損害保険/火災保険の基礎を学ぼう

被災者生活再建支援制度とは?火災・地震保険の設計でどう考える?

被災者生活再建支援制度とは、自然災害などで被災した際、最大で300万円の支援を受けることができる制度です。この被災者生活再建支援制度について、その内容と火災保険・地震保険のプラン設計の観点から解説します。

平野 敦之

執筆者:平野 敦之

損害保険ガイド

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火災保険、地震保険を考える際、知っておきたい被災者生活再建支援制度

火災保険や地震保険のプランを設計する際、考慮しておきたいのが「被災者生活再建支援制度」です。自然災害で被災した際の生活再建の一つになる被災者生活再建支援制度について、その内容と火災保険・地震保険のプラン設計の観点から解説します。
 
被災者生活再建支援制度とは、自然災害で被災した際に生活再建として行政から支援金が支給される制度

被災者生活再建支援制度とは、自然災害で被災した際に生活再建として行政から支援金が支給される制度


自然災害などで被災すると住まいに大きな損害が発生することから、テレビやラジオ、パソコン、スマホなど情報源となるものが手元にないこともあります。被災者生活再建支援制度について知っている人は知っているでしょうが、被災後の情報が自分で取りにくい状況になるため事前に知っておきましょう。
   

被災者生活再建支援制度とは?

被災者生活再建支援制度とは、自然災害を原因としてその人の生活の中心基盤である住宅に所定の被害を受けた場合に、行政から支援金を支給する制度です。

自然災害による被害は、規模や災害の内容によっては自助努力による生活再建が厳しいことが少なくありません。特に地震災害の場合、地震保険で加入する金額にも制限があることから、被災者に対して最低限のセーフティネットを設け、その生活を立て直す支援として、被災後の生活再建を支援する仕組みになっています。
 

被災者生活再建支援制度の内容

■制度の対象となる自然災害
制度の対象となるのは一定規模以上の自然災害です。この場合の自然災害とは、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、その他の異常な自然現象により生ずる被害をもたらしたものをいいます。

他にも細かい規定がたくさんあり、自治体の中での人口の規模や被災した住居の数などが関係してきます。例えば以下のようなものです。
  • 10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村
  • 100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県

実際に被災した際には行政で確認ができますので、まずはここがどうなるか確認するようにしてください。公的な支援制度といえども支援金の支払いには条件がありますので、その条件と内容について確認していきましょう。

■制度の対象となる条件
  1. 住宅が全壊した世帯
  2. 住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が起きてその住宅をやむを得ず解体した世帯
  3. 災害による危険な状態が継続して住宅に住むのが不能な状態が長期間継続している世帯
  4. 住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)

ポイントは「住宅」が対象であることです。専用店舗は対象にしていませんので注意してください。

■支援金の支給額
被災者生活再建支援制度による支給額は、次の基礎支援金と加算支援金の2つの合計です(※世帯人数が1人の場合は、それぞれの金額の3/4)。

○基礎支援金(住宅の被害程度に応じて支給)
  • 解  体  :100万円
  • 長期避難  :100万円
  • 大規模半壊 :50万円
  • 全  壊  :100万円

○加算支援金(住宅の再建方法に応じて支給)
  • 建設・購入:200万円
  • 補   修:100万円
  • 賃   借:50万円(公営住宅以外)
※一旦住宅を賃借した後、自ら居住する住宅を建設・購入(または補修)する場合、合計で200万円(または100万円)

つまり、住宅が全壊して、再度建設や再購入すれば100万円+200万円で最高300万円の支援を受けることができるのです。
 

被災者生活再建支援制度も万能ではない

被災者生活再建支援制度

場合によっては、被災者生活再建支援制度の対象から外れてしまうケースも押さえておこう

被災者生活再建支援制度は、市区町村や都道府県などの自治体の単位の中で、所定の被災世帯や被災状況などの対象になっている必要があります。地震災害や台風などの自然災害の場合には、比較的対象になりやすいのですが、制度自体ももちろん万能ではありません。

都道府県の境目の周辺で損害が発生すると要件を満たさないこともありえます。また、竜巻のように限られた一定の地域だけ損害が発生するようなケースでは、この制度の対象から外れてしまうケースもあります。

半壊などの場合もやむを得ず解体などをしないと対象になりませんし、そもそも半壊にも満たない一部損壊は対象外です。被災者生活再建支援制度のこういった面も知っておいてください。
 

火災保険、地震保険の設計に被災者生活再建支援制度をどう考えるか?

火災保険・地震保険を設計する際に被災者生活再建支援制度をどのように考えるか改めてみてみましょう。なお、被災者生活再建支援制度における全壊や大規模半壊などの認定と、火災保険・地震保険における保険会社の認定基準は異なりますので注意してください。

■火災保険と被災者生活再建支援制度
現在の火災保険における契約金額は、時価ではなく新品の価額で契約します。通常は火災保険の範囲でカバーできると考えていいでしょう。

火災保険は、建物だけか家財や地震保険も加入しているかで被災後の状況は変わります。実際、火災保険の建物部分のみ加入していて、自然災害で住居が全壊すれば被害は建物だけでなく、なかにある家財にも発生します。家財にも火災保険をつけていればいいのですが、そうでなければ、プラスされる分があるならそれに越したことはありません。

住宅の場合、住居にかける保険は次のようになります。
  • 建物 : 基本(火災保険)+地震保険
  • 家財 : 基本(火災保険)+地震保険
フルに加入すればこのようになります。予算の関係などで建物の火災保険のみ加入していれば後の補償はないことになります。どこまで何が必要か改めて考えてみてください。

■地震保険と被災者生活再建支援制度
被災者生活再建支援制度でよく知っておきたいのは、地震保険との関係です。もともと地震保険は火災保険の契約金額の50%までしか契約することができません。例えば、火災保険に2,000万円加入していると地震保険は1,000万円が上限となります。地震で住宅が全壊した場合、地震保険の支払いがあってもまだ1,000万円不足します。

頭金を入れずに住宅ローンを利用して間もなければ、この1,000万円は単にローンの返済分です。被災者生活再建支援制度があれば最大で、1,000万円+300万円=1,300万円で不足分が700万円に減らせます。地震災害の場合には、この不足をどうするかが問題です。具体的な方法としては地震保険の上乗せ補償や少額短期保険で単独で加入できる地震補償、家財の地震保険などになるでしょう。

地震災害の場合は不足する部分が多くなります。200~300万円多く貰っても足りないと考えるか、何もかもなくなったときにこの金額を大きいと考えるかです。地震災害で補償が不足するときの考え方を理解して、どう対処するか具体的に検討してください。

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