住民票を引っ越し時に移しておきたい理由とは?

所得税法の中に「納税地」という考え方があります。納税地とは、納税義務者の申告や申請をどこで行うのか、税務署長の更正や決定をどこで受けるのかといった所轄官庁を定める基準となる場所を指します。この納税地の第一優先順位として「国内に住所を有するのであれば、その住所地」という決まりがあり、その情報を端的に表すのが「住民票」といえるでしょう。
住民票を引っ越し時に移しておきたい理由

住民票を引っ越し時に移しておきたい理由

したがって、会社に就職したとき、口座開設するなど本人確認をもとめられたとき、「扶養控除等(異動)申告書」に記載した住所に誤りがないかどうかをチェックするときなどに住民票の提出をもとめられることがあるでしょう(例外的に平成28年1月1日以降居住開始の住宅ローン控除には住民票の提出は必要ではなくなりました)。詳しくは「引っ越しで住所が変わった人はどこに確定申告を提出する?」も参考にしてください。
 

住民票の登録内容、住民税との関係は?

各市区町村毎に居住する住民について、個人を単位として「住所」「氏名」「生年月日」「性別」「世帯主」「世帯主との続柄」「本籍」「筆頭者」「住民となった年月日」「届出日」などを登録している公簿が「住民票」で、それをとりまとめたものが「住民基本台帳」となります。

実際に市区町村に請求する住民票は住民票の原本ということではなく、公簿に登録された写しということになります。したがって「住民票を提出してください」という要請があったときには、正確には「住民票の写し」を提出しているのですが、上記のような仕組みによるものです。

いずれにせよ、住民票は「居住関係を公にしている書類」といえるので、所得税はもちろん、住民税がどこで課税されるのかという観点からも重要な書類といえます。

住民税の納税地は「1月1日現在の住所を有する住所地」とされています。なので、仮に令和元年(2019年)8月にA県B市から、C県D市に引っ越しをしたら
  • 2019年1月1日にはA県B市が住所地なので、A県B市から住民税が課税
  • 2020年1月1日にはC県D市が住所地なので、C県D市から住民税が課税
 されることになります。また住民税は下記のように前年の所得に応じて課税されます。
住民税が翌年課税されるイメージ図 (図表:筆者作成)

住民税が翌年課税されるイメージ図 (図表:筆者作成)
 

引っ越しで住民票を移す手続きはどうする?

したがって、引っ越しをするなど「住所地が変わる」こととなった場合は、住民票を移動させる手続きが必要です。 その方法は一般的には下記の手順となります。

旧住所の役所・役場で「転出届」を提出

旧住所の役所・役場で「転出証明書」の交付を受ける

新住所の役所・役場で交付を受けた「転出証明書」を添付して「転入届」を行う
(ただし、同一市区町村内への引っ越しの場合「転居届」を提出するだけでよい)

となります。 いずれにしても、住民票の異動は義務であり、14日以内に行わないと、5万円以下の過料に課せられるという罰則もあります。したがって、通常、速やかに手続きを行っておいたほうがいいでしょう。
 

住民票の住所と実際の住所が違う場合には

しかし、所得税法の納税地の考え方の中には、例外として「居所地」という基準もあります。居所地とは例えば、住民票は東京にあるが週4日ほど福岡に出張があるので福岡のウィークリーマンションを借りている、というような場合です。

この場合、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」(事業所得者の場合、消費税の納税地も変わるので様式が同じとなっています)という書式を、異動前の納税地を所轄する税務署長に提出することになります。

このケースでは「住所地を所轄する税務署長」、つまり住民票のある住所地を所轄する税務署に「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出する、ということになります(ただし、上の例のような方の場合、東京にある住所地と福岡の居所地から住民税のお尋ねがくることがあります。その場合、実態に即して、個別に対応することとなるでしょう)。
 

住民票とマイナンバーの関係

住民票の写しには、「謄本」というものと「抄本」というものがあります。世帯全員が記載されているもののことを「謄本」といい、世帯員の一部だけが記載されているもののことを「抄本」といいます。

謄本の交付を受けたのに、世帯員一名の記載しかないというのであれば、いわゆる「ひとり暮らし」という情報もそこから読み取れることとなります。したがって、「特に謄本か抄本かの指定がない」場合には、抄本の交付を受けたほうが望ましいこともあると考えます。 またマイナンバー制度の施行にともない、住民票の写しに「マイナンバーを記載してもらえる」こととなりました。
番号確認書類に住民票の写しが指定されています(出典:総務省資料より)

番号確認書類に住民票の写しが指定されています(出典:総務省資料より)

税務署に提出する確定申告書や源泉徴収票や支払調書、市区町村に提出する給与支払報告書にはマイナンバーを記載しなくてはいけないとされているので、確定申告を作成する際、マイナンバーカードや通知カードがどこにあるのいかわからないケースなどでは「マイナンバーの記載のある住民票の交付を受けてきてください」と依頼することもあります。

ただし、一方から見るとマイナンバーの記載された書類がそこかしこにあるということはそれだけ情報漏洩の可能性が高いので、マイナンバーを提示する必要のない事務手続きである場合には、「マイナンバーの記載のない住民票の写しを交付してください」と、窓口等できちんと伝えるたほうがいいのではないでしょうか。
税務的には住民票の写しで得られる情報は「納税地」の確認ということだけなのですが、交付を受ける側は情報の漏えい等にも気を配る必要があるようです。

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