ストレス

怒りが爆発する前に!無理なく冷静になれる2つの方法

【公認心理師が解説】理不尽な出来事に怒りを感じたとき、怒りをぶつけてトラブルになったり、怒りを抑え込んでつらくなったりしないために必要なこととは?「怒り」の感情と上手に付き合い、適切な行動を取れるようになるための2つのアプローチをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

怒りの感情はぶつけるとトラブルになり、抱え込むと恨みが生じる

怒り

日常的に起こる理不尽な出来事に、怒りが爆発しそうになったら……

理不尽な出来事に遭遇し、怒りが爆発しそうになったことはありませんか? 怒りの感情は、いつどんなときに襲ってくるか分かりません。

たとえば、限定品を手に入れようと何時間も行列に並び、ついに自分の番が来たと思った矢先にまさかの売り切れ……。こんな事態に遭遇したら、誰だって怒りを感じるでしょう。その怒りを他人にぶつけると「トラブル」に発展し、抱え込むと「恨み」に変わってしまいます。

そのような事態にならないために、怒りの感情とどのように付き合っていけばよいのでしょう?
 

怒りを感じたときに生じる心身の4つの反応

怒りにつながる出来事に遭遇したとき、人の心身では「感情」「身体」「認知」「行動」という4つの領域に次のような反応が生じます。
  • 感情……ショック。やりきれなさ。イライラ。ムカムカなどの気持ち
  • 身体……頭が真っ白になる。胃がキュッとなる。体が固まるなどの症状
  • 認知……期待するんじゃなかった。自分はついてないなどの考え方
  • 行動……大きなため息をつく、舌打ちをするなどの行動
上の4つのうち、「感情」と「身体」の反応を変えるのは困難です。「イライラしないようにしよう」「体が固まらないようにしよう」と頑張っても、感情と身体の自然な反応を止めることはできません。
 

直接アプローチできるのは「認知」と「行動」の2つ!

感情、生理機能、認知、行動の4領域の反応は、下図のようにお互いに影響を与えあっています。
人間の心身では、感情、生理機能、認知、行動が互いに影響を与えあっている

人間の心身では、感情、身体(生理機能)、認知、行動が互いに影響を与えあっている

先の例では、直前で売り切れて怒りの感情が湧くとともに、「ずっと並んでいたのにひどい」「来るんじゃなかった」といった認知の変化が生じます。同時に頭が真っ白になり、胃がきゅっとなり、体が固まるといった身体の反応が生じ、ため息や舌打ちなどの行動の変化も表れます。

怒りの感情に任せて短絡的な行動をとってしまうと、4領域の反応はより強くなるかもしれません。したがって怒りを感じたときには、相互作用の効果で互いの反応が強くならないようにしていくことが大切です。

「感情」「身体」「認知」「行動」の4領域のうち、直接アプローチできるのは「認知」と「行動」です。認知と行動によって怒りを煽らないように、自分の考え方と行動を見直すことが必要です。
 

認知へのアプローチ……マイナス思考に巻き込まれず、合理的な解決を考える

「認知」と「行動」にアプローチする際には、何を心がけるとよいでしょう? 認知から説明しましょう。

怒りの感情が沸き上がると、認知はネガティブになっていきます。「こんな店、もう二度と来ない!」「客を馬鹿にしているのか?」「私はいつもこうなる運命だ……」。このように悪い方にばかり考えてしまい、怒りをさらに搔き立てるのです。

そのため、いったん怒りが鎮まるまで余計なことを考えないようにしましょう。そして気持ちが落ち着いてから、問題を整理して次の行動を考えるとよいでしょう。
 

行動へのアプローチ……感情の鎮静を助け、攻撃的ではない伝え方をする

次に行動へのアプローチについて考えてみましょう。まずは、怒りが鎮まるまでの間に短絡的な行動をしないことです。怒りに任せて他人を攻撃し、物にあたったりすると、後になって後悔することになりかねません。そうならないためには、怒りが鎮まるまでの間にできることをしましょう。

その一つに「足に意識を向ける」という方法があります。人は怒ると頭に血が上り、体が熱くなる感覚を覚えます。足に意識を向けながら、頭に上った血が下に落ちてくる様子をイメージしてみましょう。怒りがすーっと落ち着きやすくなります。

相手と交渉するなら、怒りが鎮まった後にしましょう。ただし相手を責める言い方ではなく、自分の気持ちをやわらかく伝えること。すると、相手も耳を傾けやすくなるでしょう。

怒りを感じたときには、上のように認知と行動に働きかけることで、怒りと上手に付き合っていきましょう。すると、穏やかな気持ちで毎日を送ることができると思います。
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