経営に必要な情報を洗い出しましょう
まず、自分の会社のビジネスにとって、どんな情報が必要なのかを考えましょう。小売業なら、お店にPOSレジを導入していれば販売管理はできています。ほかに必要となるのは顧客管理やマーケティング、そして適切な仕入と在庫管理です。
ここで「廃棄の多さ」が経営課題ならば、仕入の基本となる需要予測の精度を上げる必要があります。店頭を通る人のうちどれぐらいが店に入り、うちどれぐらいが購買に結びついたかが分かれば、需要予測の精度が上がります。
製造業であれば、製造ラインでの稼働率が鍵です。生産ラインの機械には表示灯がついており、機械が正常に動作していたら「緑ランプ」、停止したら「赤ランプ」になります。機械が止まれば生産ロスになるので、なるべく停止時間を短くする必要があります。
必要な情報をITで集められないかを検討
IoTのセンサーによって、こうしたデータが容易に取得できます。お店であれば、店頭や店内の人を人感センサーで計測することで「入店率」を計算し、POSレジデータと照らし合わせることで「購買率」も計算できます。
生産現場であれば、機械の表示灯に光センサーをつけ、ライトの点灯・消灯時刻を記録することで、平均故障間隔(MTBF)、平均修理時間(MTTR)を計算することができ、ここから稼働率を計算できます。稼働率を”見える化”し、生産ラインが止まった原因を追究します。稼働率改善で効果があったかどうかも検証できます。
このように、IoTではセンサーを使って客観的なデータを集めることができます。まずは導入前に「どのデータを”見える化”すれば経営に一番役に立つのか」を考えましょう。
ラズベリーパイとは何か
製造業などIoTに取り組み始めた中小企業でよく聞く言葉が「ラズベリーパイ(ラズパイ)」です。パイと言ってもお菓子のパイではなくコンピュータです。いきなりITベンダーに頼んでシステム化すると、すごい値段がかかることが大半です。まずは自分たちで必要な情報をIoTで集められないかを検討する時に、よく導入されるのがこの「ラズパイ」なのです。
「ラズパイ」はお菓子のパイのように小さく、手のひらに乗るコンピュータです。コンピュータと言ってもノートパソコンなどとは程遠く、基盤そのものがむき出しになっています。
非営利団体・ラズベリーパイ財団が発売しており教育用のため一番安い「ラズベリーパイゼロ」は1個1,300円ほどと安価です。ハードディスクはなく、デジカメなどで使うSDカードに保存します。「ラズパイ」には無線LANとブルートウースがついています。
では「ラズパイ」は何に使えるのでしょうか。まずは小さくてもコンピュータですのでパソコンとして使えます。OSはリナックスの一種です。リナックスといってもマウスで操作できますのでウィンドウズを使うのとあまり変わりません。
「ラズパイ」の一番の特徴は、電子部品をつなげて動かすことができ、IoTを安く実現できる、という点です。
またプログラムを学ぶこともできます。子供向けのスクラッチという簡単な言語から高度なパイソンなどの言語までそろっています。「ラズパイ」はこのパイソンと親和性が高く、パイという言葉はパイソンからきています。
ラズベリーパイでIoTを始めるには
「ラズパイ」本体は基盤だけです。まず本体を買って、必要なものは後から取り揃えてもよいのですが、めんどうな場合はスターターセットが1万4,000円ぐらいで販売されています。「ラズパイ」以外にSDカード、HDMIケーブルや電源ケーブルなどが揃っています。他に必要なものはUSB接続のマウス、キーボードとHDMI接続できるモニターが必要となりますが、最近のテレビには、ほぼHDMIの端子がついていますので、テレビで代用できます。「ラズパイ」は電源を入れたら起動するものではなく、「ラズパイ」そのものには何も入っていません。まずパソコンでOSをSDカードに書き込む作業が必要です。市販本やネットにラズベリーパイ関連の情報がたくさん掲載されていますので参考にしてください。
書き込みが終われば、SDカードを「ラズパイ」にセットし、テレビ、マウス、キーボードを設定してOSの設定を行います。これは本などを参考にしてください。
IoTを行う場合は秋葉原や日本橋に行ってセンサーなどを買う必要があります。センサーなどはネット通販でも販売されています。昔、センサーなどは高かったのですが、スマホの普及でスマホ内に入っているGPSセンサー・加速度センサー・光センサーなどが大量に製造されるようになり、安価になりました。
電子工作するにはブレッドボードという土台があると便利です。このブレッドボードにセンサーや配線を組み込んでいきます。電源は「ラズパイ」から提供されますので乾電池などはいりません。回路を組んだらプログラムを作成し、動かします。プログラムといっても本などに掲載されているサンプルをコピーすれば大丈夫です。
「ラズパイ」を使っていろいろなセンサーを扱う技を身につけるとIoTの第一歩となり、経営に必要な情報を集めるときに活用できるようになります。
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