『ロッキー・ホラー・ショー』
2017年11月7~12日=Zeppブルーシアター六本木、11月16日~12月3日=サンシャイン劇場、12月9~10日=北九州芸術劇場大ホール、以降仙台、松本、大阪で上演【見どころ】
『ロッキー・ホラー・ショー』
前回も主演の古田新太さんはじめ、小池徹平さん、ISSAさん、ソニンさんらの破天荒なパフォーマンス、ナレーター役のROLLYさん、エディ/スコット博士役の武田真治さんのミュージシャン兼任にも期待が集まります。今回が初となる河原雅彦さんの演出コンセプトは「グラム・ロック・パーティー」ということで、ひょっとするとこれまでで最も“観客巻き込まれ率”の高い日本版となるかも……しれません。
【観劇レポート】
『ロッキー・ホラー・ショー』撮影:引地信彦
歓声の中登場した彼は、ひとしきりギターソロで魅せた後、冒頭のナンバー「Science Fiction」を上木彩矢さんにバトンタッチ。甘く懐かしいメロディに時折スパイスを覗かせる上木さんの歌唱がさらなる期待を掻き立てる中で、本編がスタート、観客は結婚式帰りのブラッド&ジャネットとともに、禁断の世界へといざなわれます。
『ロッキー・ホラー・ショー』撮影:引地信彦
助けを求めた古城で二人を迎えたのは、いかにも怪しい風体の執事リフラフ(ISSAさん)、使用人のマジェンタ(上木彩矢さん)、コロンビア(アヴちゃんさん)。突如「Time Warp」を歌い出した彼らに乗せられ、続いて登場した網タイツ姿の城主・フランク(古田新太さん)にも気に入られた二人は、フランクが手掛けて来た人造人間“ロッキー”(吉田メタルさん)誕生を見守ることになるのですが……。
『ロッキー・ホラー・ショー』撮影:引地信彦
キャストの皆さんも各役を生き生きと演じ、フランク役の古田新太さんは誰もが“唯一無二”と思っていた映画版フランク、ティム・カリーに匹敵する存在感で、何より登場時の濃密なオーラが圧倒的。以前は細川俊之さんらダンディな俳優が演じ、終盤との落差を楽しませていたナレーター役はROLLYさんが担当、大仰なナレーションで楽しませ、新鮮です。
『ロッキー・ホラー・ショー』撮影:引地信彦
使用人トリオのISSAさん、上木彩矢さん、アヴちゃんさんもテンポのいいセリフと文句なしの歌唱で躍動、バンド演奏とエディ&スコット博士役を掛け持ちする武田真治さんは登場の度、毒のある“華”を舞台に持ち込んでいます。ファントムたちのキレのいい動きも申し分なし。
休憩を含めて2時間強で終わってしまうショーながら、終演時にはかなりお腹がいっぱいに。にもかかわらず、帰路には「Time Warp」や「Touch-a-Me」のフレーズが自然と口をついて出、“また”観たくなってしまう。何とも中毒性の高い仕上がりのエンタテインメントです。
『スカーレット・ピンパーネル』
2017年11月13~15日=梅田芸術劇場メインホール、11月20日~12月5日=TBS赤坂ACTシアター【見どころ】
『スカーレット・ピンパーネル』
ワイルドホーンらしい躍動感溢れる音楽、主演の石丸幹二さん、安蘭けいさん、石井一孝さんの濃密な演技に加え、上原理生さん、泉見洋平さん、松下洸平さんら新キャストの熱演も楽しみな舞台です。
【観劇レポート】
歴史の渦の中で絡み合う男女の思惑と愛
『スカーレット・ピンパーネル』撮影:岸隆子(Studio Elenish)
例えば2幕、ピンパーネル団首領の正体を暴こうとするフランス政府全権大使ショーヴラン(石井一孝さん)は、かつての恋人であるマルグリット(安蘭けいさん)を利用し、ピンパーネルをおびき出させようとしますが、彼が指定場所に到着する前にピンパーネルことパーシー(石丸幹二さん)は顔を隠してその場に現れ、マルグリットの話を聞く中で、自分が彼女を誤解していたことを知り、彼女への愛を再確認します。時刻通りに来たショーヴランを、パーシーはとことん愚弄。愛する人の本心に安堵し、勇気百倍(?)となる男心を、石丸さんがお茶目に演じます。
『スカーレット・ピンパーネル』撮影:岸隆子(Studio Elenish)
『スカーレット・ピンパーネル』撮影:岸隆子(Studio Elenish)
パーシーの片腕であるデュハーストを、頼れる存在感で演じる泉見洋平さん(石丸さんとは異なる声質がピンパーネル団のコーラスで活きています)、正義感に溢れるマルグリットの弟サン=ジュスト役・松下洸平さん、紅一点ながら危険な任務に飛び込むマリー役・則松亜海さんら、ピンパーネル団の面々もそれぞれに熱演。本作のテーマ曲とも言われる「炎の中へ」は序盤でも歌われますが、劣勢に転じた後半での歌唱には固い友情で結ばれた彼らの決意が漲り、ショーヴラン側にシンパシーを抱いていた観客がいたとしても、このナンバーでほろりとさせられることでしょう。冒険活劇と男女の愛の駆け引きを重ね合わせた重層的なミュージカルとして、さらなる深化を実現した公演となっています。
*次頁で『メンフィス』以降の作品をご紹介します!