分散投資は万能で安心? 分散の誤解とデメリットとは?
投資信託関係のイベントで来場者(投資経験数十年の人から、これから投資を始める人までさまざま)の話を聞く機会がありました。それぞれの投資スタイルや投資信託選びの基準などについてお話を伺う中で、気になる意見がありました。それは「十分に分散投資されている投資信託を選びたい」「インデックス投信は分散投資が効いていて安心」といったものです。これは分散投資について誤解があるかもしれないと思いました。分散投資にはリスクを抑える効果がありますが、むやみな分散投資にはデメリットも生じるということを知っていただきたく、この記事を書くことにしました。
【目次】
1.分散投資のメリットをまずは確認
2.分散投資の効果1 「種類」「通貨」の分散には効果がある
3.分散投資の効果2 「時間」の分散にも効果がある
4.分散投資に潜むデメリットとは
5.分散投資よりも株式集中投資?
5.インデックスファンドが持つ分散投資以外の良さ
6.分散投資でダメダメ企業に投資しない方法とは
7.投資信託で手数料よりも重視すべき項目とは
分散投資とは?メリットをまずは確認
分散投資とは、値動きの異なる複数のものに同時に投資することでリスクを抑える手法です。日本の株式・債券・不動産(REIT)、外国の株式・債券・不動産(REIT)など、通貨や種類が異なるものに資産を分散させておけば、たとえば日本株式が値下がりしても他のものが値上がりして、資産全体としては利益が出る、または大きな損失にならずに済むというわけです。分散投資の効果1 「種類」「通貨」の分散には効果がある
日本の景気が悪くても他の国は好調ということはよくありますし、株価が下がるようなときには債券が値上がりする傾向があります。また通貨は「円高ドル安・円安ドル高」というように、片方が安くなれば必ずもう片方は高くなるという関係にありますので、複数の通貨に分散投資することはリスクを抑えることになります。不動産や商品などは、株式や債券とは異なる理由で値動きすることが多く、これらも組み込むことでさらにリスク分散になると考えられます。分散投資の効果2 「時間」の分散にも効果がある
複数回にわけて買うという時間の分散も、合理性のある方法です。毎月一定額ずつ積立で買う方式では、値段が安くなっている時にはたくさん購入でき、値段が高くなっている時には少量しか買わずに済むので、平均購入単価が抑えられます。最安値でのまとめ買いが理想だという人もいますが、その見極めは難しく、買う決心がつかないまま買いそびれてしまっては元も子もありません。分散投資のデメリット むやみな銘柄の分散は意味がない!
では、銘柄の分散はどうでしょうか。1銘柄よりは複数銘柄に分けたほうがリスク軽減になります。しかし投資先が多ければいいというものではありません。たくさんの日本企業に投資している投信といえば、日本株式インデックスファンドがあります。インデックスファンドは、日経平均株価やTOPIXなどのベンチマーク(運用指標)と同じような値動きをするように設計されています。どう設計すれば値動きが似るかというと、日経平均株価に連動させるなら日経平均株価の算出対象になっている225銘柄に幅広く投資するのです。
しかし、ここでよく考えてほしいのです。すごくたくさんの銘柄に投資するということは、銘柄選別がかなり甘いということです。すると成長性のある優良企業だけでなく、ダメダメ企業が紛れ込む恐れも多くなります。上場企業だからといって、すべてが経営戦略がしっかりしていて将来性があるとは限りません。ダメダメ企業は値下がりのリスクを大きくしてしまいます。利益を得るために投資を行っているのに、わざわざダメダメ企業に投資する必要はないと思いませんか。
分散よりも株式集中投資をバフェットは重視
有名な投資家、ウォーレン・バフェットが富を築いた手法は、「株式集中投資」です。バフェットは複数の株式銘柄に投資していますが、そこにダメダメ企業など紛れ込ませません。優良な企業を選びに選び抜いて、それらだけに集中して投資したのです。バフェットのような企業分析の力がない私たち一般の人たちが真似をするのは困難ですが、むやみに分散投資すればいいというものではないということは分かると思います。
インデックスファンドには分散投資以外の良さがある
インデックスファンドにはダメダメ企業が紛れ込んでいる恐れが高いと書きましたが、それでも日本株式インデックスファンドには長所もあります。ひとつは「分かりやすさ」です。日経平均株価やTOPIXの値は、わざわざ証券会社のサイトを見に行かなくてもネットやテレビのニュースで紹介されますし、その際に「アメリカの雇用統計が~」「円安になったことから~」など、値動きの理由が一言説明されます。値動きの理由がわかりやすいため、今回の値下がりは一時的なものだと思われるから買い足そうとか、もっともっと下がりそうだからいったん売って利益を確定しようなど、自分で判断しやすいといえます。
もうひとつは「手数料の安さ」です。ファンドマネージャーの知恵があまり使われていないので、安いのは当たり前と言えるでしょう。
分散投資でダメダメ企業に投資しない方法とは
よい銘柄にしぼって分散投資するにはどうしたらよいかですが、調べものが好きな人は、自分で銘柄研究して選別するのが一番。投信手数料のようなコストはかかりませんし、なにより調べるのが楽しいと思います。人生の貴重な時間を使うのですから、楽しいと感じるかどうかはとても重要です。企業の経営戦略や業界の動向を調べ、将来的な展望を考えます。バフェットのようにROE(株主資本利益率)を見て、効率的な経営を行っているかを確認します。ただし、個別の銘柄を複数選んで投資するにはそれなりの資金が必要です。
調べものが好きじゃない人、ほかのことに時間と労力を使いたい人、少額で投資を行いたい人には、アクティブ投信があります。私自身は楽しみとして個別銘柄も持っていますが、老後に向けて貯めて増やすお金に関しては投信積立派です。私が選んだ投信は少ない銘柄への分散しかしていませんが、ダメダメ企業が入っていないだけあって、過去の実績ではTOPIXなどの指数よりもリターンが高いうえに、なんとリスク(価格のブレ幅)が小さくなっています。分散投資すればするほどリスクが減るというものではないのです。
投資信託を手数料の高さ・安さだけで判断するのは疑問
そういった投資信託は手数料が高いです! インデックスファンドとは違い、ファンドマネージャーの知恵や労力が使われているからです。その手数料を支払ってでも、得られるリターンが多ければよいのではないでしょうか。資産運用でコストに気を配ることは大切ですが、手数料が安い投信は良い投信、高いものは無駄、という最近の風潮はどうかと思います。まったく同じ内容のものなら安く利用できるほうがよいのは当然ですが、内容の異なるものを並べて手数料だけを比較して優劣つけるのはおかしな話です。
分散投資はリスクを抑える有効な方法です。通貨や種類(株式、債券など)を分散させた上でさらに、優良でない銘柄を組み込まない工夫をし、効率よく資産を増やしていきたいものです。
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