パン/パン屋さん取材レポート(東日本)

マンダリンのシェフが独立、ブーランジュリールニーク

「マンダリン オリエンタル 東京」でシェフベイカーを務めていた大橋哲雄さんが2017年11月に独立、練馬区の桜台に「ブーランジュリー ルニーク」を開店しました。レストランやホテルを経て、町のパン屋さんとなった今、ハレの日に楽しむパンから日常使いのパンへと移行した大橋さんのパンをご紹介します。発酵と熟成のバランスを大切に考えるベテランパン職人、大橋さんの考える、ユニークなパンとは。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

ロブション、マンダリンを経て開業

バゲット、パン オ セーグル

バゲット、パン オ セーグル

「タイユバン ロブション(現 ジョエル ロブション)」「マンダリン オリエンタル 東京」などで22年余、パンを焼いてきた大橋哲雄さんが独立、2017年11月に練馬区の桜台で「ブーランジュリー ルニーク(Boulangerie L'unique)」をオープンしました。

店名の”unique”に託された想いは、「ここにしかない」「唯一の」のパン店を目指す、ということなのだそう。それは具体的にどんなお店なのでしょう。
白のコックコートが似合う大橋哲雄さん

白のコックコートが似合う大橋哲雄さん

そう思ったとき、浮かんできたのは、マンダリン オリエンタルのパンでした。バゲットやロデヴなどのハード系から、ヴィエノワズリー系のバブカやマンゴーロールなど、ホテルのベーカリーでありながら、つくり手のことをもっと知りたくなるようなユニークな魅力があったのでした。当時から異彩を放っていた大橋さんのパン。ブーランジュリー ルニークでは、どのようなパンを焼かれているでしょうか。

ブーランジュリー ルニークのパン

バニラビーンズ入りのメロンパン

バニラビーンズ入りのメロンパン

メロンパン、クリームパン、クロワッサン、チェリーのデニッシュ、食パン、ソーセージのロールパン、カレーパン、そしてバゲット。ブーランジュリー ルニークに並んでいるのは、日本の一般的なパン屋さんの王道を行くようなラインナップです。それも、ベーシックスタンダードなフォルムで。「ここにしかない」という感じが特にないような……?
パンオレザン、デニッシュ

パンオレザン、デニッシュ

しかし、一口食べるとその感じは変わってきます。
クロワッサン

クロワッサン

たとえばクリームパン(180円)。たまごの風味の濃い自家製カスタードを柔らかく包みこんだ生地は甘すぎず、口に入れると溶けていくようです。
クロワッサン(180円)はエアリーでどこまでも軽やかで、バターが強すぎない。甘くないのでサンドイッチにも使えます。
クロワッサン断面

クロワッサン断面

食パン(300円/斤)ならミミの、バゲット(300円)ならクラストの、こんがりと色づいたところがなんとも香ばしく、絶妙な味わいである一方で、中の白い生地には無地のおいしさがある。余地と言いましょうか、そこに自分で、バターやジャムや、おかずを合わせたくなるような、パンとして大切な余白があるのに気がつきました。

もちろん、それひとつで完結するパンも悪くないですが、わたしは常々、お菓子やファストフードとパンとの違いのひとつは、この、なんらかの食材を合わせたくなる部分にあると思っています。
食パン

食パン


それらは、町のパン屋さんが提案する、日常のためのパンでした。
そのため「どんな味がするんだろう?」というような変わったパンは、ブーランジュリー ルニークにはないのです。特殊な素材も使われていない。そこにあるのはたぶん、誰もがよく知っているいつものパンなのです。が、香りと味と食感に、正統派の職人技が利いているのを感じます。
マンゴーロール

マンゴーロール


マンダリン時代からの大橋さんのファンならば気になる「マンゴーロール」はルニークにも健在です(480円/5個)。ドライマンゴー入りのこの生地をひとことで表現すると、ライトなブリオッシュ、あるいはリッチなバターロール。ふわっと口どけのいい、優しいパンです。
シナモンブレッド

シナモンブレッド


バブカはないのですが、バブカのようにリッチな生地を編んで型で焼いた「シナモンブレッド」(700円)があります。これは、クルミ入りのシナモンロールを型で焼いたような感じ。溶けだしたシナモンシュガーとバターがキャラメル化してカリッとしたところも魅力です。
ロデヴは土曜限定

ロデヴは土曜限定

あとひとつ、特筆しておきたいのが毎週土曜日14時に、「パン ド ロデヴ」(750円、ハーフ375円)、「パン ド ロデヴ ノアレザン」(900円、ハーフ450円)が限定販売されるということ。1週間がかりでつくられるルヴァン種を用いた、イチオシの食事パンです。

発酵と熟成、生地づくりを最も大切に考えるパンづくり

パンオノア、 レトロバゲット

パンオノア、 レトロバゲット

大橋さんならではのパンづくりのポイントは、生地づくりを重視することでした。発酵には生地を膨らませるほかに、その過程で生まれる香りがあります。発酵のなかに、生地を緩めてコシを出す、熟成の工程も含まれます。それらの見極めとバランスが大切なのだと大橋さんは言います。

「中に入っているものとか、上に乗せているものとかではなくて、パン生地のおいしさを究めたいと、ロブション時代から思っています。地元のお客さんには、あらためて、”パンってこんなにおいしいものなんだ”と思ってもらえたらいいですね」
ブリオッシュの口どけも秀逸

ブリオッシュの口どけも秀逸

40種類ほど並ぶパンはすべて、大橋さんがおひとりで焼かれています。今、あらためてベーシック、だからこそ、かえって際立つおいしさがそこにはありました。

ここがルニークのスタート地点。今後はニューヨークマフィンなども予定されているそうで、大橋さんの新しい自由な創作活動にも、大いに期待が持てそうです。
ブーランジュリー ルニーク

ブーランジュリー ルニーク

■ブーランジュリー ルニーク
住所:練馬区桜台1-5-7 小岩井ビル
電話:03-6914-6580
営業時間:9時~19時 日・月曜休
Yahoo!地図情報
西武池袋線桜台駅徒歩1分

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お江戸日本橋パン的愉悦。
(グルメショップbyマンダリン オリエンタル 東京 時代の記事)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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