「1ヶ月の療養を要す」の診断書が出たときは就業規則を確認!
うつ病時は、就業規則を確認しよう
しかし、休職制度はすべての会社に定められているとは限りません。法律で定められた制度ではないため、会社によって休職制度の内容は異なります。中小企業の場合は、休職制度そのものがない会社もあります。病院で診断書をもらったら、まず就業規則を確認しましょう。休職制度がある会社は、必ず就業規則に制度の内容を記載しなければなりません。確認するポイントは以下です。
- 休職制度があるか?
- 休職制度を利用できる社員の範囲は?
- 利用できる休職期間の長さは?
- 休職中の賃金は支払われるのか?
就業規則は、正社員用と契約社員用、パート・アルバイト用と分かれている場合があります。自身に適用される就業規則を見せてもらってください。正社員には休職制度があっても、契約社員は制度を利用できないと定められていることもあり得ます。
<目次>
休職は会社が決めるもの
休職制度がある会社であっても、病院で診断書が出たからといって必ず制度を利用できるわけではありません。多くの会社の就業規則では「休職を命じることがある」と記載されており、休職とするかどうかは会社が判断することになります。診断書を会社へ提出するのは、会社が休職命令を出すかどうかの判断をするための材料の一つなのです。会社には、安全な職場環境を提供する義務があり、従業員一人一人の健康に配慮しなければなりません。体調が悪い中、無理して仕事に来る従業員がいるとき、会社を休むよう命令する権利があります。業務命令と同様、会社の命令には従わなければならないため、素直に休みましょう。
ただし、自分は健康でしっかりと仕事をすることができる!と思っているときに、会社が休職命令を出してくることがあります。そのようなときは、就業規則に記載された休職制度のルールに従って、医師の診断書をもらってくるように言われますので、自己判断をするのではなく、まずは病院に行きましょう。
十分に仕事ができる状態であると診断されたときは、会社へ報告して命令を取り消してもらうことになります。ごく稀な例ですが、会社が問題社員と考えるときに不当な休職命令を出すことがあります。そのときは、労働基準監督署へ相談するなどの対応が必要です。
うつで休職期間中に給与は支払われない!
休職制度は法律で決められた制度ではないため、その内容は会社が自由に設定できます。一般的に、休職制度の目的は「解雇を猶予する」ことであり、本来は欠勤が続いて解雇にしたいところ、少し様子を見ましょう!という制度なのです。骨折や盲腸の手術などであれば、一時的に入院して治療すれば完治します。1ヶ月もしたら元通りに元気に働くことができると分かっているのに、欠勤が続くからと解雇にするのは申し訳ない、これまで会社に貢献してくれたんだから解雇にするのを猶予しましょう!と会社が考えるのも納得です。
つまり、会社の恩情で「解雇を猶予」しているだけであり、休職中は働けない(仕事をしない)のですから、会社も給与を支払う必要がないのです。多くの就業規則では、「休職中の賃金は無給とする」と定められています。
休職中の給与が支払われないということは、毎月の給与から天引きされている社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)を引くことができないため、毎月一定の日を決めて会社に振り込むルールとしているところが多いです。休職中は給与が支払われないどころか、社会保険料を会社に振り込まなければいけない点、注意しましょう。
休職期間中に病気が治らないと退職しなければいけないの?
病気の間だけ、解雇を猶予してくれている制度であるため、病気が治れば会社に復帰することができます。しかし、会社もいつまでも待ってくれるわけではありません。就業規則に記載された休職制度の休職期間が終わるまでに病気が治らない場合、「休職期間満了により退職」となります。<例1>
診断書「1ヶ月の療養を要す」
休職期間「2ヶ月」
→1ヶ月で病気が治れば、会社に戻ることができます
<例2>
診断書「3ヶ月の療養を要す」
休職期間「2か月」
→2か月を過ぎても病気が治らない場合、退職となります
<例1>の場合に最初の1ヶ月で病気が治らず、さらに「1ヶ月の療養を要す」という診断書が出たとき、休職開始から2か月で治れば会社に戻ることができますが、治らない場合は休職期間の2か月となった時点で退職となってしまいます。
最近は、うつ症状やパニック障害、適用障害などのメンタル不調による休職制度の利用が増えていて、休職期間内に病気が治らずに退職となる例が多いです。メンタル不調は「完治」することが難しく、仕事に戻れるぐらいに回復したかどうかは主治医でも判断がつかないようです。休職期間の終わりが近づいてきたが「病気が治った」とまでは言えない症状のとき、主治医に以下を確認しましょう。
- どのような仕事であれば働くことができるのか
- 就業時間を短くしたり、働く日数を減らせば働けるのか
上記を診断書に書いてもらったうえで、仕事内容を変えたり、労働条件を変えてもらうことができるのか、会社に相談してみましょう。会社には、会社の業務を理解している「産業医」がいるため、主治医の診断書と産業医の意見を聞いて最終的な判断をしてくれます。
休職中で給与がでなくても社会保険から生活保障がある
休職中で会社を休んでいて会社からの給与が支払われないと、生活することができません。そんなときに使える制度が「傷病手当金」です。健康保険に加入(国民健康保険は対象外)していれば、給与が支払われない日ごとに「給与の2/3」が健康保険から支払われます。もらえる期間は、最長で1年6ヶ月です。「給与の2/3」とは、給与の金額そのものではなく法律で決められた計算式に当てはめて算出されます。また、休職中でも1日や2日働いた日があって、その日分の給与が支払われているときは、傷病手当金が減額されます。
傷病手当金をもらうためには、病気について医者の証明が必要となり、会社を休んでいて給与が出ていないことについて会社の証明が必要です。休職に入る前に、「傷病手当金支給申請書」を会社からもらっておきましょう。
病気が理由で退職するときに注意すること
雇用保険に加入していた人が会社を退職すると、「失業保険(失業手当)」をもらえます。退職理由や働いていた年数によって、もらえる失業保険の金額(日数)が変わります。退職届を提出して退職したときは、失業保険をもらえるまでに「3ヶ月(給付制限)」待たなければなりませんが、「休職期間満了」による退職であれば、退職後すぐにもらえるのが原則です。しかし、失業保険は「働ける状態にある」人だけがもらうことができます。病気が理由で退職する人は、退職した時点で病気が治っていないと「働ける状態にある」とは言えません。
失業保険は退職から1年以内にもらい終わらなければ、もらえる権利が消えてしまいます。病気が治って「働ける状態にある」と言えるまでに、権利が消えてしまう可能性があります。そんなときは、病気が治るまで「受給期間の延長」をすることができます。
退職後30日が経過したら、住所地のハローワークへ行って手続きをしてください。最大3年まで延長することができ、その間は治療に専念することができます。また、退職日まで傷病手当金をもらっていた場合、退職後も傷病手当金をもらえることがあります。「退職後の傷病手当金」の要件は以下です。
- 1年以上継続して社会保険に加入していること
- 退職日前に病気による欠勤が連続3日以上あること
- 退職日に出勤していないこと
退職前1年間の社会保険加入歴をみるとき、その会社で1年未満であっても、前職から1日の空白もなく転職しているのであれば、前職の期間も合計することができます。入社1年未満で退職するからといってあきらめず、入社前の期間を確認しましょう。
なお、退職の挨拶のために最終日だけ出勤することがあるかもしれませんが、退職日に出勤してしまうと「働ける状態」と判断されてしまって、退職後の傷病手当金をもらえなくなってしまします。会社に顔を出したとしても、「出勤」扱いで仕事をするのではなく、お世話になった人へ挨拶をする程度にしておきましょう。
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