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*11月の注目!ミュージカル
『ピアフ』←観劇レポートUP!
『よろこびのうた』←作曲・岸田敏志さんインタビューUP!(3頁)
*特別レポート
『ザ・シークレット・シルク』←スティーヴン・シュワルツ、ジョン・タータグリアインタビュー&観劇レポートをUP!(2頁)
*別途特集(予定)のミュージカル
『ノートルダムの鐘』名古屋公演観劇レポート&佐久間仁さん・清水大星さん・光田健一さんインタビューをUP!
『スリル・ミー』成河さんインタビューをUP!
『レ・ミゼラブル』佐藤隆紀さんインタビューを近日掲載
『ラブ・ネバー・ダイ』石丸幹二さんほかインタビュー特集を近日掲載
歌姫の壮絶な半生を描く『ピアフ』
11月4日~12月1日=シアタークリエ、その後、広島・香川・大阪で上演『ピアフ』の見どころ 「愛の讃歌」などで知られる不世出の歌手、エディット・ピアフの半生を描き、78年に初演されたパム・ジェムスの音楽劇『ピアフ』。日本を代表する女優で音楽活動にも積極的な大竹しのぶさんは2011年、栗山民也さん演出のもと本作に初挑戦。圧倒的な支持を得て再演を重ねてきた舞台が今秋、再び開幕します。
ピアフを主人公とする映画・演劇はいくつかありますが、その中でパム・ジェムス版は、奔放な男性遍歴を重ね、後年はモルヒネ中毒で体調を崩したピアフの壮絶な半生を、彼女のレパートリーを織り交ぜながら赤裸々に描いているのが特色。きれいごとではない生身のピアフに挑む大竹さんの、渾身の演技が第一の見どころです。
ピアフの友人役で初演から続投の梅沢昌代さん、彩輝なおさんほか、恋人役で宮原浩暢さん、駿河太郎さん、上遠野太洸さんらが出演。4演目にして“決定版”の『ピアフ』を見せてくれることでしょう。
観劇レポート:裸の魂で愛し、生き抜く。圧倒的な大竹ピアフ、再び。 スタンドマイクを持った司会者(上原理生さん)がステージに現れ、もったいぶった口調でピアフを紹介する。“メダム・ゼ・ムシュー、皆さまお待ちかねのピアフ、エディット・ピアフ……”。「水に流して」のイントロが響き渡り、場内は期待感に包まれるが、ボーカル部分に差し掛かってもその人の姿は無い。司会者が再登場し、今一度口上を述べるが……。 不穏なオープニングから一転、舞台はピアフの若かりし頃へと遡る。パリの路上で歌っていた彼女はクラブのオーナー(辻萬長さん)に見出され、たちまち人気を集めるが、相棒の娼婦トワーヌ(梅沢昌代さん)とは距離を置くよう命じられ、急激な環境の変化に戸惑う。
次々と恋人を変え、寂しさを紛らわせていたピアフはようやく孤独を分かち合える恋人、マルセル(駿河太郎さん)と出会うものの、間もなく彼を飛行機事故で失い、自身も自動車事故に遭遇。心身に傷を負った彼女は、モルヒネ中毒の深みにはまり……。 汚い言葉で人を罵り、悲しい出来事があれば寝転がって泣き叫ぶ。栗山民也さんが緩急自在に演出する劇世界の中で、大竹しのぶさん演じるピアフ=エディット・ガシオンは終生自分を取り繕わず、裸の魂を晒し続けます。
その演技は時に演技を超越するほどの生々しさを見せ、例えば回を重ねるごとに中毒症状の悪化が見て取れるモルヒネ注射のくだりなど、あまりの迫真性に背筋が凍るほど。
いっぽうシャルル・アズナブール(宮原浩暢さん)との別れのシーンでは、愛情を押し殺して頑として彼を突き放し、彼が去ると一転、虚無感に包まれる様が痛ましく、それだけに後に青年テオと出会い、安らぎを得る姿には心からほっとさせられます。
物語の折々で歌う「愛の讃歌」「ミロール」「私の回転木馬」といったシャンソンも、それぞれ身を削らんばかりに、魂をこめて歌唱。 周囲を固めるキャストも充実の演技を見せますが、特に大竹さんとともに初演から続投の梅沢昌代さん演じるあけすけでバイタリティ溢れるトワーヌ(終盤の、ピアフの顔色をうかがいながらの物語りは哀しくもコミカルな名場面)、やはり続投の彩輝なおさん演じる風格と妖艶さ漂うマレーネ・ディートリッヒが魅力的。
恋人役の男性陣ではシャルル役の宮原浩暢さんに誠実さと華、マルセル役の駿河太郎さんに野性的な新風、テオ役の上遠野太洸さんに純朴な輝きがあり、上原理生さんは冒頭の癖のある司会者ほかいくつもの役を生き生きと演じ分けています。 奔放であり、およそ上品さとは縁のない人物の半生記でありながら、その力いっぱいの生きざまが観る者の心を鼓舞する本作。最後にピアフが歌うナンバーの最後の一言、最後のしぐさに至るまで、彼女は客席に訴えかけているようにも見えます。“どんなにつらくとも、最後の瞬間まで自分の人生を生き抜く”ということの価値を。
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