価格を遥かに超える作りと履き心地!

RAYMARサイドモンクストラップ

RAYMARのサイドモンクストラップ。アッパーには、かつてのドイツボックスのDNAを受け継ぐワインハイマー社のポーランド製ボックスカーフを使用。この革特有の「ハリ」が存分に楽しめる一足に仕上がっています。税込価格1万8800円。


良い紳士靴の条件は、当然ながら人それぞれでしょう。履き心地、デザイン、耐久性、革質……。ただ、それらのバランスが高次元に取れている靴は、総じて価格も高めで、その意味では紳士靴は比較的価格に正直な商品ではないかと、私・飯野は日頃感じています。とは言え、例外が全く無いわけではないのも、この分野の面白いところ。今回ご紹介するRAYMARの靴は、その「良い方の例外」の典型かもしれません。

RAYMARの靴の最大の特徴は、税込みで2万円しないにもかかわらず、作りも素材も非常に凝ったものを採用している点でしょう。例えば、底付けはセメントでもマッケイでもグッドイヤー・ウェルテッドでもなく、何とハンドソーン・ウェルテッド製法九分仕立て。これはほぼ自動的に、靴の形状を決定付ける「吊りこみ」の工程を、機械ではなく完全に手作業で行っていることを意味します。

RAYMAR内羽根式キャップトウ

こちらはRAYMARの内羽根式キャップトウ。イタリア・イルチア社のラディカカーフならではの色味の「ムラッ気」を、この価格で味わえるなんて、全く信じられません。さてどうお手入れしよう?税込価格1万6800円。


だからでしょうか、実際に足を入れてみると、土踏まず部の絞りやかかとの押さえ方にしっかりとしたメリハリを感じるのです。インソールへの足のアタリにも、ハンドソーン・ウェルテッド製法ならではの「柔らかさ」「自然さ」を覚えます。これらの濃密なフィット感だけでも十二分に得をした気分!トウスプリングを得るべく、アウトソールの断面も程良くカーブしていて、いっそう楽な歩行を可能にしています。

一方、アッパーの革には、欧州からのインポート品など高価格帯の靴メーカーやブランドで多用されるのと同じものを使用。簡単に申せば、「これはきちんとお手入れして、良いコンディションを維持させなくては!」と気分を上げてくれるものばかりを選んでくれています。しかも、同じ「カーフのスムースレザー」であっても、タンナーや仕上げを靴のスタイル毎に適材適所的に変えている芸の細かさも、心憎い!

アウトソール

アウトソール周辺をパチリ。緩やかにカーブを描く断面は、快適な歩行を約束してくれます。溝伏せの仕上げを施してあるので、出し縫いの糸は底面には露出こそしませんが、れっきとしたハンドソーン・ウェルテッド製法九分仕立て。勿論オールソール交換も可能です。


若い世代に本格的な紳士靴を履いて欲しい!

RAYMARレイジーマンサイドエラスティックスリッポン

RAYMARのレイジーマンサイドエラスティックスリッポン。イタリア・ボナウド社のナチュラカーフを採用。このツヤツヤ感はもうイタリアンカーフならでは!前後方向にうっすら走る「トラ」模様にも、むしろ愛着を覚えます。税込価格1万8800円。


そんなRAYMARの靴は、企画をしている大石氏のある「悔しい経験」がその原動力になっています。大卒後、IT企業の営業部隊で、昼夜を問わず駆け回っていた大石氏。あるとき、クライアントからふと呟かれた「その靴もっと大切に履かないと!」の一言で、ビジネスマナーとして、そして、人格の象徴としての靴の大切さに漸く気付いたのだそうです。

さらに、靴関連の会社を経営しているお父様からも、「革靴に用いる革は食肉の副産物で、命を頂戴したからこそ得られるもの。だから手入れをして大切に履き、彼らに感謝の気持ちを示すのが礼儀」と厳しく諭されたとのこと。

「お手入れしがいのある靴」に目覚めた大石氏は、デパートや靴店、セレクトショップをあちこち訪ねてみたものの……。確かに、その種の良質の靴は売られています。しかし、自分の給料ではとても手が出せない高価格に、何ともやるせない思いを抱かざるを得なかったそうです。

土踏まず

土踏まずのエリアを写してみました。しっかり絞り込まれているのがお解りいただけるかと思います。これがメリハリのある履き心地にも大いに役立っています。コバのエッジの処理や目付けの細かさからも、企画した大石氏の気迫が十分伝わって来ます。


友人付き合いも大事だし、何よりまず「まっとうな生活」をしてゆくには、その種の靴にお金を捻出できる余裕は正直ない……。ただ、ここで大石氏は考えました。「自分と同じ気持ちを抱いている人、特に比較的若い世代の男性は、実は結構多いのではないか?ならば!」と、実家に戻って最初に取り組んだプロジェクトが、このRAYMARとなった訳です。

RAYMARの靴のリーズナブルな価格設定には、もちろん理由があります。まず、製造を中国の工場に委託していること。誤解されている方もまだ多いようですが、中国の靴製造の技術は近年、欧米の有名ブランド品の注文が増加したお陰で、侮れないレベルに上昇しています。ハンドソーン・ウェルテッドによる底付けのような、細かな手作業を要する職人さんも、日本より確保しやすい状況で、製造コストを勘案しても、これは使わない手はないでしょう。

RAYMAR内羽根式クオーターブローグ

こちらはRAYMARの内羽根式クオーターブローグ。他のモデルに比べシェイプが一際古典的なのが特徴。アッパーはスエードの代名詞ともいえるイギリス・C.F.ステッド社のもの。色は黒ですが、紺のスエードローションでブルーブラック色っぽく仕上げて履くのも大いにアリでしょう。税込価格1万8800円。


また、ヨーロッパ製の革を無駄なく使っている点も、低価格に大きく貢献しています。例えば、牛の首から肩の部分に生じがちな皺の跡(=「トラ」の模様)。横に出る段差の激しいものはともかくとして、縦にうっすらと出たものであれば、それこそ命を頂戴した証として大切にすべく製品に採用し、革の歩留まりを高めているのです。直営のネットショッピング専売とすることで、店舗費用を抑えている点も、当然効果大です。

アンケートを基にした新規デザイン企画も!

かかと回り

ヒール周辺を撮ってみました。この価格帯の靴で、ここまでかかとを小振りに纏めて来た靴は、飯野は見たことがありません。長めに入った月形芯と共に、足のかかとをしっかりとホールドしてくれます。更には何気にピッチドヒールになっているなど、芸がとにかく細かい!


そしてRAYMARには、今までお話したような「良い革靴とは何か」「良い革靴を持つ喜び」「手軽に試せる革靴」と言う基幹コンセプトに加え、実は「革靴を作る楽しさ」が見出せるのも、従来の靴ブランドになかった点かもしれません。

これまで2回のネット上でのやり取りを通じて、顧客からの意見をベースとした新たなモデルの靴を企画・製造し、好評を博しているのです。この種の顧客対応力こそ、大手のブランドでは真似したくてもできない機動性。第3弾も目下準備中とのことですので、期待は更に膨らみます。

確かに、5万円以上する紳士靴に比べると、アッパーを縫製する糸のピッチなど細かな箇所に違いが見られるのも否定できません。でもそれも、靴自体の堅牢性に影響を及ぼすレベルでは全くありません。ハンドソーン・ウェルテッド製法とアッパーの質感がもたらすフィット感の高さは、はっきり言って価格を遥かに超えるレベルだと思います。ジワジワ人気が広がってしまうのは半ば必然、生産が注文になかなか追いつかないのも理解できます。

RAYMARスエードサイドモンクストラップ

アッパーにイギリス・C.F.ステッド社のスエードを用いたRAYMARのサイドモンクストラップ。色合いだけでなくラバーソールとストームウェルトのお蔭で、他の靴よりもカジュアルな印象を受けます。これなら、そしてこの価格なら、雨の日でも気にせず履ける!税込価格1万8800円。


「スニーカーばかりを良しとする今時の若い世代に、革靴の素晴らしさをもっと身近に伝えたい」との大石氏の思いが素直に伝わってくるRAYMARの紳士靴。再生産の度に少しずつアップグレードを重ねている向上心も含め、一度は履くと若い世代でなくてもその価値を認め、愛用したくなること間違いありません!

【問い合わせ】
RAYMAR SHOPのホームページ
https://store.shopping.yahoo.co.jp/sunray/

販売元である有限会社サンレイのホームページ
http://www2s.biglobe.ne.jp/~sunray/index.html

RAYMARを企画する大石氏のブログ
http://raymar-shoes.hatenablog.com/


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