腰痛

最新ガイドラインからエビデンスに基づく腰痛対処法

【理学療法士が解説】腰痛には様々な種類があり、原因よって対処法が異なります。まずは医療機関で病気や骨折による痛みではないことを確認しましょう。原因がわからず、かつ深刻ではない腰痛は全体の85%を占めます。痛み止めの服薬などは第一の選択肢にはせず、「stay active」を心がけましょう。世界的な最新ガイドラインに基づいた腰痛の対処法をご紹介します。

三木 貴弘

執筆者:三木 貴弘

理学療法士 / 運動と健康ガイド

最新のエビデンスに基づく腰痛対処法とは

腰痛

85%は原因不明と言われる腰痛。まずはご自身の腰痛の種類を見極め、正しく対処することが大切です

2018年にThe Medical Journal of Australiaにて最新の腰痛(非特異的腰痛)のマネジメントの方法がまとめられました。これまでの報告から大きく変わった点はありませんが、最新の腰痛のマネジメント方法を、エビデンスに基づいて改めて解説します。
 

まず判断すべきは腰痛の種類

腰痛というのは幅広いものです。腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなどが原因で足のしびれなどを伴う腰痛が生じることもあれば、圧迫骨折などによって腰痛が生じることもあります。

自分の腰痛が何が原因で生じているか。まずはそれを正しく知る必要がありますが、一般の方がご自身で判断するのは難しいでしょう。そのためにもまずはしっかりと医療機関を受診することが大切です。そこで、圧迫骨折や重度のヘルニアが見つかった場合は、専門医や理学療法士の指示に従って適切な治療を受ける必要があります。

しかしながら、腰痛の85%は原因不明と言われています。医療機関を受診してMRIやレントゲンを撮っても原因がはっきりしない場合が多いのです。その場合でも、少なくとも腰痛の原因が骨折や神経の圧迫ではないとわかることは重要です。このような原因不明の腰痛を、専門用語では「非特異的腰痛」と言います。ここではわかりやすく「深刻ではない腰痛」と呼んで解説を進めます。
 

非特異的腰痛・深刻ではない腰痛の場合、安静は禁物

「深刻ではない腰痛」だった場合、最初にやるべきは正しい知識を知ることです。私は医療機関で実際に多くの腰痛患者さんと関わっていますが、腰痛になると必要以上に痛みを恐れて仕事を休んだり、さらにベッド上で一週間以上寝たきりの生活を送ったりする人も少なくありません。

しかしながら、世界の腰痛のガイドラインや論文では、深刻ではない腰痛に対しての最初の治療(アドバイス)は、「Stay active=できる限り動くように」が常識です。まずはこのアドバイスも含め、正しい知識を知ることが重要です。

医療機関に行けば上記のようなアドバイスをしてもらえると思いますが、ここでもぜひ頭に入れておいてください。深刻ではない腰痛に対して、必要以上の安静や休息を取ると、逆に状況を悪化させてしまう原因になります。
 

腰痛改善にマッサージ・ストレッチ・鍼治療が有効なことも

一方で、なるべく普通どおりに生活をしていても腰痛が改善しない人たちも存在します。その場合は、より専門的な治療が必要でしょう。例えば、簡単なマッサージやストレッチ、鍼治療などが挙げられます。これらの治療により、固まっている筋肉がほぐれ、腰痛が軽減する場合があるからです。
 

腰痛対処法としてロキソニンなどの鎮痛剤服薬は適切か

もしそれでも改善しなかった場合は、一時的にロキソニンに代表されるような鎮痛剤を飲むのも方法の一つです。必要以上に痛みを我慢すると不快な刺激が脳に残り、慢性的に痛みを感じるようになってしまうためです。

重要なことは、「投薬」というのは腰痛において、第1の選択肢ではないこと。「stay active」を心がけてストレッチなども試してみて、それでも痛みが取れない場合に薬を選択するのが、エビデンスに基づいた世界の腰痛治療の常識だと言えます。

そしてこれらを行ってもなお痛みが改善しない場合、もう一度医療機関で詳細な検査を行うことも大切です。もし深刻な痛みが続いて、骨の変形や神経への負担などの原因が見つかれば、手術などの治療法も検討する必要がありますし、ストレスなどの心理的要因が大きく関わっていると考えられる場合は、臨床心理士などと協力して認知行動療法などの治療を行うことが有効なケースもあります。
 

まとめ

繰り返しになりますが、腰痛になった場合、まずは医療機関で正しい診断をしてもらうことが重要です。「骨にも異常がないので普段どおりの生活をしていたら治りますよ」と言われる場合もあれば、「骨折しています」と言われる場合もあるでしょう。

一言で腰痛と言っても、その原因や種類、痛みの程度は千差万別。いずれの場合も、正しい知識をもって、適切な正しい対応をすることが大切です。まずは最初に正しい診断をつけてもらえるよう、医療機関を受診してください。

参考文献:
Almeida, M., Saragiotto, B., Richards, B., & Maher, C. G. (2018). Primary care management of non-specific low back pain: Key messages from recent clinical guidelines. Medical Journal of Australia, 208(6), 272–275. http://doi.org/10.5694/mja17.01152
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