原価ベースでは、上昇必至の2018年新築マンション市場。中古マンションの在庫増加や需給緩和で弱含む地域も
2017年は、新築・中古ともにマンション価格が上昇した年でした。2018年のマンション市場も原価ベースを踏まえると2017年同様に価格上昇が続きそうです。土地価格と建物価格の動向に新築マンション価格の原価は左右されますが、用地取得から販売開始までに一定期間を要するので過去数年間の土地と建物の価格動向を見ればおおよそ当面の価格動向は見通せます。直近の2年間公示地価の価格トレンドを見ると都心エリアを中心に土地価格は、上昇が続いています。また建物の工事費も建築費指数を見ると高止まりが続いており(最近は原油価格などの資源高の影響も出始めている)一定の利潤を確保するなら2018年のマンション価格は、さらに上がることが予想されます。
直近2年間の公示地価(住宅地)の変動率を見ると千代田区、中央区、港区などの都心エリアだけでなく北区や荒川区といった城東エリアも上昇傾向が強まっていることがわかります。2018年は、値頃感のあった都心近郊エリアの供給価格も上昇傾向が強まりそうです。一方で、郊外エリアの価格はマンションに比べて建物原価の上昇幅の小さい戸建ての活発な供給もあり価格設定も慎重にならざるをえない状況です。
最終的に価格を決めるのは、需要と供給ですので八王子エリアのように値頃感のあるマンションの供給があるエリアも散見します。また、用地の取得時期やスケールメリットの有無によっても原価構成が異なるので、2017年同様に同じエリアでもマンションの商品特性や価格設定にバラツキが出てくるのではないでしょうか。
2018年にマンションを買うべき5つの理由。消費税、低金利、先高観、豊富な選択肢・・・
数年前よりも価格が上昇している点で、購入環境が良くなったとは言えない状況ではあります。しかし、これからのトレンドを踏まえると将来マンション購入をしようと考えている方であれば、次の5つの理由で2018年は購入を検討すべきタイミングだと思います。まず1つ目が、2019年10月に予定されている消費税の引き上げのタイミングが迫りつつあることです。次回の消費税引き上げ幅は2%で、マンションの建物原価や中古マンションを購入する際の仲介手数料、リフォーム費用なども影響を受けます。マンションの建築費が高止まりしている今、2%の消費税アップの影響は少なくありません(仮に建物価格2500万円なら50万円)。新築マンションの価格が上れば消費税の影響の小さい中古マンション価格も影響を受けます。価格が必ずしも上がるわけではありませんが、「駆け込み需要」が発生すればじっくり選ぶことも難しくなります。少なくとも2019年よりは、2018年の方が落ち着いて物件探しができると思います。
2つ目は、今の住宅ローンの金利水準の低さです。長期固定金利の代表的な住宅ローン「フラット35」の最低金利は、2017年12月度で1.34%《借入期間が21年以上35年以下、融資率が9割以下、新機構団信付きの場合》とここ数年低金利が続いています。
借入額が大きくなると金利動向に返済総額が大きく影響します。例えば、図のように5000万円を固定金利35年ローンで借りた場合、金利が1%から2%になると返済総額は1000万円以上変わってきます(住宅ローン控除は考慮せず)。マンション価格が6000万円であれば、価格の1割よりも大きな違いになります。変動金利であれば、1%を大きく割り込む水準で融資を行っている金融機関もあります。バブル期には、住宅ローン金利が7%を超えることもありました。日銀の金融緩和によって、住宅ローンの返済負担は今、かなり抑えられています。
一方で、三菱UFJ信託銀行が住宅ローン事業からの撤退を表明するなど採算性の悪くなった住宅ローン事業をやめる企業も出てきています。住宅ローン以外の領域では、アパートローンの融資が出にくくなる、金利水準が引き上げられるなど案件によっては、金融機関の融資姿勢にも変化が出はじめています。住宅ローンに関しては、積極的に取り組む企業間競争もあり今のところ融資環境は良好ですが、諸外国の金利動向を踏まえるといつまでも低金利が続く前提で考えない方が良いかもしれません。よって住宅ローン金利が低い今は、融資を利用する人にとっては購入のチャンスだと思います。
3つ目は、エリアによっては今後さらに価格が上昇する可能性がある点です。本サイトでも何度も取り上げましたが、インバウンドの活性化影響で都心の商業系用途地域でリーズナブルにマンションを供給することが難しくなってきています。一方で、職住接近意識の高まりもあり通勤利便性の良好な立地のマンションはニーズが強くなっています。こうした背景から、比較的リーズナブルな江東区や品川区の湾岸エリアや台東区、荒川区、墨田区などの城東エリアのマンションは広域層の選択肢の一つとして注目されてきましたが、地価トレンドを踏まえると近い将来さらに価格が上昇する可能性があります。
震災翌年の2012年が近年の地価トレンドの底とすると、地価上昇が鮮明になった2014年~2016年に用地取得した物件が今後マーケットに順次供給されます。金融緩和によって、事業資金の調達コストも下がっておりマンションの事業サイクルも長くできるので、今後も採算性を重視した供給になると考えられます。エリアによっては、数年で相場観が変わる可能性があるので注意が必要です。都心アクセスを求めるのであれば今の供給ラインナップをよくチェックしましょう。
4つ目は、広域で探せば意外と値頃感のあるマンションがまだたくさんあるという点です。例えば、つくばエクスプレス線沿線のマンションや川崎市などは供給物件数が豊富で選択肢が多い。新規予定物件でも、JR京浜東北線「川崎」駅徒歩19分の全279邸の大規模プロジェクト「アクアブリーズ川崎」(新日鉄興和不動産 大成有楽不動産:2018年1月下旬販売開始予定)は、予定価格が 2800万円台~5900万円台(専有面積57.79平米~85.29平米)。継続期の注目物件も市場に豊富にあるので、検討エリアを広げて見れば選択肢はまだまだあります。
また、最近の住戸ごとの価格設定を見ると最上階やルーフバルコニー付きなど条件の良い部屋の値付けが強くなっている傾向が散見され中心価格帯の住戸や低層階などがそれほど高くない場合もあります。注目物件でも住戸によっては、予算に適う場合もあるようなので、よくリサーチすることが大切です。
5つ目は、2018年だからこそ出会える今年しか買えないマンションや住戸があるということです。例えば、JR中央線「三鷹」駅にペデストリアンデッキで直結の「グレーシアタワー三鷹」(相鉄不動産 三菱地所レジデンス)はその一つ。商業・住宅複合の再開発で誕生する三鷹市最高層の地上26階建て184邸の同プロジェクト。過去10年の都内新築マンションで駅徒歩1分かつペデストリアンデッキ直結のマンションが供給された割合は、わずか0.2%。こうした稀少性から既に5000件以上の資料請求を集めるなど注目を集めています(2018年1月6日モデルルームグランドオープン)。
三鷹市や武蔵野市といった地元層だけでなく、「ザ・タワー横浜北仲」や「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」なども見学している広域層からの来場もあるようです。
また、中古マンションも希望の条件に合った部屋が売り出されることは、築浅マンションなら貴重な機会です。まずは、物件探しをしなければこうしたマンションに出会えることはありません。新築マンションの供給戸数が少なくなっている今の市場では、時期を待っても見つけやすくなることはないでしょう。
2020年を控えて、価格動向を見極めたい方もいるでしょうが、損得勘定よりもむしろ大事なのはそのマンションを購入して家族が幸せになること。人生100年時代と言われる今、10年以上住み続けたいと思えるマンションに出会うことができれば、将来ある程度資産価格が下がったとしても納得できるのではないでしょうか。10数年前にマンションを購入したAさんは、今年住宅ローンが完済してリタイア後の資金をこれから蓄えるとのこと。スタートが早く切れれば、ローンを早く目途を立てることが可能です。不動産を投資的な視点で見ると、「時間を上手く使う」ことが重要です。そうした観点から見ると、気に入ったマンションに出会ったその時がまさにタイミングではないでしょうか。
とはいえ、探し始めたばかりの方は物件選びの基準も曖昧なもの。まずは、資料請求やモデルルームを訪ねて家族の意見を擦り合わせつつ理想のマンションを思い描いてみてはいかがでしょうか。
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