不動産売買の法律・制度

空き家や空き地の管理をどうする?

空き家や空き地の増加が大きな社会問題となっています。その所有者は自らの責任として管理をしっかりやらなければなりませんが、多くの費用や手間もかかります。空き家や空き地の管理をどうするべきなのか、主なポイントをまとめてみました。

執筆者:平野 雅之


誰も住まなくなった空き家、あるいは建物を取り壊した後の空き地の問題が、年々深刻化しています。早期に売却あるいは有効活用できればよいのですが、そうでない場合には所有者の責任としてしっかり管理していかなければなりません。

空き家対策の考え方などについては ≪親の家を「特定空き家」にしない5つのポイント≫ でもご紹介しましたが、今回は空き家や空き地をそのまま所有する場合における維持・管理について考えてみることにしましょう。

立入禁止の表示がある空き家

空き家をしっかり管理しなければ周囲に危険を及ぼすこともある



空き家の管理責任が重くのしかかってくる

空き家が増加する背景には住宅が余っているのにもかかわらず、毎年かなりの数の新築物件が供給され続けていることなど、住宅市場の構造そのものにも原因があります。それと同時に人口減少や少子化、核家族化などの問題も考えなければなりません。

兄弟姉妹のいない「一人っ子」は1990年代頃から増加傾向にあるようですが、その世代が自らの家を所有するようになるとともに、これからは親の家を相続するケースも増えていきます。

将来的には父方の祖父母の家、母方の祖父母の家、両親の家を相続し、自分の家も含めて一人で3~4戸、あるいは夫婦で合わせて5戸以上の家を所有することになる事例が増えるともいわれていますが、使わない空き家を適切に管理していくためには相当な労力を要するでしょう。

だからといって適切な管理をしないまま空き家や空き地を放置すれば、周囲に迷惑をかけるだけでなく、何らかの事故や問題が発生したときには管理責任を問われることになりかねません。

空き家対策が大きな社会問題となるなかで、法制度も含めて、今後はますます所有者の責任が重くなっていくものと考えられます。


適切な管理をしないとどうなる?

誰も住んでいない空き家は、定期的に適切な管理をしなければ劣化が急速に進行します。換気されないことによってカビや結露が発生し、木部が腐食したり壁紙・クロスが剥がれたり、さらにカビ臭が室内に充満したりすることも多いでしょう。

給排水管に水が流れないことで、配管にサビが生じたり、臭気(排水)トラップが乾燥して機能せず下水の悪臭が室内に逆流したり、さらには害虫が発生することもあります。悪臭が室内のクロスなどに染み付いてしまうことも考えなければなりません。

また、排水口の詰まりが原因の雨漏りも生じやすくなります。マンションであれば上の部屋から漏水などが起きることもありますが、いずれも発見が遅くなればなるほど深刻な状況に陥ることになります。

さらに、人の目が行き届かないことで犯罪に利用される場合もあるほか、浮浪者が住みついたり不法侵入があったり、近年では都市部でも害獣の侵入が深刻な問題になっています。空き家に対する放火事件が多いことも意識しておかなければなりません。

庭の樹木・植栽が異様に生い繁り、隣家にさまざまな迷惑をかけることもあるでしょう。家を取り壊した後の空き地の場合も同様ですが、雑草が伸び放題になると景観上の問題だけでなく、害虫の発生やゴミの投げ入れ、粗大ゴミの不法投棄などを誘発することもあります。

建物の老朽化が進めば、地震や台風などで屋根や外壁が落下したり飛散したりして、近隣に被害を及ぼすこともあります。もし人に危害を与えれば、高額な損害賠償責任を問われるケースもあるでしょう。

雑草が生い茂った空き地

建物を解体した後の空き地の管理も重要



空き家や空き地の管理にかかるコストは?

国土交通省が2014年に実施した「空家実態調査」によれば、「空き家にしておく理由」として多いのは次のようなものです(複数回答)。
  • 物置として必要だから 44.9%
  • 解体費用をかけたくないから 39.9%
  • 特に困っていないから 37.7%
  • 将来、自分や親族が使うかもしれないから 36.4%

物置として実際に使っているのならまだよいのですが、空き家や空き地を所有しているだけでもさまざまな費用がかかることを考えなければなりません。月額や年額はそれほど多額でないとしても、年数を重ねることでかなりの費用負担になるケースもあるでしょう。

【空き家・空き地を所有することでかかる費用】

【空き家・空き地を維持するための費用】
  • 火災保険料
  • 劣化した部分の修繕費用(必要に応じて)
  • 庭木・植栽の剪定費用(年に数回)
  • 不法投棄された粗大ゴミなどの処理費用(必要に応じて)
  • 豪雪地帯の場合の雪下ろし費用

【空き家・空き地を自分で管理するために必要な費用】
  • 現地までの交通費(年に数回)
  • 遠隔地の場合の宿泊費(年に数回)

なお、空き家・空き地を自分で管理するときには、さまざまな点検作業や換気、掃除、害虫の糞や死骸の処理、状況に応じて補修工事や庭木の剪定などの業者手配、業者が作業する際の立ち会いなど、金額で表すことのできない多くの手間もかかります。

これらの費用を足し合わせていけば、1年間に数十万円、物件の状況によっては百万円を超えるような負担が生じる場合もあるでしょう。

自分の家の隣にあるような空き家はともかくとして、「将来使うかもしれないし、そうでないかもしれない」という空き家を持っているための費用としては、かなり高額な負担になりがちだといわざるを得ません。

いずれにしても「お金がかかるから、そのまま放置する」ということにならないように、管理についてしっかりと考えることが大切です。


空き家管理を業者に依頼することも検討すべき

近年は空き家管理の代行サービスを手掛ける会社やNPO法人も増えています。また、自治体の支援のもとで空き家の見回りなどをする自治会、地域団体などもあるようです。

自分自身で管理することが困難な空き家や空き地については、これらのサービスを利用することも積極的に考えてみるべきです。まずは物件所在地の自治体に問い合わせて、紹介が受けられるかどうかを確認してみましょう。

自治体からの紹介がなければインターネットなどを使って調べることになりますが、サービスの内容や点検の頻度、負担する費用などはそれぞれ異なりますから注意しなければなりません。

外観を目視して異常がないかどうかを確認するだけならかなり安価なサービスもありますが、住宅内部の点検や換気、通水などを伴うものなら月額数千円~1万円程度のことが多いでしょう。

空き家管理サービスを依頼したときでも、税金や修繕費用などは別途に負担しなければなりませんが、とくに遠隔地の場合なら自分の交通費や手間を省けるメリットが大きくなります。


近隣との間で良好な関係をもつことも必要

空き家や空き地を自分で管理する場合でも、あるいは空き家管理サービスを利用する場合でも、突発的に起きた事象については対処が困難です。自然災害で空き家に問題が生じることもあるほか、不審者の侵入、事件事故などに巻き込まれることもあるでしょう。

何らかの異常があったときには、隣人などからすばやく連絡をもらえるようにしておくことも大切です。空き家にすることで迷惑をかける可能性の高い隣人ですが、良好な関係をもっておくことで感情的なトラブルに発展する危険性は低くなります。


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親の家を「特定空き家」にしない5つのポイント
空き家対策はどうなっている?主な動きをまとめてみた
空き家数・空き家率について誤解しないためのポイント
建物の解体について知っておきたいポイント

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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