そもそも住民税とは、市区町村に納める税金。所得税は国に納める税金
道府県民税と市町村民税を総称して住民税と呼んでいます。道府県民税の課税は、市区町村が市町村民税と併せて行うしくみとなっています。なお、所得税は国に納める税金です。この2つの税金の違いについて解説します。★所得税と住民税の違いを、音声と動画で税金ガイド・坂口猛さんが解説します★
主な違い1:申告納税方式と賦課課税方式
所得税は、自ら税務署へ所得等の申告を行うことにより税額が確定し、この確定した税額を自ら納付する制度を申告納税方式といいます。一方、住民税は、賦課課税方式という制度が採用されています。これは、市町村等から税額等が通知され、期限までに納税するという制度です。
会社員で、確定申告の必要がなく、年末調整だけで納税が完結するような場合には、給与の支払元(会社等)から、市町村等に毎年1月に提出される給与支払報告書に基づいて住民税額等が計算されるしくみとなっているため、原則として住民税の申告を自ら行う必要はありません。
また、所得税の確定申告を行った場合でも、その情報が市町村等にも通知されるしくみとなっていますので、一般的には、別途市町村等に申告書を提出する必要はありません(提出する場合もあります)。
主な違い2:いつの所得の税金なのかが違う。住民税は前年所得課税
会社員などの給与所得者の場合、毎月の給与等から控除されるのは、その年の所得税となっています。これを現年所得課税といいます。一方、毎月の給与等から控除されている住民税は、その前年の所得に対する住民税となっています。これを前年所得課税といいます。
つまり、今年の収入にかかる住民税は、来年6月~再来年5月に納めることになります。このしくみが、新入社員等が1年目に住民税が控除されず、2年目以降に控除されるため、2年目以降の手取り金額が減ってしまう要因の一つとなっています。
主な違い3:所得控除額の違い
所得税と住民税の額は人によって異なりますが、所得税にせよ、住民税にせよ、「納税者それぞれが稼いだお給料(所得)」から、その人それぞれの事情に合わせた額を差し引いて(差し引くことを所得控除といい、所得控除の金額を所得控除額といいます)、差し引いた後の金額(課税所得といいます)に税率をかけて計算されています。所得控除額は、所得税にかかるものと住民税にかかるものによって違いがあります。図は所得控除の種類によって所得税、住民税でそれぞれいくらの控除がなされるのか、その差はいくらなのかを示したものです。 つまり、仮に配偶者控除と扶養控除(一般)、扶養控除(特定)、基礎控除の適用を受けている人の場合、所得税と住民税で33万円の差があることになります。
住民税の所得控除額とは?所得税と違う項目と金額は
主な違い4:税率の違い
上述で、所得税と住民税の算出の仕方を説明しましたが、所得税と住民税では「税率」も違ってきます。税率の違いは、図の通りです。仮に、給与年収600万円(社会保険料15%と仮定)の人の場合、所得税の課税所得金額は、298万円(給与所得436万円-社会保険料控除90万円-基礎控除48万円)で、所得税額は20万500円となり、実質的な年収に対する負担率は約3.34%(20万500円/600万円)です(復興特別所得税を除く)。
一方、住民税に関しては、課税所得金額(課税標準額)は303万円(給与所得436万円-社会保険料控除90万円-基礎控除43万円)で、住民税額は30万3000円(5.05%)です。
給与年収が600万円の人でも、所得税(3.34%)よりも住民税(5.05%)の方が負担が大きいことになります。
主な違い5:住民税には、均等割がある
住民税には、一定額を負担する均等割というものがあります。所得税においては均等割はありません。所得税と住民税の違いについての重要なポイントは!
さいごに、所得税と住民税の違いの中でも2つの重要なポイントを紹介します。(1)会社員などの給与所得者で、給与所得以外の所得が20万円以下であるため確定申告をしないことを選択した場合や、少額配当であるとして申告しなかった場合などであっても、住民税に関しては申告しなければならないということです。忘れていると、あとから確認の連絡があるかもしれません。
(2)所得税において住宅借入金等特別控除の適用があるため、所得税額が0円となっている場合であっても、上述のように、所得控除の違いなどがあります。所得税の確定申告では、所得控除と税額控除は最大限活用すべきです。
会社員の場合、住民税は、毎月の給与等から差し引かれているため納税の意識が低い人も多いですが、実は所得税よりも影響が大きい場合もあるので、少し意識してみてはいかがでしょうか。
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