世界のLGBTの最新状況を詳細に伝える大作

 
この著書『現地レポート 世界LGBT事情』は、実は2016年末に発売された本なのですが、どこかで紹介したいと思っておりまして、このタイミングになりました。

著者のフレデリック・マルテル氏は、グローバルに活躍する気鋭の社会学者で、フランスのPACSの成立にも尽力した方。実は2007年に来日した際、新宿二丁目を訪問し、囲む会が開かれたことがあります。 

そんなフレデリックさんが満を持してLGBTについての著作をまとめ、日本語版も発売されました。世界45ヵ国のLGBTの権利状況を取材し、「LGBTイシューに対する各国の態度はその国の民主主義の成熟度や現代性を測る基準となる」ということを実証した本です。

これまで日本で紹介される海外のLGBT事情と言えば、同性婚が認められ、LGBTが生き生きと暮らし、華やかにパレードしている様子など、先進的な都市をフィーチャーした情報が中心でした。しかし、この本ではそうではない国々、影の部分にもしっかり光が当てられています。

同性愛差別が世界で最も激しい国々……例えばアラブ世界やイラン、キューバ、中国、ロシアなどでも、ゲイが当局の目を逃れてたまり場を作っていたり、意外に幸せそうに暮らしている様子がレポートされています(第8章はまるまるイランのレポートに費やされているほど充実したレポートです)。現地ならではの生き延び方や戦略があり、たくましく生きていることがわかります。

欧米の物差しだけではなく、その国の文化にできるだけ寄り添いながら、また、インターネットなどが果たす役割などにも注目しながら、LGBTの解放へとつながる道筋(希望)を探っていこうとするような、真摯なスタンスで書かれています。

余談ですが、この本が「世界のLGBTの権利状況についての比較社会学」の大作だとすると、ある意味で双璧を成す本じゃないかと思うのが、つい最近発売されたコミックエッセイ『世界一周ホモのたび 結』です。


世界中の(それこそ何十ヵ国もの)ゲイのセックス・クラブでフィールドワークを重ね、モテのグローバルスタンダードや、LGBT的に発展途上な地域が先進的になるにつれてゲイのありようがどう変わっていくかの法則など、実に興味深い真実を体を張って実証的に示してくれているコミックエッセイです。今回の完結編では、まさかの、胸をえぐられるようなラストシーンが待っていました。