記念の年に新しい銀座六丁目本店がオープン!
九分仕立て紳士靴やパターンオーダー受注会を、私の記事でこれまで何度もご紹介した「銀座ヨシノヤ」。日本の靴全体の歴史を語る上で欠くことができないこの老舗は、2017年に創業110周年を迎えたのを記念し、本店が全面改築され、9月1日にオープンしました。
場所は銀座六丁目。2014年から期間限定で営業していた銀座本店(仮店舗)の僅かに京橋寄りで、この春オープンしたGINZA SIXの中央通りを挟んで真向かいの超好立地です。
2階から地下1階までの3フロアは婦人靴売り場、そして、お目当ての紳士靴コーナーは3階。どのフロアも親しみのある高級感に包まれ、まるで古き良き邸宅にお呼ばれされたような居心地の良さに、周囲に林立するインポートブランドの旗艦店にはもはや望み得ない「真なる品格」を感じさせてくれます。
スッキリとした印象のサイドゴアブーツ
新たな銀座六丁目本店の紳士靴フロアで一際目立つ存在が、110周年記念モデルであるサイドゴアショートブーツでしょう。文字通り、シンプル・イズ・ザ・ベスト。余計な装飾を施さないプレーントゥスタイルだからこそ、丁寧な底付け、精度の高い造型の木型そして良質なアッパーが一目瞭然。
そして、ブーツでありながら、筒丈を低めに設定することで、より汎用性の高い一足に仕上がっています。これならダークスーツの足元でも、ブルーデニムのでも大丈夫!両脇に付くゴア=ゴム布の何気ないヘリンボーン柄も、靴全体の印象を引き締めるのに一役買っています。
ちなみに底付けは、同社の105周年記念モデルから採用され、好評の通称「九分半」仕立て。つまり、土踏まずより前方の出し縫いのみミシン縫製で、残りは全て手縫いのハンドソーン・ウェルテッド製法で行われています。
また木型も、近年好評を得ている細身のものをベースに、ブーツ向けとして新たに設計。さらにアッパーは、革の卸業者であってもタンナーがどこだが未だに掴めていない、あのイタリアンベビーカーフです。これらが三位一体となって、まるで足全体をパックしているかような密着した履き心地を得られるのです。
細かい箇所にも老舗の作らしい繊細な配慮が見て取れますよ。例えば、履き口の前端部をV字状にカットしてあるため、この種のブーツに起こりがちな、アッパーが歩行時に脛骨の前部を圧迫することとは無縁です。
また、サイドゴアブーツ特有の着脱時に大きく掛かる、テンションで薄くてソフトなアッパーにダメージを与えることのないよう、履き口の前後にプルストラップは敢えて設けず、ライニングも同社の他の九分半仕立ての靴で使われるブラックゴートスキンではなく、九分仕立てのものと同じ高品質なヌメ革を用いています。
【商品紹介】
110周年記念モデル・サイドゴアショートブーツ
色:黒(イタリアンベビーカーフ)
底付け:ハンドソーン・ウェルテッド九分半仕立て(土踏まず部より前方の出し縫いのみミシン縫製)
サイズ:23.5~27.0cm 足型:EE
価格:22万6800円(税込)
今回の受注会も革が素晴らしい!
そして、銀座ヨシノヤの紳士靴と言えば、すっかり恒例となった春と秋のパターンオーダー受注会。他のパターンオーダーとの大きな違いは、底付けの製法の選択肢に富んでいる点で、現在ではハンドソーン・ウェルテッド系は九分仕立て(出し縫いのみミシン縫製)、九分半仕立て(土踏まず部より前方の出し縫いのみミシン縫製)、十分仕立て(出し縫いも全て手縫い)の3種類、そして軽快なマッケイ製法も選べるようになっています。
スタイルは基本的にはレースアップ9種類、ストラップ系3種類の中から選ぶことになるものの、鳩目の数の変更など、多少のアレンジには応じてくれるのも人気の秘密です。そして何と言っても、毎回登場する希少なアッパー素材が一番の魅力でしょう。新しい銀座六丁目本店オープンと重なった今回は、いつも以上に目移りしますよ。まずは現行品の代表例から!
1.タンナー不明のドイツボックスカーフ(オプション価格+3万2400円)
表面に出るシボの細かさ、そして、特有のハリとコシは久々に見るレベルで、かつてのドイツ製のボックスカーフを思い出させてくれます。高額なフルビスポークの靴ですらここ十数年は殆ど見ることができなかった、これぞ保守本流と呼ぶに相応しい革です。
2.イタリアンベビーボックスカーフ(オプション価格+3万2400円)
110周年記念ブーツに用いているイタリアンベビーカーフの仕上げをアレンジしたもので、肌目のキメ細やかさと光沢そして透明感はそのままに、よりコシのある質感になっています。色はお手入れの志向次第で黒にも紺にもなり得るダークネイビーです。
向かって左がタンナー不明のドイツボックスカーフ(黒)、右がイタリアンベビーボックスカーフ(ダークネイビー)です。同じボックスカーフと名が付いた革でも銀面のニュアンスは好対照!なおこの写真は倍率2.0倍で接写しています。
また、かつてはネト付くような質感と透明ながらもドロっとした色味故に、様々な噂とともに、革好きのファンが多かったイタリア・フラスキーニ社のヴィンテージレザーも、今回は2種類用意されています。ただし、これらについては革質が極めて繊細なため、スキンステッチを伴うモデルは製作不可能となります点を、予めご了承願います。
3.パペーテ(オプション価格+2万1600円)
かつて同社の得意技だった「手揉み」工程の効果で、まるでシープスキンのような伸縮性としっとりソフトな質感を堪能できます。革質を最大限重視し、色出しも染料仕上げ。茶系3種類、各1足分のみ受注可能です。
4.ブレンタボックスカーフ(オプション価格+2万1600円)
これが本当にボックスカーフ?と思わせてくれる、柔らかさとネットリとした感触が唯一無二の存在だった、ファンの間では伝説の革です。セミアニリン仕上げによる透明感がたまりません。ライトブラウンで1足分のみ受注可能です。
今回も注目のイタリア・フラスキーニ社のかつての革。向かって左3枚がパペーテ、右の最も明るい1枚がブレンタボックスです。これらの革ももはや幻。全て1足分のみのご用意なので早い者勝ち!なお、この写真は等倍です。
なお、今回は9月30日(土)に製作を担当する職人(敢えて誰とは申しません)が来店し、靴の立体感を出すための大切な工程である「吊りこみ」の作業を披露していただけます。これを見ると丁寧な靴作りと、実は割安な価格設定に絶対驚かれる筈です!
【受注会概要】
銀座ヨシノヤ 紳士靴 パターンオーダー受注会 2017年秋
会期:2017年9月8日(金)~10月9日(月・祝)
9月30日(土)には職人による作業工程披露あり。
場所:銀座ヨシノヤ 銀座六丁目本店
スタイル:12種類
足長:23.5~27.0で0.5ピッチ。
足囲:EE(セミスクエアトウ)、EEE(アーモンドトウ)。
基本価格:製法とモデルにより異なります。
マッケイ製法のもの…10万8000円~
ハンドソーン・ウェルテッド製法のもの12万9600円~
納期:約2か月を予定。
見晴らし最高のカフェも併設!
ちなみに、メンズフロアの隣にはカフェが併設されています。窓から見えるのは、当然ながらGINZA SIXの正面玄関。もちろん、カフェのみでの利用もでき、銀ブラの合間の休憩や打ち合わせ等々便利に活用できそうです。気品は保ちつつ、従来以上に入店し易くなった銀座ヨシノヤの新しい銀座六丁目本店、是非一度足を運んでみて下さい。浮付いていない銀座の老舗の底力が実感できますから!
【お問い合わせ】
銀座ヨシノヤ 銀座六丁目本店
〒104-0061 東京都中央区銀座6-9-6(GINZA SIX前)
TEL:03-3572-0391
HP:http://www.ginza-yoshinoya.co.jp/
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営業時間:11時~19時
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