年金/厚生年金の仕組み

夫の社会保険……年金と健康保険の扶養に入れる妻の条件とは?

夫が会社員として働き厚生年金に加入している場合は、妻を社会保険(年金と健康保険)の扶養に入れることができます。その場合、妻は第3号被保険者となり、国民年金保険料の月額1万6520円(令和5年度)を支払っていることと同じになります。また自分で国民健康保険料を払う必要がありません。社会保険の扶養に入れる年収等の条件を確認してみましょう。

拝野 洋子

執筆者:拝野 洋子

ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士 / 年金・社会保障ガイド

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<目次>

夫の社会保険の扶養に入れば、妻は国民年金保険料・国民健康保険料を支払わずにすみます

夫が会社員として働く場合は、厚生年金に加入することになります。夫は厚生年金の被保険者(加入者・第2号被保険者ともいいます)となり、要件を満たすことができれば、夫の社会保険(年金と健康保険)の扶養に妻を入れることができます。

夫の社会保険の扶養に入る妻のことを第3号被保険者といいます。第3号被保険者は、自分で国民年金保険料の月額1万6520円(令和5年度)を払わなくても、支払ったことと同じ扱いとなるので、お得です。また自分で国民健康保険料を払う必要もありません。

※この記事では、便宜上、社会保険の加入者は夫、社会保険の被扶養者は妻、と記載しますが、健康保険の被扶養者・第3号被保険者になれるのは同じ要件を満たせば妻だけでなく、夫も可能です。
 
夫の社会保険の扶養に入れば、妻は国民年金保険料を支払わずにすむ?

夫の社会保険の扶養に入れば、妻は国民年金保険料を支払わずにすむ?

 

社会保険で配偶者を扶養に入れるためには届け出が必要

夫である厚生年金被保険者(第2号被保険者)に扶養されるようになった妻は、健康保険の被扶養者、第3号被保険者になる届け出を夫の勤務先にしなければなりません(平成14年4月より)。扶養に入るための要件は以下のとおりです。

・退職等で妻本人の今後の収入が130万円(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円)未満と見込まれるとき。失業手当をもらっている場合、その他の所得なども入れて年収ベースで130万円未満(60歳以上は180万円未満)に収まる範囲なら、夫の扶養に入れる可能性があります。

扶養された妻が20歳未満のときは、健康保険の扶養だけになり、20歳になったら厚生年金と健康保険、両方の扶養になります。さらに扶養された妻が60歳になったら、厚生年金の扶養からは外れ、健康保険の扶養だけになります。

厚生年金加入中の夫が社会保険の扶養から外れたら、「種別変更」手続きが必要

厚生年金加入中の夫が次に該当したときは、第3号被保険者である妻が自分で国民年金保険料を支払う「第1号被保険者」への種別変更の手続きが必要です。妻が自分で住所地の市区町村役場へ届け出ます。

・厚生年金加入中の夫が退職したり、死亡したりしたとき

・厚生年金加入中の夫が65歳になったとき

 
次の場合は、夫(加入者)の勤務先を通して日本年金機構に届け出をします(平成26年10月より)。

・離婚したとき

・第3号被保険者の収入が年130万円を超えたとき

第3号被保険者から第1号被保険者への届け出がもれていた場合

妻の収入が増えて、第1号被保険者であるはずなのに、第3号被保険者と年金記録に管理されていた期間のことを「第3号被保険者記録の不整合期間」といいます。この不整合期間がある人に対しては、日本年金機構から不整合期間を第1号期間に正しく直した年金記録のお知らせがいっています。

ただし、不整合記録が修正されないままになっていて、かつ老齢基礎年金をもらっている人については、今までもらっていた年金額の10%までを上限に、平成30年4月分以降(6月15日以降支払い)の年金額が減額になっています。

年金を受給している夫の場合、妻の社会保険はどうなる?

一部の公務員を除いて、年金をもらうようになるのは60歳以上が多数です。年金受給者でも60歳から64歳までの厚生年金被保険者なら、60歳未満の配偶者の年収が130万円(障害3級以上は180万円)未満等の要件を満たせば、社会保険の被扶養者にすることができます。

年金受給者である夫が65歳になると厚生年金被保険者でも、妻は第3号被保険者ではなくなります。妻は60歳までの間は第1号被保険者となり、国民年金保険料を自分で支払わなくてはなりません。ちなみに年金版の家族手当、加給年金をもらう条件は、厚生年金被保険者に扶養される第3号被保険者の条件と異なり、妻の収入要件は年収850万円未満です。年収130万円(60歳以上または障害3級以上は180万円)未満ではありません。ずいぶん高い収入基準ですね。

夫の厚生年金期間は20年以上必要で、妻の厚生年金期間は20年未満等、加給年金をもらうための要件は他にもありますので注意してください。

令和2年4月より社会保険の被扶養者の認定基準に「国内居住」が新たに追加された

令和2年4月より社会保険の被扶養者の認定基準に「国内に居住していること」が新たに追加されました。ただし日本国籍を有しておらず「特定活動(医療目的・長期観光)」で滞在する人は被扶養者にはなれません。

例外的に、海外に住所があっても外国に赴任する厚生年金被保険者(第2号被保険者)に同行する配偶者(ビザ、海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書の写し、等の提示が必要)などは所得要件などを満たしていれば、被扶養者になれます。

令和6年10月より、パート・アルバイトの社会保険加入条件がさらに拡大

令和6年10月より、パート・アルバイトの社会保険加入の条件がさらに変更されます。以下のすべて満たすことが社会保険加入の条件です。

【1】週の所定労働時間が20時間以上であること
【2】月額賃金が8万8000円以上であること
【3】学生でないこと(*注)
【4】社会保険の被保険者数が51人以上の事業所に勤務していること(令和4年10月から
令和6年9月までは101人以上)
【5】雇用期間が2カ月を超えると見込まれること

*注……学生でも次の状態の人は、社会保険の対象者となります。卒業見込証明書を有していて卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の人、休学中の人、大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の課程の人等。

パート主婦の中で夫の扶養から外れる人が、さらに多くなるのではないでしょうか。またこれからも、社会保険加入の範囲は拡大していきます。


●参考資料・日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html


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専業主婦とパートがもらえる年金の違いとは?【動画でわかりやすく解説】



 
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