毎年、様々な議論を呼ぶ全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)。2年連続で政令指定都市で最下位だった大阪市では、市長の発言が賛否両論を呼びます。

【目次】
  1. 学力テストの結果を教員のボーナスに反映?
  2. 学力テストのトップ3の順位は変わらず、大阪市は連続最下位
  3. 学力テスト最下位大阪市になく、上位の新潟市・仙台市にあるもの
  4. 家庭学習のための「自学ノート」でも学力上位の県は全然違う
  5. 学力が向上する勉強は「やり方」が重要
  6. 全国学力テストからわかる、学校、家庭、地域の役割
 

学力テストの結果を教員のボーナスに反映?

毎年、夏頃に結果が公表される全国学力テスト。2017年からは、政令指定都市の正答率も公表されるようになりました。
 
今回、政令指定都市で全国学力テストの順位が2年連続最下位だった大阪市は、市長が「結果に対して責任を負う制度への転換が必要だ」と発言したことで話題となりました。
 

学テ成績結果で教員の人事評価 手当増減を検討(毎日新聞2018年8月2日より)
 
大阪市の吉村洋文市長は2日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の成績が政令市で最下位だった結果を受け、市として学テの数値目標を設定し、達成状況に応じて教員の手当を増減させる人事評価の導入を検討すると発表した。

 
大阪市の例も踏まえて、全国学力テストランキングからわかる、学力向上にとって大切なことは何なのか検証してみました。
 

学力テストのトップ3の順位は変わらず、大阪市は連続最下位

全国学力テスト、小学校の都道府県ランキングは、国語、算数、理科のどの教科でも秋田、石川、福井の3県が強いことが分かります(国語と算数・数学についてはA問題のみ掲載)。
 
一方、政令指定都市では、上位はあまり固定されておらず、京都市や新潟市が3教科でベスト3入りしています(表1)。
平成30年(2018年)度、全国学力テストの上位3県・市(小学校版)

平成30年(2018年)度 全国学力テスト順位 上位3県・市(小学校版)


中学校の都道府県ランキングでも、秋田、石川、福井の3県が強いことが分かります。
 
一方、政令指定都市では、仙台市が3教科のいずれもトップ。他には、さいたま市が3教科でベスト3入りしています(表2)。
 
平成30年(2018年)度、全国学力テストの上位3県・市(中学校版)

平成30年(2018年)度 全国学力テスト順位 上位3県・市(中学校版)


学力テストと言えば、毎回、秋田や福井が上位県として変わり映えがしないことから、下位の自治体がやり玉に挙がることが多いようです。今回は、政令指定都市として2年連続最下位だった大阪市が話題となっています。
 

学力テスト最下位大阪市になく、上位の新潟市・仙台市にあるもの

地域によって事情が異なることから、単純に点数や順位だけを比べることはできません。しかし、10年以上、全国学力テストを分析してきたガイドが独自に調べた結果、学力テスト上位の自治体にはある傾向があることがわかりました。
 
それは、学力テストと並行して行われている学習状況調査の学校質問紙の中の

「調査対象学年の児童に対して,前年度までに,家庭学習の取組として,児童に家庭での学習方法等を具体例を挙げながら教えるようにしましたか(国語/算数・数学共通)」

という項目の回答に大きな違いがあることです。
 
全国学力テストでトップ3を維持している秋田、福井、石川は、この項目に「よく行っている」と答えた割合が突出して高いのです。

都道府県の中学校の国語Aの得点(正答数)と具体例を挙げて家庭学習を指示している割合の分布を表したのが図1です。
全国学力テストで具体例を挙げて家庭学習を指示すると答えた割合と国語の点数の分布図(都道府県)

全国学力テストで具体例を挙げて家庭学習を指示すると答えた割合と国語の点数の分布図(都道府県)


また、政令指定都市についても同じように分布を表したのが図2です。ベスト3に入っている新潟市や仙台市も、やはり高い割合を示しています。
全国学力テストで具体例を挙げて家庭学習を指示すると答えた割合と国語の点数の分布図(政令市)

全国学力テストで具体例を挙げて家庭学習を指示すると答えた割合と国語の点数の分布図(政令市)

一方で、学力テストで不振な沖縄や、今回、話題となった大阪市は、この割合が低い傾向にあります(ただし、さいたま市のようにあてはまらない都市もあり、学力の定着には他にも重要な要因が関係していると考えられます)。
 
特に、中学国語Aで最下位だった堺市はこの割合が9.2%しかありません。家庭学習という根本的なところでつまずいている子が多い自治体ほど、学力テストの結果がふるわないと推測されます。
 
つまり、具体例を挙げて家庭学習を指示している割合が高い自治体ほど、学力テストの結果が良いのです。家庭学習への取り組み方が、学力向上のカギと言えそうです。
 

家庭学習のための「自学ノート」でも学力上位の県は全然違う

毎回のことながら学力テストの結果が出ると、「秋田では家庭の教育力が高いのだから当然の結果」「沖縄や大阪は経済的にもしんどい(苦しい)家庭が多く、経済格差が教育格差になっているのだから仕方がない」といった意見をよく耳にします。果たして、そうでしょうか。
 
秋田では家庭学習ノート(自学ノート)に関する本が出版されるなど、勉強のやり方が注目されています。しかし、これは学校から勉強のやり方について、具体的なアドバイスがあってのこと。それを受けて家庭でも勉強のやり方を工夫するなど、学校と家庭が良好な関係を築けているのがポイントです。
 
一方で、沖縄でも「がんばりノート」と呼ばれる自学ノートがあります。しかし、その評価は決してかんばしくなく、「1日○ページやってくる」という程度のものです。極端な例だと、ページを埋めること自体が目的となってしまい、漢字を一つノートいっぱい書いただけという本末転倒なケースもあるほどです。
 

学力が向上する勉強は「やり方」が重要

全国学力テストの結果からわかることは「勉強のやり方」がわかることが大切ということ。中学生の約7割が勉強の方法がわからないというデータもあるほどなので、まずは、勉強のやり方から学びましょう。

全国学力テストの結果からわかることは「勉強のやり方」がわかることが大切ということ。中学生の約7割が勉強の方法がわからないというデータもあるほどなので、まずは、勉強のやり方から学びましょう。

個々の学習を「学校は家庭に丸投げし、家庭は学校や塾に丸投げしている」とまでは言えないとしても、学力が低迷している地域ほど、学校と家庭の役割分担がうまくいっていないと言えそうです。
 
今回、大阪市がやり玉に挙がりましたが、別に大阪市の先生たちが努力をしていないとは思いません。しかし、調査の結果から、沖縄や大阪市、堺市の学校が、家庭学習のやり方について具体的なやり方まで踏み込んで指導をしているとはとうてい考えられません。

勉強ができない子ほど、勉強のやり方により丁寧な指導が必要なはずです。もし、学校の先生の努力が、単なる根性論や精神論で終わっているとしたら、それでは学力向上という具体的な成果には結びつかなくても不思議ではありません。

むろん、このような状態で、大阪市長の「手当を増減させる人事評価に結びつける」というやり方がうまくいくとも考えられません。
 

全国学力テストからわかる、学校、家庭、地域の役割

ある調査では、勉強の仕方が分からない子は実に7割にものぼります。大切なことは、「勉強のやり方」を学校が具体的に教えること。そして、家庭で子どもがそれを着実に実行できることです。

やり方がわからないのに「ただ勉強しろ」というのでは、あまりにも子どもがかわいそうです。

ここは、先生だからとか親だからという線引きをせず、私たち“大人”が子どもに、勉強のやり方という具体的な道しるべを示してあげることが大切だと考えます。具体的には、勉強法に関する本を一冊買ってみて、わが子の勉強のやり方を考えてみるのがよいでしょう。

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