今回の民法改正は公布から3年以内に施行されますので、遅くとも2020年のオリンピックまでには施行されるものとみられています。民法は幅広く今回の改正も約200項目に及びますが、ここでは不動産取引の中でもマイホーム購入に関係しそうなものについて一部ピックアップしたいと思います。
U・Iターンで中古住宅を買ったが災害で…
U・Iターンで気に入った中古住宅を買ったが…
内見したら構造も仕様も良く機能に問題ないとのこと、首都圏では考えられないような価格で庭付きの戸建が買えるなら……と不動産会社に問い合わせ、売買契約書にサインをしました。ただ諸手続きや内装の修理、子どもの転校手続きなどが必要なため、入居日は契約日から1ヶ月後ということになりました。
しかし、契約から2週間が経った頃、この帰省先で落雷による山火事があり、あなたが購入した家は滅失してしまいました。このように、契約当事者の双方に帰責事由なく生じた目的物滅失に伴うリスク(危険)を、どちらの負担とすべきかという分配の問題を、民法上、「危険負担」といいます。これは、落雷のようなレアケースだけでなく、火災や泥棒に入られた場合でも、債務者に帰責事由なく目的物が滅失したのであれば、危険負担が問題になります。
(債権者の危険負担)
第五百三十四条 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。
この点、現行の民法534条では、債務者(不動産会社)の帰責事由なく、目的物が滅失したときは、債権者(買主)が危険を負担する、すなわち、買主(あなた)が「家は手に入らないけど、2000万円を支払わなければならない」ということになります。しかし、買主は売買契約で家の所有権を得ていたとしても、落雷時にはまだ住んでおらず、自らの支配の及ばない場所で滅失したのですから、このような場合にまで、534条1項を杓子定規に適用し、買主に支払義務を認めるのは、買主にとって酷な結果となります。
現実に民法条文が歩み寄った
そのため、このような結果を回避すべく、民法534条1項の適用場面を、債権者(買主)が目的物に対して何らかの実質的支配を取得した場合に制限するという考え方が一般的でした。が、実際にはこのような制限的な解釈をとられていましたが、条文上はそのような制限は設けられていなかったため、現実に条文を合せようということになったのが今回の改正です。→買主は(売主に落ち度があったかどうか事情の如何に関わらず)契約を解除できる。(従来民法:買主は売主の責めに帰すべき事由によって建物が滅失した場合は解除できる)
→買主は売主に免責事由がない限り、損害賠償を請求することができる。(従来民法:買主は売主の責めに帰すべき事由がある場合に限り、損害賠償を請求できる)
これまでは売主の責任を明らかにしたうえで解除したり損害賠償できたのですが、その責任の所在は別として、原因がどうであれ、買主は契約を解除したり損害賠償を請求できるようになったということです。
建築中の家が滅失損壊したら……?
では、建築中に地震・豪雨などで滅失損壊した場合はどうなるのでしょう? 民法では施工会社(請負業者)が建物を完成する義務があり、完成物を引き渡さないと代金を請求できないという決まりがあります。よって民法においては、火災や損壊などで建物を再建築する必要が生じた場合、施工会社が負担するのが原則となっています。こういうことに備え、施工会社は「建設工事保険」や「火災保険」等に加入し、保険金を再建築費に充当して対処することが一般的ですが、保険加入は任意のため、保険に加入せず、万一の場合は会社の資金で負担して再建築するという会社もありますので、あらかじめ確認しておいたほうがいいでしょう。