世界的に評価される漫画『弟の夫』が誕生した理由とは?

漫画『弟の夫』ドラマ化が大反響を呼んでいる田亀源五郎さん。その『弟の夫』の制作秘話的なお話(あえて描かなかったことや、どういう意図で制作していたのかということ)から、自身の生い立ち、創作の源、エロティシズムの探求、欧米と日本社会の違い、世の中をどう変えて行きたいか、などについて存分に語られているのが、この著書『ゲイ・カルチャーの未来へ』です。

これを読むと、なぜ『弟の夫』がこれだけ高い評価を受ける作品になったのかがよくわかります。多くの人たちがゲイであることを受け容れられず後ろめたさを感じながら生きていた時代に、田亀さんは自身のセクシュアリティ(クィアな欲望やゲイであること)を肯定し、オープンにして、信じる道を真っ直ぐ突き進んできました。作品の根底に、知性や、揺るぎないセクシュアリティの肯定があって、だからこそ、世界に通用する作品、『弟の夫』が生まれたんだなぁと、深く納得させられます。

この著書の中には、エロティック・アートについて、含蓄に富んだ、ハッとさせられるような言葉がたくさんあります。例えば、「性欲に基づいた表現は、信仰に基づいた表現と同等」など。世間の「男どうしのセックス」に付与するスティグマが払拭されない限り、当事者は自己肯定できず、ゲイ解放はありえません。HIVなどの問題にも深く関係します。そんなセックスのことが、日本では(LGBTの間ですら)どんどん見えなくされ、タブー視されつつあるように感じます。

そんななか、田亀さんはゲイエロティシズムを力強く肯定してくれる希望の星として輝いています。ゴトウがこの本を読んで再確認したのは、この国に田亀さんという方がいてくれることの意義です。本当にありがとうございます、という気持ちになる本でした。

なお、最近、田亀さんの長編デビュー作である『嬲り者』の《復元完全版》が発売されました。レジェンドの始まりとなる記念碑的作品です。興味のある方はぜひ。