パン/パン屋さん取材レポート(東日本)

ブリコラージュブレッドアンド カンパニー【六本木】

西麻布のレストラン「レフェルヴェソンス」と大阪・北新地の「ル・シュクレクール」と、富ヶ谷のコーヒーショップ「フグレン トウキョウ」のコラボレーションによるベーカリーカフェ、「ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニー」が六本木ヒルズにオープン。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニー(bricolage bread & co.)

ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニーのベーカリー

ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニーのベーカリー

海外から来た友達を連れて、何かおいしいものを食べに出かけるとしたら、和食など、日本ならではの店に案内したいですね。もし、その友達がパンを食べたいと言ったなら、迷わず「ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニー」に行ってみてください。

なぜならそこには、鮨や天ぷらと同じように誇らしく、世界に向けて発信できるレベルの、パン食文化の空間があるから。日本人のあなたなら、どこか懐かしいのに新しい、ベーカリーカフェの誕生を知るでしょう。
ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニー

ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニー

2018年6月11日、六本木ヒルズ・けやき坂に、西麻布のレストラン「レフェルヴェソンス」と大阪・北新地のベーカリー「ル・シュクレクール」、そして富ヶ谷のコーヒーショップ「フグレン トウキョウ」のコラボレーションによる「ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニー」がオープンしました。
厨房から次々にパンが焼き上がる

厨房から次々にパンが焼き上がる

入り口はベーカリーの厨房に直結したショーケースになっていて、その先にはコーヒースタンドがあり、奥にダイニングがあります。パンやコーヒーをテイクアウトするだけでも利用できます。

ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニーはパンを中心として、レフェルヴェソンスのシェフ、生江史伸さんが指揮をとり、パンに合わせた旬の料理や飲みものを、皿やカトラリーを、音響を、内装を、その空間すべてをコーディネートしたお店です。それは単なるコーディネートとは異なる次元かもしれません。生江さんはそれを「ブリコラージュする」と言います。

ダイニングに置いてあったフランスの文化人類学者、クロード・レヴィ=ストロースの『野生の思考』。店名の「ブリコラージュ」はここから来ていることを、教えてもらいました。

「英語にするとDIY、つまりDo It Yourself. もしも欲しい時間や場所があるのなら、目の前にあるもので、自分たちの手で、その世界をつくってしまおう。そんな思いを込めました」と生江さんは言っています。
壊されてしまう古民家のトタンをバリスタカウンターとして再生

壊されてしまう古民家のトタンをバリスタカウンターとして再生


旬のタルティーヌを味わう、心地よいダイニングスペース

レトロな雰囲気の漂うカフェの入り口

レトロな雰囲気の漂うカフェの入り口

ダイニングの営業は9時からで、ラストオーダーの19時半まで、パンに旬の食材を乗せた料理が楽しめます。それは広義には「タルティーヌ」とも「オープンサンド」とも言えますが、一般にイメージされるそれらを軽く超えているようです。今まで食べたことのない一皿に出合えると思います。

11時から、パンに乗せる食材には、肉や魚も加わります。旬の素材を使ったスープとサラダが付くのもうれしいことです。
蒸し暑い時季なら、冷たいジャガイモのスープやトマトのスープ。身体にしみとおるような野菜の滋味、アペタイザーとなるようなスパイス。ただのセットメニューとあなどることなかれ。これらは小さい感動をもたらしてくれました。
冷たいトマトのスープとサラダ

冷たいトマトのスープとサラダ

この、スープをすくうスプーンなどのカトラリーは、三重県松坂市の刃物鍛冶 「かじ安」の赤畠大徳さんが一つ一つ手打ちしたもの。唇にあたるその感触も心地よく、メインディッシュへの期待も高まります。
鍛冶職人によるカトラリー

鍛冶職人によるカトラリー

昨年、トルコの家庭に滞在するという体験をしたル・シュクレクールの岩永歩さんが、その家のお母さんやおばあちゃんに教わった平焼きのパン「エクメック」。その上に、生江さん特製の豆腐サワークリームと料理をのせたものは、一流のシェフたちの味なのに、家庭の温もりも感じられる、まさにここでしか食べられない一皿です。
豆腐サワークリーム+牛肉のラグー、吉田牧場カチョカバロ(1900円)

豆腐サワークリーム+牛肉のラグー、吉田牧場カチョカバロ(1900円)

豆腐サワークリームは、レフェルヴェソンスでパンに添えてサーヴされるのと同じもの。このようにパンに一体化させると、爽やかなのに濃厚なクリームの、またひとつ新しい味覚の世界が開けました。
豆腐サワークリーム+トマト、ビーツundefined(1500円)

豆腐サワークリーム+トマト、ビーツ (1500円)


店のシグニチャーブレッドである「ブリコラージュブレッド」をベースにしたものも、どっしりとしたパンの厚切りでありながら、クラストも優しい食感なのが食べやすく、ランチや早めの夕食に、ほどよいボリューム感です。
豆腐サワークリーム+今帰仁スナックパイン、バジル(1200円)

豆腐サワークリーム+今帰仁スナックパイン、バジル(1200円)

お皿はひとつひとつ異なり、食べ終えたあとのお楽しみとして、上絵付け前の(彩色していない途中の)絵が表れたりなどして、しばし見入ってしまいます。こうしたお皿は江戸後期から大正期につくられ、佐賀や長崎の蔵の中で忘れ去られていたものを、生江さん自らが一枚一枚、掘り起こして再生したものです。すごく洒落ています。

パンに乗せる料理はほかに、「シェ・パニース」のアリス・ウォータースさんが考案した"Alice's Egg Spoon"でつくられる絶妙な目玉焼き「アリスの卵」や、グリルした鱧に山椒や自家製ぬか漬けでアクセントをつけたもの、赤身のヅケマグロなど、魅力的なメニューが次々に登場しています。

料理は2週間ごとには変わるのだそうです。
千葉の陶芸家、浜名一憲さんの大きな壺に、季節の緑がのびのびと豊富に生けられている

千葉の陶芸家、浜名一憲さんの大きな壺に、季節の緑がのびのびと豊富に生けられている

漆喰の壁に福井の築100年の民家から譲り受けた床、古いTANNOY(タンノイ)社の「Autograph」という大型スピーカーなどが、六本木の中心とは思えない、どこかほっとするような、懐かしい雰囲気を醸しています。

生江さんが客席をまわり、ワインを注いだり、音楽のリクエストを聞いたり、談笑したりしている風景が新鮮です。尋ねれば、料理の素材についてはもちろん、この空間に集まってきたものたちの物語を語ってくださると思います。
切りたての生ハム(ペルシュウ)を楽しむイベントで

切りたての生ハム(ペルシュウ)を楽しむイベントで

写真は日本唯一のパルマハム職人、岐阜の「BON DABON」の多田昌豊シェフ自ら切り分けてくれる生ハム(ペルシュウ)を楽しめるという、一日限りのイベントの時のもの。たまにこうしたイベントもあるようです。最新情報はFacebookやインスタグラムをチェックしましょう。
これからの季節はテラスで黒板メニューの特製おつまみで「外飲み」もよさそう

これからの季節はテラスで黒板メニューの特製おつまみで「外飲み」もよさそう


ブリコラージュ ブレッドアンドカンパニーがつくる、日本のパン

ショーケースに並ぶのは国産小麦のパン

ショーケースに並ぶのは国産小麦のパン

ショーケースには、大阪のル・シュクレクールのパンの兄弟分、ともいえるパンが並んでいます。ここでは、ほぼすべてのパンに国産小麦の全粒粉が使われているのが特徴です。
アオサノリなど、ここならではのシャバタもいろいろ

アオサノリなど、ここならではのシャバタもいろいろ

全粒粉といっても多くの人がイメージするような粗い食感ではなく、どのパンもしっとりもっちり、あるいはサックリとした口あたりで、身体に負担がない感じ。栄養たっぷり、健康的な旨味があります。濃い色に焼き上がったパンを眺めていると、こんがり小麦色とはまさにこの色のことだ、と感じます。
ブリコラージュブレッド

ブリコラージュブレッド

看板商品の「ブリコラージュ ブレッド」(ホールで1600円。1/4~)は現在、北海道産の小麦全粒粉、ライ麦粉、滋賀県日野町のディンケル小麦、水、海塩、酵母でつくられています。この夏の麦の収穫の後、さらにブリコラージュされていく予定なのだとか。どれか一つだけパンを買うなら、おすすめはこのパンです。
香り高いクロワッサンやパンオショコラ

香り高いクロワッサンやパンオショコラ

テラスでコーヒーとともに焼きたてをほおばりたいのは、国産の全粒粉をたっぷり配合した、さっくりと香ばしく、もっちりと旨味のある「クロワッサン」(350円)。層と層の間からイズニーのバターの甘い香りが立ち上ります。クロワッサンと同じ生地の「ジンジャークロッカン」(360円)は小川農園の新生姜入り。バターの香りに生姜の辛味がよく合います。
ジンジャークロッカン、夏のフォカッチャ、ヨモギなど魅惑的なパンが並ぶ

ジンジャークロッカン、夏のフォカッチャ、ヨモギなど魅惑的なパンが並ぶ

「夏のフォカッチャ」(330円)は愛媛の梶田農園のもち麦入りです。仕込みには、那須高原の今牧場のホエーを使っているそうです。甘いトウモロコシにローズマリーが香る、夏らしい味です。
日本ならではのヨモギ(青森)と抹茶を使って、シナモンロールならぬ、ヨモギロール。

日本ならではのヨモギ(青森)と抹茶を使って、シナモンロールならぬ、ヨモギロール。

ブリコラージュブレッドアンドカンパニーは、パンを介して繋がるヒトやモノ、仲間たちの心地よい関係性を表し、日々発信しています。

時代を超えて再び光をあてられた古き良きものと、職人たちの手から生まれる新しいもの。世界中で、ここにしかないもの。それらに出合う楽しみがあります。すぐにまた、行きたくなってしまう場所です。
bricolage bread & co.(ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー)

bricolage bread & co.(ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー)


bricolage bread & co.(ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー)

住所:港区六本木6-15-1 六本木ヒルズ けやき坂通り
電話:カフェ 03-6804-3350
ベーカリー 03-6804-1980
営業時間:カフェ 9時~20時(19時半L.O.)
ベーカリー 11時~20時 
月曜定休
Yahoo!地図情報
東京メトロ六本木駅徒歩7分

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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