雪道でのスタックに備えておくことが大切!
雪道のスタックといってもさまざまな状況があります。タイヤがスリップして動けない、新雪でカメ(ボディ下部が雪に乗り上げタイヤが空転する)になる、積雪で埋もれてしまった側溝に気づかずはまってしまうなど、もしかしたら、いずれかを経験したという方もいらっしゃるかもしれません。今回は雪道を走るときの注意点と、もしスタックしてしまったときの脱出方法を解説します。まず、念頭に置くのは『雪道では、急のつく運転はしない』です。スリップしやすい雪道では、急発進、急停車、急ハンドルなどの急の付く運転は車の挙動を崩してしまう可能性があるのでやむを得ないときを除きしないのが鉄則です。また路面がどのような状態にあるか見極めることも重要です。
雪道の路面状態と潜む危険
降雪した雪が通行した車によって踏み固められた圧雪路は、比較的走りやすい路面ですが、乾いた路面よりもすべり易いことは変わりません。アイスバーンはドイツ語でスケートリンクを意味する「Eisbahn」から来ていて、硬い氷のようになった路面はスケートリンクと表現されるほどスリップしやすい状態になっています。アイスバーンでは、より速度を落として車間距離を長めにとり、前を走る車の動きを観察し、信号、歩行者などに対応できるように余裕を持って運転をすることが大切です。
アイスバーンの一つである「ブラックバーン」は一見濡れたアスファルトに見え、車内からは判断するのは難しく、とても滑りやすい危険な路面状態です。私は凍結の恐れのある場所を走るときに、黒く濡れて見える路面があるとブラックバーンかもしれないと考え、減速し注意深く車を走らせます。その路面にさしかかり、タイヤがパシャパシャと水を巻き上げる音が聞こえてくると「凍結してなかった」と胸をなでおろしたこともありました。
除雪の行き届いていない道路や急な降雪は一面真っ白で道路の位置がわかりにくく、判断に迷うこともあります。側溝が雪で埋もれていることもあり路肩に寄ると脱輪してしまうこともあります。積雪地帯では道路の端に路肩を示すポールが立てられているのでそれを目印として運転しましょう。また積雪が車の最低地上高を超えるとボディ下部が雪に乗り上げタイヤが空転しスタックする可能性もあります。
トンネルを通過する際も注意を。路面状況が変化します
他には、トンネルを通過するときにも注意が必要です。川端康成の小説『雪国』の書き出しが「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」と書かれているように、トンネルを抜け、山を1つ越えるだけで全く違う環境になることもあります。出入り口付近は、路面状態も変わりやすく解け出した雪が凍結していることもあり事故も多い場所です。ゆるやかにアクセルを操作し、ゆるやかにハンドルを切り、ソフトにブレーキをかけ余裕をもって停まる。カーブに入る前には十分に減速する。雪道を安全に走ることは運転の基本を忠実に守ることだと思います。決して無理をせずタイヤをロックさせない。挙動が乱れたらブレーキを踏み止ろうとせずにアクセルを緩め、立て直しに専念した方が安全だと思います。
そして走る道は少し遠回りになってしまっても幹線道路を選びましょう。除雪が行き届いており、道幅も広く急なカーブも少ないからです。無理に車を運転しようとせずに、ここから先は無理かも知れないから別のルートを探そうとか、車を駐車場に入れ公共交通を使うなどの万が一のことを考え、引き返す勇気も持って欲しいと思います。
雪道でスタックした場合の脱出方法とレスキューグッズ
雪道のでよく見かけるのが、傾斜の付いている道で止まって、そこからタイヤがスリップしてしまい発進できなくなるというスタックです。原因はトラクション(駆動するタイヤが地面を蹴る力)が不足しているからです。同乗者や近くにいる人に押してもらったり、FR車だったら後部座席に乗ってもらい駆動輪にかかる荷重を高めトラクションを増やす方法もあります。しかし坂の傾斜角が急だったり、車重の重い車だとそう簡単に動いてくれないときもあります。そんなときはスノーヘルパーを使うと効果的で1人でも対応できます。■スノーヘルパー:「スタックステップ」
駆動輪接地面の前方ギリギリのところに、タイヤにかませるように置くのがポイントです。あとは、タイヤを空転させないように、アクセルをコントロールして前に進みましょう。折りたたみ式なので、コンパクトに収納できます。オレンジ色でよく目立ち、回収するときにも見つけやすいです。吹き溜まりなどで深い雪にタイヤがとられ、空転しているうちにタイヤが埋もれて動けなくなることもあります。そのときは、小刻みに前進後進を小刻みにおこない、雪を踏んで固めることでトラクションのかかりやすい状態を作ってみましょう。
■スコップ:キャプテンスタッグ「シャベルスコップ」
もし段差ができてしまっていて、乗り越えることができなくなってしまっていたら、スコップで脱出方向の雪を取り除くと脱出しやすくなります。雪が固まっていることもあり、スコップは樹脂製よりも金属製のほうが安心して使えて無理も利きやすいです。車は収納スペースが限られているので、折りたたみ式は重宝します。
■牽引ロープ:株式会社橋研「ソフトカーロープ」
スタックした車を引っ張るのは、一般道で故障車を牽引するのとは違い牽引ロープにものすごく負荷がかかり、破断の可能性があり危険な作業です。できれば経験者が行い、ロープ、フックとも許容のワンクラス上の確かなものを使うようにしましょう。切れたロープが飛んできて、大怪我をした人もいます。作業中は必ず安全なところに避難してください。
引っ張り出せても、すぐに車を走らすことはやめてください。車がダメージを受けている可能性があるからです。外観、下回りをチェックし回転部に当たる物はないか、ハンドルは正常に切れるか、少し動かしてブレーキは利くかを確認してください。走り出したらふらつきはないか、異音はないか、振動はないかも注意深く観察してください。
今回は、スタックからの脱出方法を紹介しましたが、いざスタックした状況になると思うようにはできないかもしれません。少しでも不安を感じたら、無理せずにレスキューのプロフェッショナルであるJAF に連絡をした方が良いでしょう。スタックしない事が一番ですので、まずはスタックしないような運転を心がけて下さい。
JAFロードサービス救援コール
https://jaf.or.jp/common/call-road-service/call-jaf/phone
おわりに
雪道ではありませんが、初めてオフロード走行会に参加した時に、沢山の方に「スタックしたら助けてあげるから楽しんで!」と声を掛けて頂きました。何て優しい方達だと安心していたら、一緒にいた友人に「今、すごく親切な人ばかりで良かったと思ってるでしょ?違うからね。スタックした車両をどうレスキューするかを考えるのが楽しいだけだから(笑)普段なかなか使う事のないウインチとかレスキューグッツを試せるのが嬉しいんだよ。」と言われたのを覚えています。その日、私がオフロードで無事に完走したら「おめでとう!」という声よりも「なんだ。スタンバイしていつもよりレスキューグッツを多めに持ってきたのにな。次はスタックしてよ!」と残念がられました。恐るべしオフローダー。人生は沢山スタックしている気がする矢田部明子です。
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