ストレス

職場の飲み会での下ネタ、ボディタッチはセクハラです

歓送迎会や忘年会などの職場の飲み会。会社の「外」であれ公式行事の色合いが強く、当然ですが下ネタやボディタッチは職場にいるときと同様でセクハラと言われても仕方がありません。さらに、同性同士の下ネタや、誉め言葉のつもりの発言がセクハラと捉えられてしまうことも……。無礼講のつもりで大失敗することのないよう注意すべきポイントをまとめました。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

お酒の席での「うっかり言動」でセクハラ加害者に!

その気はないのに「ノリ」でうっかり・・・セクハラ的言動をしないように注意!

その気はないのに「ノリ」でうっかり・・・セクハラ的言動をしないように注意!

「忘年会」シーズンに入ると、職場の人や取引先の人とお酒を酌み交わす機会が増えます。日頃は仕事の話しかしない間柄でも、おいしいお酒や食事を交えて会話を楽しめば、親近感が湧き、信頼感を高めあうことができます。

一方、場合によっては、お酒の力やその場のノリで緊張感が緩み、失礼なことを言ってしまったり、思いがけない行動でひんしゅくを買ってしまったりすることもあります。さらにはそうした言動が「セクハラ」になってしまうこともあるため、注意しなければなりません。

忘年会の席は無礼講? 「職場」の延長線だとわきまえて

「男女雇用機会均等法」で定義されるセクシュアルハラスメントとは、「職場」において行われる「性的な言動」によって、労働者が受ける性的ないやがらせを意味します。

では、ここで言われる「職場」とは、どの範囲までを意味するのでしょう? 「性的な言動」とは、どのような言動なのでしょう?

この法律で定義される「職場」とは、普段働く場所だけを意味する訳ではありません。職場の人間関係が続いている場所であれば、勤務地以外の場所も職場の延長線と見なされます。

職場仲間との飲み会は、メンバーや状況によって職場的であったり、プライベート的であったりとさまざまです。なかでも忘年会は、一般的には職場公式の色合いが濃い場であり、職場の延長線と捉えられる可能性が高い場所です。仕事場ではないから、会社の外だからセクハラには当たらないなどと考えては大間違いなのです。

セクハラか微妙なグレーゾーンの行為は行わないのが鉄則

「性的な言動」に関して、何を「性的」と感じるのかは個人の受け止め方によって異なります。公的な判断では「平均的な女性労働者、男性労働者の感じ方」を基準として議論されます。しかし、そもそも個人の受け止め方は多様であるだけに、あらぬ疑いをかけられないためにも、誰か一人でもセクハラだと感じる可能性がある行為は、行わないように意識することが肝心です。

そして、うっかりセクハラ行為をしないためには、「セクハラと受け止められかねない『性的な言動』の範囲は、自分が想像する範囲より意外に広いのかもしれない」と思っておくことが重要なポイント。

以下に、私が過去に相談を受けた例から、お酒の席でうっかりセクハラと感じさせてしまった言動の例をご紹介します。人によってはセクハラだと受け止めてしまう可能性のあるグレーゾーンの言動の例です。

誉めているつもりがセクハラと捉えられてしまうことも……

「ストレートな下ネタではないから大丈夫」だと思っていませんか?

「ストレートな下ネタではないから大丈夫」だと思い込んでいませんか?

次のように誰かを誉めている言葉の中に、性的なニュアンスや、男性らしさ、女性らしさの押しつけとなる「ジェンダー・ハラスメント」を感じさせてしまう言動は、特に言う側と受け取る側での認識のずれが起こりやすいようですので、注意が必要です。

■「美人だね」「きれいだね」「かわいいよね」

容姿に対して誉めることは、言い方や発言者によってはセクハラ的に感じられてしまうことがあります。そんなつもりはなくても誉めながら目線に含みがあったり、やたらと外見ばかりを誉めてしまったような場合、上司が部下に対して発言する場合などがそうです。そして男性から女性に対してだけでなく、女性が特定の若手男性職員などに「かわいい」と言うことも、セクハラ的に感じられやすいので注意しましょう。

■「女子力が高いね」
こまめにお酒をつぐ女性や華やかな外見の女性は、「女子力が高い」とほめられることがあります。こうした発言が飛び交うと、女性は「女子力」という評価を意識しすぎてしまうことがあります。これを「ジェンダー・ハラスメント」的に感じ、セクハラにつながるものだと感じている人もいます。そもそも職場では、男らしさ・女らしさの評価をしないのが原則です。

「同性同士」の性的な話題もセクハラに

特に同性同士の場合、相手が性的な話題に共感してくれるものと思って話していることが少なくありません。相手が同性であると、以下のような話題を気軽に持ち出してしまうことがあります。

■職員の性的なニュアンスを含めて批評する

「○○さんって声がセクシーだよね」「彼って“肉食系”じゃない?」など

■職員の年齢や身体特徴を性的なニュアンスで語る
「〇〇さんは中年太りで魅力がない」「彼女は“おばさん”だけど“美魔女”系」など

■性的体験の話題
「パートナーとの性生活に困ってるんだけど、みんなはどう?」など

■出産時の生々しい体験をリアルに語る
「内診時はこうだった」「赤ちゃんが出てくるときに……」など

ストレートな下ネタではなくても、その話題に性的なニュアンスが含まれているとセクハラ的に感じられてしまいます。同性のよしみで発言がエスカレートしていないか、注意する必要があります。

不必要なボディタッチは不快に思われやすいことも忘れずに

飲み会が盛り上がってくると、肩を組んだり、肩を何度も叩いたりしてボディタッチが増える人がいます。相手はその場のノリで笑顔で応じているとしても、内心不快に感じている場合があります。

また「手相を見せて」と言ってやたらと人の手に触ろうとしたり、同性だからよいだろうと「やせた方がいいよ」などと言ってぜい肉にさわったりすると、相手はとても不愉快に感じることがあります。

さらに、妊婦さんのお腹に触るのも控えましょう。「妊婦のお腹はありがたいもの。だから触ってもよい」などと思い込んでいる方がいます。しかし、ごく親しい人以外に腹部を触られるのは不快なことですし、触れられることに危険を感じる人もいます。

もちろん、気分が悪くなった人を介抱する際などは、体に触れなければならないこともあるでしょう。その際にはまず相手に体に触れてもよいか尋ねること(「背中をさすっていい?」など)、そして、できれば同性が介抱するようにしましょう。

交際関係や出産計画をやたらと聞くこともNG

お酒の席で、普段は話さない交際関係や家庭のことなどのプライベートな話をお互いにするのは盛り上がるものですが、相手にその気がないのに何度も食事に誘ったり、「彼氏いるの?」「なんで彼女作らないの?」「子どは早く作った方がいいよ」などと、個人的な交際関係をしつこく聞いたり、他人の妊娠・出産計画に口を挟むようなことは、避けるようにしましょう。

飲み会の席では気が大きくなり、好意を感じていた人に積極的にアプローチしたり、周りもその場のノリで同調し、応援してしまうことがあります。また、交際関係や妊娠・出産の話題が出ると、その話題でもちきりになることもあります。

一方で、こうしたことをしつこく聞かれたり、助言されたりすると、不快に感じてしまう方は少なくないものです。また、交際関係・妊娠・出産計画の話題ばかりで盛り上がることに苦痛を感じる人もいます。内心話題を変えたいのに、言い出せずに合わせている方もいるでしょう。

家族構成や環境など、それぞれに異なるプライベートを持つ人が集まる場ですので、個人的な質問で盛り上がるのもほどほどにした方がよさそうです。

忘年会で信頼関係を築くために念頭に置きたいこと

忘年会の席では、行為者本人は意識していなくても、その言動を受けた人、その言動を見聞きしている周りの人が不快に思い、セクハラ的に受け止めてしまう言動があります。個人の受け止め方が多様であるだけに、少なくとも上にあげたような言動をしないように、心がけておくことが大切です。

「何がセクハラ的なのかピンとこない」という方は、自分のパートナーやきょうだい、親、子ども、孫が同じ言動を受けたとしたら、自分はどう感じるだろうかと想像してみてください。少しでも不快だと感じたら、その言動はセクハラ的と受け止められている可能性があると思われます。

これからは忘年会・新年会のシーズン。これらの会は、参加者みんなが楽しく会話し、一年の労をねぎらいあい、お互いのことを肯定的に認め合い、新しい年の福を願う場にすることが、本来の目的です。

職場の大勢が一堂に会する懇親会は、年間を通じてもせいぜい2~3回程度でしょう。忘年会は、普段はあまり話をしない人とも、信頼関係を深めあえる貴重なチャンスです。うっかりした言動で相手を不快にさせ、信頼を築くチャンスを失わってしまわないためにも、最低限「セクハラ的な言動はしない」という意識を持っておくことが大切です。
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