ストレス

複数の悩みを相談されたときの聞き方3ステップ

【現役カウンセラーが解説】人間関係、恋愛、仕事、お金、自分の性格など、複数の悩みを同時に抱えてしまうことはあるもの。このような悩みを持つ人から畳みかけるように相談をされると、アドバイスの仕方も難しく感じるものです。複数の悩み相談は、3つのステップで聞くのがお勧めです。具体的な話の聞き方、対処法について解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

複数の悩みを抱えている人の話は、どのように聞くべき?

同時に複数の悩みを抱える人の話の聞き方、3ポイント

一人の人の中に同時に複数の悩みがあり、「どうアドバイスすればいいの?」と困ってしまうことがありませんか?

悩みを抱えている人は、複数の問題が同時に発生し、混乱してしまっていることも少なくありません。友人や家族、仕事仲間や部下から同時に複数の相談をされたとき、どのような話の聞き方をするとよいのでしょう?

たとえば、「夫と不仲で、離婚を考えているのよね……。最近自分にも自信がなくて、何もうまくいかないと感じてしまうの。今の仕事も合っていないような気がして、会社も辞める時期なのかなぁ。それに、将来のお金のことも心配で仕方がないの……」というように、複数の悩みが混在しているとき、相談に乗る側もどこから手をつければいいのか分からなくなってしまいがちです。

話を聞くプロでない限り、上記のような複数の悩み事を畳みかけるように語られてしまうと、「いったいどうアドバイスしてあげればいいのかしら?」と途方に暮れてしまう方は多いのではないかと思います。

ステップ1:悩みの中身を整理しカテゴライズする

こうした時に、カウンセラーとして私がお勧めしたい話の聞き方をお伝えします。まず最初に取り組みたいことは、相手の悩みの中身を整理してカテゴライズするということです。上記の方の場合、悩み事をカテゴライズすると、

1. パートナーとの不仲
2. 自信のなさ
3. 仕事に対する不満
4. お金への不安

という4つの悩みに分けることができます。したがって、まずは「あなたは今、これらの4つのことに悩んでいるんだね」とフィードバックしてあげることです。すると、相手は「そうか、自分が頭を抱えているのは、この4つなんだ」と自分の悩みのカテゴリーを理解することができます。

ステップ2:最優先で取り組みたい悩みを重点的に聞く

次に話を聞くのは、最優先で取り組みたい悩みについてです。

先の例でいくと、1.パートナーとの不仲、3.仕事に対する不満、4.お金への不安のどれかが、このテーマに当てはまりそうです。これらの悩みの中で、「今、お尻に火がついている悩みって何? 一番優先して解決させたいことは?」というような感じで尋ねてみましょう。

たとえば「パートナーと不仲で、離婚を考えている」ことが最優先で取り組みたい悩みである場合、まずはそのテーマについて重点的に話を聞きましょう。2人の関係に何が生じているのか、関係の悪化にはどのようなプロセスがあり、不仲の決定的な要因になる出来事があったのか、離婚が本当に適切な選択なのか、といったことをていねいに聞いていきます。

場合によっては、パートナーに対する不満をたっぷり話せば、それだけで悩みが軽くなるかもしれません。また話している途中に、自分がやるべきことを発見できるかもしれません。

このように話を聞くことによって、話し手自身が目下取り組むべき課題についてじっくり向き合う機会をつくるとよいのです。

このときに、早い段階からアドバイスを伝えるのは得策ではありません。その人が主体的に考える機会を、奪ってしまう可能性があるからです。アドバイスをするのは、相手の心情と考えをすべて聞いた後です。そして、最後には「他の意見を聞いてみてね」と伝え、多角的な視点から判断するように勧めることも必要です。

もちろん他の具体的な課題も、同時進行で解決の糸口を見つけいってもよいでしょう。しかし、同時に複数の課題解決に取り組むことで混乱したり、疲弊してしまう場合もあります。

最優先で取り組みたい課題が解決に向かっていけば、そのほかの悩みも、同じ方法を応用して解決できることもあります。また、今現在はお尻に火がついていない問題であれば、いったん深刻に考えることはやめ、状況の変化や心境の変化を待ってみることが大切だったりもします。

したがって、まずは最優先で取り組みたい悩みについてじっくり考え、できそうなことから具体的な解決にトライしてみることが大切なのです。

ステップ3:長期的に取り組むべき本質的な悩みについて聞く

お互いに考えるパートナー

「たくさん悩みを抱えているけど、この人の悩みの本質って何だろう?」―相手が自分自身を肯定的に捉えられるようにサポートしてみましょう

最後に、相手の悩みの「本質」となるものを整理してみます。つまり、長期的に取り組むべき問題のテーマです。

上の例の場合、2の「自信のなさ」が本質的な問題になりそうです。この本質的な問題があることによって、「パートナーとの良好な関係を築きにくい」「今の仕事が合わないように感じてしまう」「お金の不安がつきまとう」といった二次的な問題が生じている可能性も考えられます。

したがって、この「本質」と思われるものについての仮説を伝えてみましょう。「さっき4つの悩みについて語ってくれたけど、パートナーとの関係、仕事の悩み、お金の不安の悩みは、“自信のなさ”という悩みと関係していないかな?」というように仮説を伝え、相手の意見を尋ねてみるのです。

相手がその言葉に納得すればYESと答えるでしょうし、違うと思えば、よりフィットする答えを探そうとするでしょう。いずれにしても、自分の悩みの本質に向き合うことは、抱えている複数の問題を根本的に解決するためにも必要です。

そして、このときにお勧めしたいのが、相手が自分の本質的な悩みをポジティブに捉えられるようなフィードバックをすることです。たとえば「自信がない」ことは、別の視点から見れば「真面目さ」や「謙虚さ」「向上心の強さ」の表れであるともいえます。このように、相手が自分の本質をネガティブに捉えて悩んでいる場合、同じことを温かいポジティブな視点からフィードバックするとよいのです。

「自信がないのは、向上心があるからじゃないかな? 努力家だからだと思う」「あなたには、こういう実績も成果もある。すべてあなたが成し遂げてきたこと。誰にでもできることではないよ」というように。

自分に厳しい人ほど自分自身のことを、ポジティブに捉えにくいものです。だからこそ、他人が温かい視点で自分の本質をポジティブにフィードバックしてくれると、自分への認知がポジティブなものに変化していきます。

ただし、このポジティブ・フィードバックを一回伝える程度では、相手の認知は変わりません。同じような言葉を何度も繰り返し聞いているうちに、本人の認知が変化していくのです。したがって、ポジティブ・フィードバックは普段のかかわりの中で、長期的に続けていくことがとても大切なのです。

――このように、悩みを抱えて相談に来た人の話を聞く際には、

  1. 悩みの中身を整理してカテゴライズする
  2. 最優先で取り組みたい悩みについて重点的に聞く
  3. 長期的に取り組むべき本質的な課題を見つけ、ポジティブ・フィードバックを続けていく

という3つのポイントを押さえておくと、相手に役立つ対応ができるものと思います。身近な人が同時に複数の悩みを抱えている時には、ぜひ上の3つのポイントを参考にして、話を聞いてあげてみてください。
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