40代・アラフォーのメンタル課題とは

アラフォーが直面するメンタル課題とは

30代まではパートナー探しやキャリア形成など、自分の人生を充実させるために頑張ってきたけれど、同じことに取り組んでもなぜか満たされない……。旅行を楽しんだり、ほしいものを手に入れたりと、自分の心を満たすこともたくさんしてきたはずなのに、なにか別の大切なものがあるのではないかと思ってしまう……。アラフォー(40歳前後)の年齢になると、そんな思いを感じる人が増えてくるようです。
   

40代のモヤモヤの原因は? 「世代性の課題」とは何か

心理学では、人は40代ごろから人生に対する意識が変化すると考えられています。理由として、以下の2つが挙げられます。

1. 「世代性の課題」への挑戦……次世代への継承に興味が湧く
アラフォーを含めた40代ごろの年代は、発達心理学的には「世代性(生殖性)」の人生課題に挑戦するとされています。世代性とは「次世代を育て、継承すること」です。

30代ごろまでの多くの人は「自己形成(自分づくり)」に夢中です。勉強や仕事を通じて新たなことに挑戦して生活を充実させ、自己を成長させることに関心が向きます。しかし、そうしたことを一通り経験すると「自分だけのために何かをする」ことに対して、心のどこかで満たされないものを感じてしまいます。

自分だけが楽しむより、これまで得てきた経験や知識を活かして、なにかの形で次世代に還元していきたい。40代はこのような「世代性」に関心が向き始める年齢なのです。
 
2. 外的な私と内的な私……心の全体性を実現したくなる
20代から30代ごろまでは、「社会」の中でどのように生きていくのかという課題に関心が向く年齢です。そのため、職業人としての役割、家庭人としての役割を通じて「社会で生きる自己形成(自分づくり)」という「外的な私」を実現していくことにエネルギーを注ぎます。

「外的な私」の実現に20年近くも取り組んでくると、「本当の自分は何を求めているのだろう?」とふと思うようになってきます。そのため40代になると、自己の内面に深く焦点を当て、「ありのままの自分」という「内的な私」を見つめるようになるのです。

そして、20代からの人生で経験してきた「職業人、家庭人としての自分」(外的な私)と、40代を前後して改めて見出した「ありのままの自分」(内的な私)とを統合して「心の全体性」を実現し、自分らしい人生を送りたいと思うようになります。
 

40代のモヤモヤの解決法・人生課題をクリアするために大切なこと

アラフォーから始まるモヤモヤした気持ちを解消し、心から充実した40代を生きるためには、先述した2つのテーマに取り組んでいくことが大切です。下記に各テーマの取り組み方について解説します。

1. 「世代性の課題」を実現するために……「次世代に還元できること」を探す
これまで身につけてきた経験や知識を生かし、次世代に還元できるものについて考えてみましょう。たとえば、経験の少ない若い人に対して、自分の経験から役立ちそうなことをさりげなく伝えてみてはどうでしょう。経験に基づいたちょっとした情報が、次世代にとっては「目からうろこ」であることも多いものです。

ちなみに私は現在、カウンセラーの仕事のかたわら、メンタルヘルスの研修講師として働いていますが、自分の経験を次世代に伝えて教えること、つまり「世代性」の仕事に強く惹かれるようになったのは、アラフォーに入ってからでした。子育てや部下の育成に力を注ぐ人が増えるのも、ちょうどアラフォーの年代です。身近な人を助け、人の役に立つことに取り組んでいくなかで、「世代性の課題」と向き合うこともできます。
 
2. 「心の全体性」を実現するために、内面を掘り下げる作業を始める
「職業人や家庭人としての役割」という外的な私と「ありのままの自分」という内的な私、その両方を統合して「心の全体性」を実現するには、自分の内面を掘り下げる作業を気長に行っていくことが必要です。

心理学の本を読んだり、哲学の勉強会に参加してみてもいいでしょう。人間の心理が投影された絵画や映画、小説、詩などに触れてみるのもいいと思います。思いがけなく入った美術展や映画館でとても惹かれる作品に出合い、自分の内面が求めているものに気づくこともあります。

「とても素敵だ!」「なぜだかとても心が動かされる」と訳もなく感じるものに、「ありのまま自分」(内的な私)が投影されているかもしれません。そういったものに出合えたら、じっくりとその対象と向き合う時間を作ってみましょう。答えはすぐには出ないと思います。ですが、時間をかけて自分の内面と対話するなかで、あるときふと、重要な気づきにめぐりあえるかもしれません。
 

何となく冴えない毎日……出口を見失っているアラフォーへのアドバイス

頭だけでモヤモヤと考え続けるより、直感で「ちょっとやってみたい気がする」「なぜか惹かれる」と思ったことをやってみることをお勧めします。興味のあることを体験してみて初めて、自分が求め、必要としていることに気づくことができるのだと思います。

合わなかったらやめて、他のことをやってみればいいのです。一つに絞らず、複数のことを同時進行でやってみてもいいでしょう。実際に体験しながら、心がぐっと揺り動かされたなら、ぜひ腰を据えて取り組んでみましょう。そこには、アラフォーからの自分が探し求める「ありのままの自分」を知るヒントが隠れているのかもしれません。

ただし、いきなり生活の基盤をガラリと変えるような冒険は、けっして侵さないようにしましょう。若い頃のように「勢いで進めばなんとなかなる」という訳にはいきません。健康、仕事、生活、人間関係のなどの基盤は、失ってからその価値に気づくものです。自分が築いてきた基盤を大切にしながら、可能な範囲で新しいことに挑戦をしてみるといいでしょう。
 
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